1. Flower Girl
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore/Marv Tarplin)
2. Who's Gonna Take The Blame
(Nickolas Ashford/Valerie Simpson)
3. Darling Dear
(George Gordy/Rosemary Gordy/Allen Story)
4. You've Got The Love I Need
(Rose Ella Jones/William “Smokey” Robinson)
5. Get Ready
(William “Smokey” Robinson)
6. Bridge Over Troubled Water
(Paul Simon)
7. Something/Something You Got
(George Harrison/Christopher Kenner)
8. Point It Out
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/Marvin Tarplin)
9. Don't Take It So Hard
(Chuck Jackson)
10. Backfire
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/Johnny Bristol)
11. The Reel Of Time
(Janie Bradford/Jack Goga)
12. Wishful Thinking
(Marv Johnson)

Originally Released Sep. 30, 1970
Produced by William “Smokey” Robinson

1970年代最初のThe Miraclesのアルバムは、
カヴァ曲で構成されたWhat Love Has…で、
次にこのA Pocket Full of Miracles
リリースされたが、この年はなんといっても、
67年のアルバムMake It Happenの中の1曲、
The Tears of a Clownがシングルカットされ、
アメリカとイギリスで1位になる珍事が起きた。

それでMake It HappenThe Tears of a Clownと改題、
リイシューされたわけですが、特に当時のイギリスの
音楽的嗜好は、やはり興味深い。
ロンドンのジャズとブルースのブームが、
60年代のブリティッシュ・ロックの中心で、
The Rolling Stonesはそこから生まれたのだし、
The Yardbirdsに去来した3人のギタリストによる活動も、
その延長線上にある。

しかしThe BeatlesとThe Rolling Stonesが、
ロンドンとリヴァプールで同時多発的に生まれたように、
いつでも複雑な動きが同時に起きているわけです。
現にLed Zeppelinが王者に登りつめた1970年は、
Tony Viscontiがプロデュースした2枚のアルバム‥
The Man Who Sold the WorldT. Rex
出た年でもあった。

The Beatlesが解散した1970年は、
Led ZeppelinとDavid Bowieがいて、
更にElton Johnが大ヒットアルバムを連発していた。
そんな多様な音楽性を持っているからこそ、
突然The Miraclesのアルバムがリバイバルするのだと思う。

 

 

フェンダー・ローズの煌めくイントロに導かれた、
オープニングのFlower Girl
The Beach BoysやJohn Lennonも歌った、
Bobby FreemanのDo You Wanna Dance
インスパイアされたと想像できるが、
The BeatlesのWhy Don't We Do It in the Road
要素も窺える。
Ashford & SimpsonによるWho's Gonna Take The Blameは、
Jackson 5に持っていきそうなテーマで、
その次にJackson 5も歌ったDarling Dearが来る。

そしてGet Readyからのカヴァ3連発。
どれだけ夥しいカヴァが作られたか知れない、
Simon & GarfunkelのBridge Over Troubled Waterは、
このスモーキーによるヴァージョンが最高。
原曲のメロディを解体するSomethingのスモーキーの
歌いっぷりも見事。

3年も前に出したアルバムの、降ってわいたような
リバイバルのお蔭で、影が薄くなったであろう本作は、
しかし、後にクワイエット・ストームと呼ばれる、
スイートでメロウな、都会的で洗練された
R&Bの先駆者であるSmokey Robinsonが、
なおもその歩みを止めず、独自の世界を深化させる
第一歩となっている。