1. It Won't Be Long 
(John Lennon/Paul McCartney) 
2. All I've Got to Do 
(John Lennon/Paul McCartney) 
3. All My Loving 
(John Lennon/Paul McCartney) 
4. Don't Bother Me 
(George Harrison) 
5. Little Child 
(John Lennon/Paul McCartney) 
6. Till There Was You 
(Meredith Wilson) 
7. Please Mr. Postman 
(Georgia Dobbins/William Garrett/
Brian Holland/Robert Bateman/Freddie Gorman) 
8. Roll Over Beethoven 
(Chuck Berry) 
9. Hold Me Tight 
(John Lennon/Paul McCartney) 
10. You Really Got a Hold on Me 
(William “Smokey” Robinson)
11. I Wanna Be Your Man 
(John Lennon/Paul McCartney) 
12. Devil in Her Heart 
(Richard Drapkin) 
13. Not a Second Time 
(John Lennon/Paul McCartney) 
14. Money (That's What I Want) 
(Berry Gordy Jr./Janie Bradford) 

Originally Released Nov. 22.1963
Produced by George Martin

僕が最初に買ったThe BeatlesのCDがこれだった。
この印象的なポートレート風のジャケットが目に付いて、
数ある中からこのセカンド・アルバムを選んだ。
これとRevolverは、ジャケ買いしやすい
数少ないThe BeatlesのCDだと思う。

The Beatlesは黒人のRhythm & Bluesを
出発点にしていると言われていますけど、
実際にはThe Rolling Stonesのように、
その特徴を押し出してるわけではない。
このセカンド・アルバムは、
The BeatlesなりにRhythm & Bluesを
消化しようとした唯一の作品と言ってもいい。

デビューから1年、The Beatlesは
イギリスを代表するグループに成長し、
バンドとしてもタイトに円熟味を帯びてきた。
アルバム僅か2枚目にして、これは驚異的ではないか。

驚きはそれだけではない。
本作からのシングル・カットはなし。
当時アルバムというのは、シングルの寄せ集め、
もしくはシングルとのタイアップばかりだったのに、
The Beatlesは2作目にしてこの慣例をぶち破った。
これが当時どれだけ新鮮かつ挑戦的に受け止められたか、
想像に難くない。

アルバムからシングルを切らないということは、
シングル曲が入っていなくても売る自信があるということ。
63年5月8日付の全英チャートで1位になった
前作Please Please Meは、
その後29週間(!)その座を守り、30週目に蹴落としたのが、
このwith the beatlesなのである。
そして今作は21週間1位を守ったということで、
1963年のイギリスは、Fab Four一色だったわけですね。
因みに22週目の1位を阻止したのが、
The Rolling Stonesのファーストです。

アメリカのCapitol Recordsにおける
最初のアルバムMeet The Beatlesは、
本作と同じカヴァ写真を使いながら、
冒頭にキャピトルにおける最初のシングル
I Want to Hold Your Hand/I Saw Her Standing Thereを、
3曲目もイギリスではシングルになっていたThis Boy
収録するという具合で、with the beatlesの世界は
ぶち壊されてしまった。

だが別の見方をすると、Meet The Beatles
収録されたカヴァ曲はTill There Was You1曲のみで、
後はメンバーによるオリジナル曲で固められ、
The Beatlesが、自分たちで曲を書き、演奏もする
グループなんだということが、よりリアルに分かる。
with the beatlesMeet The Beatlesは、
The Beatlesの表と裏の相を成しているのだった。

 

 

The Bealtesのアルバム全般にいえることだけど、
Please Please MeからHelp!までについては、
作曲者クレジットに注意しよう。
カヴァ曲もジャンジャン取り入れており、
The Beatlesの音楽がどういったところから出発しているか、
また例えばこのアルバムのように、
Smokey RobinsonやChuck Berryといった、
他のジャンルへ興味を広げるヒントが詰まっているから。

それぞれの曲について、John Lennonは
「Smokey Robinsonを何とかやろうとした」と述べているが、
1, 2, 5, 13にはその特徴が出ている。

プロデューサーのGeorge Martinが、
"5人目のThe Beatles"として機能し始めてもいる。
この13及び14での彼のピアノは、
ロックンロールのピアノの見本みたいなものだ。
彼は、1年前にはロックンロールとは違う世界にいた。

いきなり"イ・ウォビ・ロン~"と入るIt Won't Be Longは、
早くもCan't Buy Me Loveの尻尾を捕まえている。
Ringo Starrが鳴らすシンバルの美しいこと。
この先も口を酸っぱくして言うけど、
The BealtesはRingo Starrのドラムをよく聴くこと。

ギラギラと脂ぎったIt Won't Be Longから、
John Lennon言うところのSmokey Robinsonの
影響を消化しようとしたというAll I've Got to Doへ。
しかしRingo Starrのドラムは、
Booker T & The MG'sのAl Jacksonみたいなのである。

この時点ではJohn Lennonばかりが目立つが、
Paul McCartneyも名曲All My Loving
ポッと生み出している。
Chet AtkinsばりのGeorge Harrisonのソロが素晴らしい。
All My Lovingのギター・サウンドには、
UKロックの原点が詰まっていますね。

