1. Doggone Right
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/Marvin Tarplin)
2. Baby, Baby Don't Cry
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/Terry Johnson)
3. My Girl
(William “Smokey” Robinson/Ronald White)
4. The Hurt Is Over
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/Marvin Tarplin)
5. You Neglect Me
(William “Smokey” Robinson/Marvin Tarplin)
6. Abraham, Martin & John
(Dick Holler)
7. For Once in My Life
(Ron Miller/Orlando Murden)
8. Once I Got To Know You (Couldn't Help But Love You)
(William “Smokey” Robinson/Terry Johnson)
9. Wichita Lineman
(Jimmy Webb)
10. The Composer
(William “Smokey” Robinson)
11. Here I Go Again
(William “Smokey” Robinson/Al Cleveland/
Terry Johnson/Warren Moore)
12. I'll Take You Anyway That You Come
(William “Smokey” Robinson)

Originally Released July 10, 1969
Produced by William “Smokey” Robinson

"ウッドストック・イヤー"の1969年。
勿論このアルバムが出た時には
まだそれは開催されていませんが、
ロック史上最大かつ伝説ともなったこのイベントには、
Jimi Hendrix、Sly & The Family Stoneという、
その後70年代のロックに多大なインパクトをもたらす、
偉大な黒人アーティストが出演していたことは、
既に周知のとおり。

殊にファンク・ミュージックを引っ提げて
登場したSly & The Family Stoneは、
そもそもソウル・ミュージックという垣根すら飛び越え、
ロックにジャズ、ブラック・ミュージックに至るまで、
幅広くその影響力を誇示することになる。

ソウル・ミュージックでいち早くこれに呼応したのは、
Motown Recordsのプロデューサー、Norman Whitfieldで、
彼はThe Temptationsという名門グループを素材に、
Jimi Hendrix、Sly & The Family Stoneのコンセプトを
モータウン・サウンドに移入、
ストリート感覚をむき出しにしながら、
後にサイケデリック・ソウルと呼ばれるスタイルを確立してゆく。

そしてMiles Davisもこの時既にIn a Silent Wayを発表し、
来るBitches Brewの誕生に向けて、
大股で日進月歩していた。

ロックでは、The Beatlesの解散が秒読み段階を迎え、
The Rolling StonesにはMick Taylorが加わり、
Creamを抜けたEric ClaptonはSteve Winwoodらと
Blind Faithを結成、
そしてThe WhoはTommyを発表し、
Led Zeppelinという巨大なアイコンも既にデビューを飾っていた。

主にロック側のめまぐるしい動きに対し、
旧来からのソウル・ミュージックと呼ばれるジャンルは、
どこか乗り遅れてる感が否めないけど、
これも先述のNorman Whitfieldを振り出しに、
やがてCurtis MayfieldやMarvin Gaye、Stevie Wonderらが、
その作家性を発揮した展開を見せてゆくことになる。

 

 

そんなめまぐるしい動きの中で発表された本作。
前年に暗殺されたMartin Luthur Kingを追悼する、
DionのAbraham, Martin & Johnのカヴァが
収録されています。

例えばThe SupremesのLove Child
The TemptationsのCloud Nineでは、
ゲットーの貧困生活について歌われ、
特に後者では麻薬のことにまで触れられて、
それをワウワウ・ギターを前面に押し出した
ファンキーなサウンドとミックスしていた。
しかしSmokey Robinsonは、歌詞の内容、
そしてサウンド面において、どちらの方法も取らず、
自分にできることを最大限ここで表現していた。

先述のAbraham, Martin & Johnや、
My Girlのセルフ・カヴァといった
ラインナップも素晴らしいんですが、
本作は何はさておきHere I Go Againです。
50年代のドゥーワップ・グループの影響を受け、
デトロイトのジャズとブルースの世界から出、
歌手として、ソングライターとして、孤高の域に達した
Smokey Robinsonが、このウッドストック・イヤーに
辿りついた美しいバラード。

この歌、そしてアルバムには、
名門ドゥーワップ・グループ、Sonny Til & The Oriolesの
元メンバー、Terry “Buzzy” Johnsonが参加している。
64年にレーベルのソングライターとして、
Smokey Robinson自ら彼をスカウトしたんだ。
奇しくも前年に没したFrankie Lymonがなし得なかった、
Berry Gordy, Jr.と二人三脚でMotown Recordsを始めた
Smokey Robinsonだからこそ到達できた領域。

カリフォルニアのヒッピー文化に安易に
乗らなかったからこそ、今新鮮に響く
Pet Soundsと同じように、
サイケやディスコに安易に乗らなかった
Smokey Robinsonの世界というのも、
また新鮮に映るんですね。