1. The Tracks of My Tears
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore/Marvin Tarplin) 
2. Going to a Go-Go
(William “Smokey” Robinson/Robert Rogers/Marvin Tarplin) 
3. Ooo Baby Baby 
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore) 
4. My Girl Has Gone
(William “Smokey” Robinson/Ronald White/
Warren Moore/Marvin Tarplin) 
5. In Case You Need Love
(William “Smokey” Robinson)
6. Choosey Beggar
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore) 
7. Since You Won My Heart
(William “Smokey” Robinson/William “Mickey” Stevenson)
8. From Head to Toe
(William “Smokey” Robinson)
9. All That's Good
(William “Smokey” Robinson/Warren Moore) 
10. My Baby Changes Like the Weather
(Hal Davis/Frank Wilson) 
11. Let Me Have Some
(William “Smokey” Robinson/Robert Rogers)
12. A Fork in the Road
(William “Smokey” Robinson/Ronald White/Warren Moore)

Originally Released Nov. 1, 1965
Produced by William “Smokey” Robinson

前作Doin' Mickey's Monkeyとの間には、
2年ものインターバルがある。
この間The Miraclesは何もしていなかったわけではなく、
Greatest Hits from the Beginningという
2枚組のベスト・アルバムをリリースし、
またシングル盤も出していたのです。

1964年に、レーベルの看板歌手だったMary Wellsが、
Atlantic Records傘下のアトコへ引き抜かれ、
Smokey Robinsonとの創造的なパートナーシップは
終りを迎える一方、
The Way You Do the Things You Do
My Girlのヒットによって、The Temptationsを、
The Supremesと並ぶレーベルの看板グループに
仕立ててみせた。

だが、それ以上に大きな出来事があった。
1964年にアメリカへ進出した、The Beatlesの存在である。
ニューヨークのケネディ空港に降り立った飛行機には、
The Beatlesとともに、Phil Spectorも乗っていたが、
当然スポットライトが当たっていたのはThe Beatlesで、
アメリカのポピュラー音楽における主役の交代が行われた。

ロックンロールの本場が震え上がり、
The BeatlesにThe Rolling Stones、The Animalsと、
次々にイギリスからやってくるバンドを前に、
大きな軌道修正を余儀なくされた。

The Beatlesがもたらしたのは、ビート革命です。
The BeatlesはRingo Starrのドラムを前面に押し出し、
強烈なビートを叩き出していたけど、
同じ頃のアメリカ音楽は、たとえ黒人音楽であっても、
ビートが抑えられていた。
俗にモータウン・サウンドと呼ばれるものも、
The Beatlesがアメリカへやってこなければ、生まれなかった。
 

 

これは、殆どコンセプト・アルバムである。
Smokey Robinsonという天才が、
当時のグループとレーベルの叡智を結集し、
The Beatles体験に対する一つの回答を示した。

また本作は、Smokey Robinsonの作家性が強く出ている。
彼は、1曲‥My Baby Changes Like the Weatherを除く
全ての曲の作詞をし、The Miraclesのメンバーや、
William "Mickey" Stevensonとの共同ソングライティングによって、
これまでにもましてグループ表現にこだわっている。
こんなところにも、The Beatlesを通過した成果が表れている。
これは、60年代のMotown Recordsで、
アルバム作りということに意識的になって作られた、
ほとんど唯一の作品。捨て曲なし。

アルバムは、印象的なバラード
The Tracks of My Tearsで始まる。
無駄が削ぎ落とされ、シンプルこの上なく、
しかし多くの物語を含んだ歌詞。
3分にも満たないこの歌に、様々なドラマと、
サウンド的なアイディアが盛り込まれている。

"People say I'm the life of the party
'cause I tell a joke or two
Although I might be laughing loud and hearty
Deep inside I'm blue"

この最初のヴァースがまず素晴らしい。
ジョークを言ったりしてパーティーにいるように
賑やかに見えるかもしれないけど、
心の底では落胆しているんだ、ということを、
韻を踏みながら物語として成り立たせてるというのはね。

2曲目‥アルバムのタイトル曲でもあるGoing to a Go-Go
かつてモンキー・ブームを後押ししたThe Miraclesは、
今度はゴー・ゴー・ダンスをプッシュ。
どっしりと重いタムタムと、
Marv Tarplinの"グーギャン"ギターの絡みが痛快。
一説には、The Rolling Stonesの
Satisfactionのリフを
ヒントに作ったともいわれてますが、
こういう強烈なビートを叩き出してるところにも、
The BeatlesやThe Rolling Stonesのもたらした
ビート革命の成果が生きています。

ニューヨークの『ペパーミント・ラウンジ』という
ディスコでは、ゴーゴー・ブーツにミニスカートという
いでたちの女の子たちが、夜な夜なツイストを踊っていた。
その現象はLAにも飛び火し、『ウィスキー・ア・ゴーゴー』という
ディスコでは、ゴーゴー・ガールズが現れて社会現象に。
日本でも、ゴーゴー・ガールやゴーゴーボーイがブームになったし、
赤坂の『ムゲン』は、『ウィスキー・ア・ゴーゴー』のコンセプトを
取り入れたディスコだった。

そんなアッパーなダンス・ナンバーに続いて、
セクシーなスロー・バラードのOoo Baby Baby
ミディアム・テンポのMy Girl Has Goneと、
緩急自在な選曲が、このアルバムの一番の魅力。

そしてA面の‥いや、このアルバム最大の聴きどころが、
Choosey Beggarです。
1965年にこの曲を書いたSmokey Robinsonは、
ホントに凄い!
歌詞、メロディ、サウンド‥もう素晴らしすぎる。

ここでいうbeggarは愛を求めるの意。
物乞いは選り好みなんかできないはずで、
気持では愛を求めてるくせに
これを悉く逃してきた、と歌い出す。

そしてクライマックスで歌われる2行‥
"If beg you I must then I'll never give up cause 
your love is the only love to fill this beggars cup"のところ。
あなたの愛だけが、この空っぽのカップを
満たすことが出来るんだから、決して手放さない、の意。

A面の聴きどころがChoosey Beggarなら、
B面はA Fork in the Roadになるか。
この2曲は続いてるんだ。
forkは分かれ目、追分のこと。恋のY字路。
美空ひばりみたいですね。
50年代ドゥーワップ風のものあり、ゴスペル風の歌あり、
My Baby Changes Like the Weatherなどは、
Stevie Wonderが歌っててもおかしくないナンバー。

Bob DylanのHighway 61 Revisited
The Beach BoysのToday!
Otis ReddingのOtis Blue
そしてThe MiraclesのGoing To A Go-Go
The Beatlesのこじ開けたビート革命は、
1965年にこれだけの成果を生んでいる。

そのThe Beatlesも、Bob DylanやThe Beach Boys、
Smokey Robinsonなどをエッセンスにして、
Rubber Soulを完成させているわけで、
少なくともこの5枚は、家のCD棚に揃えておきましょう。