George Harrisonが初めて曲を書いたDon't Bother Me
本人もメンバーも決して満足はしてなかったようだけど、
このアルバムには合ってるし、
他のマージー・ビート・グループなら、
このレベルの曲はシングル・レコードになっている。
しかもエキゾチカな雰囲気が漂っていて、
後に彼が目指す片鱗が、もう見える。
Ringo Starrのハイハットの美しいこと。
この曲を救ってるのは、ハイハットですね。

この当時のThe Beatlesの売りは、
John Lennonのハーモニカだった。
Eric Clapton登場以前、そのハーモニカが、
The Bealtesにとってのギター・ソロの役目を果たしていた。
それを確かめられるのが、Little Childだ。
(ロックでギター・ソロというパートを一般的にしたのは、
Eric Clapton擁すThe Yardbirdsの登場あってのこと)
因みに、これをブラス・バンドやオルガンに変えると、
James Brownになりますね。

前作でA Taste of Honeyという曲をやった
Paul McCartneyは、今作でもTill There Was Youという
ポップスを取り上げている。
しかもこの曲、ライヴでの主要レパートリーだったりする。
ロックンロール=エレキ、という常識をあっさり覆し、
なおかつアコギでしっかりロックンロールしている。
The Rolling StonesのTell Meからなぜアコギが聞こえるのか、
Till There Was YouThis Boyに、
ショックを受けたからだと見る。

モータウン関連3曲は後回しにするとして、
George Harrisonがリード・ヴォーカルを務める
Chuck BerryのRoll Over Beethoven
本人たちに確かめたわけじゃないけど、
George Harrisonの出番を
もう少し増やしたら?ということで、
この曲が選ばれたんだと思う。
ハンド・クラッピングでThe Miracles的なアプローチ。

途中から始まったように突然出てくる、
Paul McCartneyのHold Me Tight
これにオルガンが入るとI Get Aroundになるな。

Ringo StarrによるI Wanna Be Your Manは、
John LennonとPaul McCartneyが1分で書いて、
The Rolling Stonesにあげたという
いわくつきのナンバー。
ただ曲をやったのではない、
「この程度の曲くらい、乗り越えてみろよ」という、
エールを送ったのだ。

The DonaysなんてGirl Group、
ここでのDevil in Her Heartがなければ
一生知ることはなかったが、デトロイト出身で、
Motown Recordsとも繋がりがある。
The Donaysのレコードでは、
Motown Recordsのスタジオ・ミュージシャンが参加し、
リード・シンガーのYvonne Vernee-Allenは、
The Elginsの2代目ヴォーカリストになっています。
George Harrisonのバックでユニゾンでつける
John LennonとPaul McCartneyが
バック・コーラスがたまらん。

それにしても、John Lennonとは何という歌手なんだろう。
Motown Recordsのカヴァ曲全てでヴォーカルを取っているが、
はっきり言ってオリジナルをあっさり超えている。

Please Mr. PostmanはThe Marvelettesがオリジナルで、
Motown Recordsにとって初の全米1位となった曲。
同レーベルの黄金期を築くBrian Hollandがプロデュースし、
Marvin Gayeがドラムを叩いております。
またThe Carpentersのカヴァのほうも有名ですね。

You Really Got a Hold on Meは、
Smokey Robinsonが書いたThe Miraclesのヒット曲。
The TemptationsのMy Girlを作った人でもあります。
本人に確かめたわけじゃないけど、
The Beatlesがテンポを落として
You Really Got a Hold on Meを演奏してるのを聴いて、
My Girlを作ったんだ。

そしてMoney (That's What I Want)は、
Barrett Strongのカヴァ。
John Lennonは1969年のLive Peace in Toronto 1969
出演した時にも、この曲をやっていますね。
Eric Claptonがリード・ギターで、
オノ・ヨーコが奇声をアゲてるやつ。

1年前までロックンロールと別に世界にいた男が、
どうしてこれだけのピアノを弾けるのか。
ここでのGeorge Martinは、本当にいい仕事をしています。

この曲は、Berry Gordy, Jr.が書いて、 
1959年にAnna Recordsからリリースされ、
それなりにヒットしたんだけど、
彼の手元に入ってくるお金があまりに少ない。
「これなら自分でレコードを作って売った方がマシですね」との
Smokey Robinsonのアイディアで、
Motown Recordsを作るわけです。

因みにBarrett Strongはその後、
Norman Whitfieldとソングライター・チームを組んで、
60年代後半から70年代に掛けて
Marvin GayeやThe Temptations、Edwin Starrらの
ヒット曲を量産しています。

そして「Smokey Robinsonを何とかやろうとした」成果が、
Not a Second Timeだ。
これだけの重低音を聴かせる白人バンドが、
1963年にあっただろうか!?
まさにRingo StarrあってのThe Beatlesサウンドにのって、
John Lennonは本当に気持ちよく歌っている。

The Beatlesの数あるアルバムの中で、
例えばRubber Soulを最初に聴いていたら、
このグループに対する僕の見方は変わっていただろう。
しかしこのアルバムを最初に手にしたことで、
The Beatlesのみならず、
その後の音楽の聴き方も決定付けたと思う。