1. 涙の日曜日
作詞:なかにし礼 作曲:鈴木邦彦
2. マンチェスターとリバプール
作詞・作曲:Andre Popp
3. オー・プリティー・ウーマン 
作詞・作曲:A.C. Williams
4. 二人の青い鳥
作詞・作曲:Billy Sherrill, Curly Putman
5. 君想ひし今宵
作詞:堺正章 作曲:Paul Misraki, 
Oscar Hammerstein II and Richard Rodgers
6. ソー・ロング・サチオ
作詞・作曲:かまやつひろし
7. 風はいい奴
作詞:太田かおる 作曲:かまやつひろし
8. エニータイム・アット・オール
作詞・作曲:John Lennon, Paul McCartney
9. タッチ・ミー 
作詞・作曲:Robby Krieger
10. ムッシュー&タロー
作詞・作曲:かまやつひろし
11. 花とギターと女の子
作詞:なかにし礼 作曲:井上順
12. ガラスの聖女
作詞:なかにし礼 作曲:松崎由治
13. スタジオAM9:00
作曲・編曲:ザ・スパイダース

Originally Released May 25, 1969

1969年である。夢の60年代が終った年。
それは日本のグループ・サウンズにとっても
例外ではなかった。

68年7月に出たフォークルの『紀元貮阡年』、
10月に出たスパイダースの『明治百年、すぱいだーす七年』。
だがそれ以上に大きな出来事が、
同じ年の3月にあった。
ジャックスが「からっぽの世界」でデビュー。
グループ・サウンズとも、フォークとも異質な、
暗く、重い歌とサウンド。
それを収録したファースト・アルバム『ジャックスの世界』は、
セールス的には何事もなかったかのように済まされたが、
同業者、そして後世に与えたインパクトは凄まじい。

西田佐知子さんの「アカシアの雨がやむとき」が
リヴァイヴァル・ヒットし、弘田三枝子は
「人形の家」をヒットさせ、時代は突然、
植木等や堺正章とは正反対の、
ネクラな歌を求めるようになった。
「8時だヨ!全員集合」が始まって、
いかりや長介はこの時代の怒りを伴った形相で
お茶の間に姿を現し、毒蝮三太夫は公開生放送に
集まった婆さんに「汚ねえババアだなぁ」と言い出す始末。
人類が初めて月に降り立った1969年は、
色んなことが変わり始めていた。

そんな大きな時代の波の中で、
グループ・サウンズの置かれた状況も
様変わりしてきた。

 

 

GS人気を引っ張っていたタイガースやテンプターズ、
オックスですら人気が下火になってきた1969年。
前年に『明治百年、すぱいだーす七年』という
傑作アルバムを出しながら、とっくに
地味な存在になっていたスパイダースは、
いよいよ自分たちでその引導を渡す時期が迫っていた。

既に堺正章や井上順ら各メンバーのソロ活動が増え、
バンドとしての一体感は薄れている。
The BeatlesがAbbey Roadで60年代に
引導を渡したように、スパイダースも本作で
旧い時代を終らせにかかった。

その成果が、3曲目のOh, Pretty Womanと、
ラストの「スタジオAM9:00」だ。
スパイダースに加入してからギターを猛特訓し、
気が付けば当代随一のギタリストに成長した
井上堯之さんの卓越したギター・プレイと、
大野克夫さんの名アレンジャーぶりが、
存分に堪能できる。
で、かまやつさんが最後に「のらねえな」と
ぼやいて、グループ・サウンズに引導を渡したわけです。