1. Yesterday's Papers
(Mick Jagger/Keith Richards)
2. My Obsession
(Mick Jagger/Keith Richards)
3. Back Street Girl
(Mick Jagger/Keith Richards)
4. Connection
(Mick Jagger/Keith Richards)
5. She Smiled Sweetly
(Mick Jagger/Keith Richards)
6. Cool, Calm & Collected
(Mick Jagger/Keith Richards)
7. All Sold Out
(Mick Jagger/Keith Richards)
8. Please Go Home
(Mick Jagger/Keith Richards)
9. Who's Been Sleeping Here?
(Mick Jagger/Keith Richards)
10. Complicated
(Mick Jagger/Keith Richards)
11. Miss Amanda Jones
(Mick Jagger/Keith Richards)
12. Something Happened to Me Yesterday
(Mick Jagger/Keith Richards)

Originally Released Jan. 20, 1967
Produced by Andrew Loog Oldham

サマー・オヴ・ラヴと呼ばれた1967年、
日本ではザ・タイガースがデビューし、
GSブームはピークに達した。
そして日本のストーンズ人気の拡大において、
タイガースの果した役割は絶大だ。

1990年に遂にストーンズが来日して、
東京ドームでコンサートをやった時、
タイガースに感謝した日本のストーンズ・ファンは、
僕だけじゃないはず。

67年は他にもゴールデン・カップスやモップス、
そしてテンプターズもデビューしている。
洋楽カヴァは当時のGSグループの常套手段で、
アメリカのブルース・リバイバルに素早く対応した
ゴールデン・カップスは、日本のブルース・ロックの
最高峰といっていい。

「僕のマリー」や「シーサイド・バウンド」
「君だけに愛を」などのヒット曲で、
日本のモンキーズとして扱われていたタイガースは、
デビュー盤『THE TIGERS ON STAGE』で、
ストーンズを軸にした洋楽カヴァをぶちかまし、
71年の解散コンサートでもやっぱり、
CCRにBee Gees、Grand Funk Railroad、
そして勿論ストーンズをどかどかやっていたのだから、
糸井五郎さんがラジオで掛ける以上の
波及効果はあったと思う。

67年にはテンプターズもデビューしていて、
彼らもストーンズのカヴァをやっていたけど、
このグループは松崎由治さんのオリジナル楽曲が
最大の魅力だった。
日本語ロックの元祖は、フォークルでも、ジャックスでも、
はっぴいえんどでもなく、テンプターズなのである。
それがために業界はショーケンを松崎さんから離し、
テンプターズを解散に追いやった。

もっともGSのブームが短命だった背景には、
演奏する場所が極端に少なかったことが挙げられる。
フォークならギター1本あればどこにでも行けるけど、
ロック・バンドはそうはいかない。
今のようにライヴハウスなどない時代だから、
ゴールデン・カップスやモップスは勿論、
スパイダースやタイガース、テンプターズ、
オックスといった人気グループですら、
専らジャズ喫茶で主に活動していた。
 

 

本作も、アメリカとイギリスで内容が若干異なる。
アメリカ版にはシングルのLet's Spend the Night Together
Ruby Tuesdayがねじ込まれている。 
イギリス版には、その2つは入っていないどころか、
シングル・カットすらない。
先のAftermathでのPaint It, Blackの扱いと一緒である。

時同じくしてThe Beatlesは、Sgt. Pepper's
レコーディングに入っていて、その先行シングルとなる
Penny Lane/Strawberry Fields Foreverの発売が
目前に迫っていた。

また同じAbbey Road Studioでは、Pink Floydが
デビュー・シングルArnold Layne
レコーディングしていたし、
The Jimi Hendrix Eeperienceが突如彗星の如く現れ、
Creamも既にデビューしていて、
映画『欲望』ではJeff Beckが日本製のギターを叩き壊していた。
1966~67年のロンドンは次々に新しいことが起こっていたんだ。

さて、US版ではキンキー・スタイルが楽しい
1曲目のLet's Spend the Night Together
最高の掴みとなって、気分が盛り上がるわけですが、
UK版はそうはいかない。

The Zombiesみたいなテーマで、自殺未遂した
ガールフレンドのことをかなり明るく歌う
Yesterday's Papersの妖しさったらないし、
先のLady Janeでは控えめだったサイケデリックな要素が
露わになったBack Street Girlも、
ちょっと他所の世界へいっちゃってる。

そしてそれ以上に興味深いのが、
Mick Jaggerのフレージングの新しさだ。
ミックはBob Dylanに心酔していた。
もっといえば、ディランの歌い方から何かを掴んだ。
1つの単語を2つや3つのフレーズに分ける、
She Smiled Sweetly、Cool, Calm & Collectedに、
ミックの新境地を見る。

B面にいって、キンキー・スタイルのAll Sold Out
楽しいったら楽しいな。
The WhoのMagic Busに先駆ける
ボ・ディドリー・ビートのPlease Go Homeも愉快痛快。
つまり従来のロンドンのロックンロールと、
ミックの気まぐれなディラン趣味がバランスよく
ブレンドされているのが、本作の魅力。

それを殊更に印象付けるのが、ニューオーリンズ・スタイルの
Something Happened to Me Yesterdayだ。
様々な声色を使い分けると定評のあるディランだが、
ミックだって、ディランになったりレノンになったり、
負けていない。
そういう耳で聴くと、キースの可愛らしい声も
ハリスンしているわけだが。