1. The Soulful Shack
(William “Smokey” Robinson)
2. The Love I Saw in You Was Just a Mirage
(William “Smokey” Robinson/Marvin Tarplin) 
3. My Love for You
(Clarence Paul/Morris Broadnax)
4. I'm on the Outside (Looking In)
(Bob Weinstein/Teddy Randazzo)
5. Don't Think It's Me
(William “Smokey” Robinson)
6. My Love Is Your Love (Forever)
(Ivy Jo Hunter/Stevie Wonder)
7. More Love
(William “Smokey” Robinson)
8. After You Put Back the Pieces 
(I'll Still Have a Broken Heart)
(Clarence Paul/Morris Broadnax/Stevie Wonder)
9. It's a Good Feeling
(Edward Holland, Jr./Lamont Dozier/Brian Holland)
10. You Must Be Love
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore)
11. Dancing's Alright
(William “Smokey” Robinson/Ronald White/Robert Rogers/
Warren Moore/Marvin Tarplin) 
12. The Tears of a Clown
(William “Smokey” Robinson/Stevie Wonder/Henry Cosby)

Originally Released Aug. 29, 1967
Produced by William “Smokey” Robinson

このアルバムの最後に収録されている
The Tears of a Clown
これが1970年に突然シングル・カットされ、
イギリスとアメリカ双方のヒット・チャートで1位を獲得。
同アルバムも、The Tears of a Clownと改題して、
リイシューされるという珍事が起こった。

The Beatlesが3曲もモータウン・ナンバーを
カヴァしてからというもの、
イギリスでは本国以上にMotown Recordsのファンが多かった。
The Rolling Stonesに至っては、いまだに
The TemptationsのAin't Too Proud to Beg
ライヴで演奏してもいる。

60年代末には、Marv JohnsonやThe Elgins、Jimmy Ruffinら、
本国ではとっくに忘れられ、見向きもされなかった
歌手やグループのレコードがイギリスで大ヒットし、
英国ツアーを行うという珍事も起こったのだった。

話はちょっと横道にそれるけど、
同じように本国では過去のグループとして
片付けられていたThe Beach Boysも、イギリスでは、
The BeatlesやThe Rolling Stonesらと同等の扱いを受け、
1968年にはロンドンのレインボウー・シアターでコンサートを敢行。
肝心要のBrian Wilsonを欠いていたとはいえ、
ライヴ演奏によるWouldn't It Be Nice
Good Vibrationsにロンドンっ子が酔いしれた。

ロンドンのジャズとブルースのシーンから生まれた
ブリティッシュ・ロックと呼ばれるスタイル。
The Rolling Stonesはそこから出てきたのだし、
The YardbirdsやCream、Jeff Beck Group、
Led Zeppelinといったグループがそれに続いた。

だがイギリスのロックには別の流れがあって、
The Beatles、The Who、The Kinksといった連中は、
そのもう1つの流れに属していた。
これはDavid BowieやThe Clash、The Smithらを経て、
現在のUKロックへ連綿と続くものだ。

そしてそれは、60年代のモータウン愛好家、
或いはThe Beach Boysのレコードを欠かさず買うというような
センスから生まれたのではないか。
少なくとも世間がヒッピーだウッドストックだと
騒いでいる時に、それとは全く異なる動きがあったのだ。
 

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1967年に出たこのアルバムは、
Going To A Go-Goに匹敵する出来。
ラストのThe Tears of a Clownにばかり
目を奪われては、あまりに勿体ない。

アルバムは、軽快なダンス・ナンバー‥
The Soulful Shackで始まり、
Stevie Wonderとコラボレイトしたパーティー・ソング
The Tears of a Clownで終わるわけですが、
それらにサンドイッチされた、
いかにもなスモーキー・ワールドがたまらん。

2曲目、フォーキーなサウンドを携えた
The Love I Saw in You Was Just a Mirage
12弦アコギのリフを中心にサウンドをまとめ上げ、
フォーク・ロック全盛期に作られたことを物語ってるが、
それが1967年のMotown Recordsというのを考えると
非常に珍しいし、普遍的なサウンドとメロディです。

"just a minute ago your love was here
All of a sudden it seem to disappear
Sweetness was only heartaches camouflage
The love I saw in you was just a mirage"

ここの4行の韻の踏み方は、もう神業としか思えん。
そしてSmokey Robinsonの歌も素晴らしい。

そのスモーキー・ワールド全開なのが、
7曲目のMore Loveだ。
ピアノとドラムがジャジーな対話をしながらお膳立てをし、
Smokey Robinsonが歌い出すわけです。
この導入部だけでもう、Choosey Beggar
匹敵する名曲であることが分かる。

これは、奥さんのClaudette Rogers Robinsonが
8回も流産を繰り返すという、作者の、
デリケートでパーソナルな体験に基づいて作られた。
それでもそのうちなんとかなる、落ち込むなと、
まず冒頭で励ましている。
そしてサビの部分。

"More love, more joy
Than age or time could ever destroy
My love will be so sound
It would take about 100 lifetimes
To live it down, wear it down, tear it down"

あまりにもスコーンと抜けのいいサウンドに、
そんな悲しい物語が詰まってるとは思わなかった。

そしてラストのThe Tears of a Clown
これは元々1966年のクリスマス・パーティー用に、
Stevie Wonderと、レーベルのサックス奏者Hank Cosbyが、
インストゥルメンタルとして書いたものだった。
で、その後スモーキーが、オペラ『道化師』を
モチーフにした歌詞をつけた。
テーマがテーマなので、サウンドもサーカス。

この翌年、Holland=Dozier=Hollandが
レーベルを抜けてしまうことからも、
Motown Recordsの黄金時代を飾る1枚として、
是非とも抑えておきたいところ。