1. 風が泣いている
作詞・作曲:浜口庫之助
2. あの虹をつかもう
作詞:倉本聰 作曲:村井邦彦 
3. 恋のドクター 
作詞・作曲:かまやつひろし
4. イヴ
作詞・作曲:かまやつひろし
5. 僕のハートはダン!ダン! 
作詞・作曲:かまやつひろし
6. 君にあげよう 
作詞・作曲:浜口庫之助
7. ハンキー・パンキー
作詞・作曲:Jeff Barry and Ellie Greenwich
8. ロンリー・マン 
作詞・作曲:かまやつひろし
9. バラ・バラ
作詞・作曲:Horst Lippock
10. 愛しておくれ 
作詞・作曲:Steve Winwood, Spencer Davis and Muff Winwood
11. バン!バン! 
作詞・作曲:かまやつひろし
12. サッド・サンセット (夕陽が泣いている)
作詞・作曲:浜口庫之助

Originally Released Sep. 5, 1967

1967年6月1日、Sgt. Pepper's登場。
The Beatlesが世界に発信したこのアルバムは、
サマー・オブ・ラヴと呼ばれた1967年の空気が
そのままパッケージされている。
ある種の年代、Sgt. Pepper'sが常に上位に置かれるのは、
置き換え不可能な空気がそこにあるからです。

そのThe Beatlesのレコードから2週間後の
6月16日からの3日間、アメリカでは
Monterey International Pop Festival開催。
シスコのフラワー~サイケデリック・ムーヴメントの
両雄たるGrateful Dead、Jefferson Airplaneは元より、
Janis Joplin擁するBig Brother & Holding Company、
The Jimi Hendrix Experienceが
大勢のヒッピーの前に初めて登場した。

そのモンタレーにも登場したJefferson Airplaneは、
Grace Slickをヴォーカルに迎えて
Surrealistic Pillowを発表。
CreamのDisraeli Gears
Buffalo SpringfieldのBuffalo Springfield Again
それにPink FloydとThe Doors、
The Jimi Hendrix Experiencのデビュー盤が
英米でリリースされた1967年。
Sly & The Family Stoneもこの年にデビューし、
John Coltraneは7月17日に死んだ。

1967年に噴出したサマー・オブ・ラヴという空気は、
2年後のウッドストックでピークを迎え、The Eaglesが
76年暮れにHotel Californiaを発表するまで、
アメリカ西海岸を支配したのです。

そうしたフラワー~サイケデリック・ムーヴメントの
出来事を、日本のお茶の間も実感した日があった。
1967年6月25日、イギリスのBBCが
『アワ・ワールド』という番組を放送した。
大勢のオーケストラが居並び、Mick Jaggerに
Keith Richards、Marianne Faithful、Gary Walker、
Keith Moon、Graham Nash、Eric Clapton、
Pattie Harrison, Jane Asherらが顔を揃え、
主役たるThe Beatles登場。
All You Need Is Love
「愛こそはすべて」と邦題されたその曲を、
John Lennonはガムを噛みながら歌った。
世界26ヶ国、4億人もの人間が見つめる
衛星生中継のテレビ番組で、ガムを噛みながら
「愛こそはすべて」と歌うジョンのカッコよさ。
このセンスが、1967年の日本にはなかった。

この前年に日本では、「ヤング720」という
音楽番組がTBS系列で放送開始されており、
The DoorsにPink Floyd、Cream、Janis Joplin、
それにThe Jimi Hendrix Experiencといった
植草甚一云うところのニュー・ロックが
じゃんじゃん紹介されていたし、
糸居五郎さんも自身のラジオ番組で
そうしたバンドのレコードを掛け捲っていた。
The YardbirdsはJeff BeckとJimmy Pageの
ツイン・リード・ギターとなり、
Michelangelo Antonioniの『欲望』では、
Train Kept a-rollin'を演奏しながら
Jeff Beckが安いヤマハのギターを叩き壊していた。

「ヤング720」や糸居五郎さんの番組に
接していた人たちは、当然The Beatles以後の動きを
キャッチしていたのに、GSはどんどん歌謡曲化し、
気が付いたら若者は岡林信康と高田渡のほうへ
流れていってしまったわけです。
 

 

一方、日本のビート・グループの扉を開けた
ザ・スパイダースは、その英米の動きをキャッチしつつも、
どんどん歌謡曲的な方向へ引きずられていた。
サマー・オブ・ラブ真っ只中にリリースされた
この4枚目のアルバムは、その土俵際で
何とか踏みとどまっているというものです。
全員ミリタリー・ルックなのは、
当然Sgt. Pepper'sを意識したもの。

アルバムの構成は、1曲目の「風が泣いている」を
始めとするハマクラ作品と、かまやつさん主導による
ちょっと実験的なサイケデリックなものとが、
混在している。

一番の聴きものは、3曲目の「恋のドクター」か。
The BeatlesのDoctor Robertを多分に意識した上で、
恋の病は医者でも治せないと、堺正章が半ば
おちょくるように歌っている。
"スパスパスパスパ"は、ハイになる行為を連想させる。
しかし、凄い歌だ。

ハマクラ作品「風が泣いている」の
堺先生の歌を聴くと、40年前の過ぎたことなんか
どうでもよくなるね。
The AnimalsのEric Burdon並にグッと来るんだ。
この声なくして、スパイダースはあり得ません。