Disc 1
1. Rocks Off
(Mick Jagger/Keith Richards)
2. Rip This Joint
(Mick Jagger/Keith Richards)
3. Shake Your Hips
(Slim Harpo)
4. Casino Boogie
(Mick Jagger/Keith Richards)
5. Tumbling Dice
(Mick Jagger/Keith Richards)
6. Sweet Virginia
(Mick Jagger/Keith Richards)
7. Torn and Frayed
(Mick Jagger/Keith Richards)
8. Sweet Black Angel
(Mick Jagger/Keith Richards)
9. Loving Cup
(Mick Jagger/Keith Richards)

Disc 2
1. Happy
(Mick Jagger/Keith Richards)
2. Turd on the Run
(Mick Jagger/Keith Richards)
3. Ventilator Blues
(Mick Jagger/Keith Richards/Mick Taylor)
4. I Just Want to See His Face
(Mick Jagger/Keith Richards)
5. Let It Loose
(Mick Jagger/Keith Richards)
6. All Down the Line
(Mick Jagger/Keith Richards)
7. Stop Breaking Down
(Robert Johnson)
8. Shine a Light
(Mick Jagger/Keith Richards)
9. Soul Survivor
(Mick Jagger/Keith Richards)

Originally Released May 12, 1972
Produced by Jimmy Miller

沢田研二主演の映画『太陽を盗んだ男』は、
原爆を完成させたという主人公が、それを武器に、
様々な無理難題を吹っ掛けるストーリーで、
その中には、「ストーンズ日本公演」を要求する件もあった。

1972年にこのExile on Main St.をリリースした後、
ストーンズはアメリカ・ツアーを経、73年1月には
日本を含むウインター・ツアーに出掛けた。
だが過去にミックとキースがマリファナの不法所持で
逮捕されたのを理由に、入国審査が下りず、
日本公演は中止された。

ストーンズ来日は日本のロック・ファンにとって、
長年の悲願であり、ストーンズのコピーでデビューした
タイガース、そしてジュリーは、その役によって、
ファンの思いを代弁したのだった。

もっとも、税金逃れのために移住したフランスで、
ミックもキースもセックス三昧、ドラッグ三昧、
アルコール三昧となり、キースに至っては、
77年までヘロイン中毒に陥るのだから、
待てど暮らせど日本の土は遠のくばかりであった。

だがヤクに溺れているにも関わらず、
音楽に対しては至って冷静で、
何が必要で何が不要かをちゃんと弁えていた。
そこがクラプトンとの大きな違い。
 

 

収録曲の多くは、Let It Bleed
Sticky Fingersからのデッドストックで、
71年7月から、ヴィルフランシュ=シュル=メールに
キースが設けた新居の地下室で、夜な夜なセッションが
繰り返された。

しかし先述のように、飲む・打つ・ヤるの3拍子が
全てに優先され、作業は遅々として進まなかった。
いくら2枚組とはいえ、ミックスダウンまでに
半年も掛かったのだから。
これ、田舎から出てきて独り暮らしを始めた学生が、
ついハメを外して、ドンチャンやるようなもの。

オープニングは、キースの軽快なリフで始まるRock Off
ディランのStuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again
思わせる歌いだしから、やがてホーン・セクションが
祝祭感たっぷりに絡むが、中盤のエフェクト処理が施された
ミックのヴォーカルで、一瞬オッ!となる。

更に騒々しいRip This Joint、こういうアップテンポで
シャウトするミックのカッコよさはハンパない。
Slim HarpoのShake Your Hipsもスピード感いっぱいだが、
前2曲と違って、抑えたサウンドからグルーヴを際立たせている。
ややテンポを落としたブギウギCasino Boogieは、
ゆったりしたジャム風ナンバーだが、不思議とタイトに
纏まっていて、次のTumbling Diceのいいお膳立てとなっている。

キースがじゃ~んとギターをかき鳴らした瞬間、
ここに全てが詰まっている。
特別なことは何もしていないのに、キースにしか
出せない音、タイム感‥
ゴスペル的な女性コーラスがゆったりした心地にさせるが、
決してのんびりはしていない。
その全てをキースの最初の一音が決めているのだ。

場面は一転、Gram Parsonsがゲスト参加したSweet Virginia
一見カントリー風ジャムだが、チャーリーの重低音ドラムによって、
演奏がピシッと締まる。
Tumbling Diceのゆったり感から地続きなのだった。
しかし次のTorn and Frayedでは、
本当にダルなカントリー風ジャムになってしまった。

Sweet Black Angelは、黒人解放運動家、
Angela Davisについて歌ったもの。
John Lennonも当時Angelaという歌をやっている。
Nicky Hopkinsのピアノで始まるLoving Cup
そのイントロのお蔭で、一瞬「またShe's a Rainbowかいな?」と思うが、
サイケデリックに走ることなく、タイトなロックンロールで
1枚目を締めてくれた。

1枚目の山がTumbling Diceなら、
2枚目はライヴのキース・コーナーでもお馴染みのHappy
ここでのキースは全然声が出ていないが、
それすらかっこいい、そしてかわいい。

超高速なカントリー風ブギTurd on the Runは、
そのスピードと後ろのブルースハープしか頭に残らないが、
飲む・打つ・ヤるの中で、こういう素材をいっぱい
撒き散らしていたんだろうな。

珍しくMick Taylorの名がクレジットされた
Ventilator Bluesも、テイラーが恕作さ紛れに
ギターをかき鳴らしたところから出来上がったもの。
そしてこれ以上違った展開はないと思われたところで、
次のI Just Want to See His Faceが被さってくる。
それも、ミックはただ唸っているだけで、
パーカッションと、ベース、リング・モジュレーターを
施したキーボードが絡むジャム・セッションなのだった。

このまま冗談ソングで終るのかなと思いきや、
ゴスペル風なLet It Looseで挽回。
ミックのソウル愛が手に取るように分かる。
キースの軽快なリフで始まるAll Down the Line
眠りかけてた頭が一気に覚める。

そこからアップテンポなRobert JohnsonのStop Breaking Downへ。
かつて同じRobert JohnsonのLove in Vainでは、
Ry Cooderのマンドリンをフィーチャーして、
アヴァンギャルドなアレンジにしていたけど、
ここではMick Taylorのスライド・ギターが大活躍。

Billy Prestonのオルガンが効果的な、
ゴスペル風バラードShine a Lightは、
ミックのヴォーカルもさることながら、
もう1人のミックの聞かせどころでもある。
そしてやたらネアカなSoul Survivorでアルバムは終わる。
間奏部分の2人のギタリストによるインタープレイも、
やたらカッコいい。

初の2枚組。2枚目に至っては、冗談みたいな曲も見受けられるが、
タイトなのにルーズ、ルーズなのにタイトなストーンズの
フルコースを心底堪能できる1作です、これは。