1. Little Deuce Coupe
(Brian Wilson/Roger Christian)
2. Ballad of Ole' Betsy
(Brian Wilson/Roger Christian)
3. Be True to Your School
(Brian Wilson/Mike Love)
4. Car Crazy Cutie
(Brian Wilson/Roger Christian)
5. Cherry, Cherry Coupe
(Brian Wilson/Roger Christian)
6. 409
(Brian Wilson/Gary Usher/Mike Love)
7. Shut Down
(Brian Wilson/Gary Usher/Mike Love)
8. Spirit of America
(Brian Wilson/Roger Christian)
9. Our Car Club
(Brian Wilson/Mike Love)
10. No-Go Showboat
(Brian Wilson/Roger Christian)
11. A Young Man Is Gone
(Bobby Troup/Mike Love)
12. Custom Machine
(Brian Wilson/Mike Love)

Originally Released Oct. 7, 1963
Produced by Brian Wilson, Murry Wilson

1960年代には、どんなアーティストも、
年に最低でも1枚のアルバムを出すのが
慣行化していた。
The BeatlesやThe Rolling Stonesは勿論、
あのBob Dylanでさえ、1964、65年には
年2枚のアルバムを出しているくらいだから、
ある意味においては、レーベルもミュージシャンも、
アルバム作りというものを舐めていたともいえる。

レコード会社にすれば、売れる時に売っておこうと、
シングルないしはアルバム制作のノルマを
ミュージシャンに課していたようだし、
ミュージシャンも突貫工事でそれに応えていた。
そしてそれは確かに突貫工事には違いないけど、
その要求に応えながら、なおかつ、
レコード1枚ごとに全く違うことを
やっていたのがスゴイ。

今では、アルバム1枚出るのに、3年や5年、
時には10何年も間が空くのは珍しくない。
その3年や5年、10何年の間に、
バンドを取り巻く環境は大きく変わり、
気づいたら解散していたなんてのもザラだ。
YouTubeなどない時代には、例えばThe Beatlesが
今何をしているかを知る手段といえば、
レコードしかなかったし、おいそれと
ディランやストーンズのライヴを観に行けないとなれば、
毎年レコードを出してくれるのは有難いのである。

 

 

The Beach Boysは1963年に3枚のアルバムをリリースした。
このLittle Deuce Coupeは、
Surfer Girlが発売されて1月もしないうちに、
出ているし、この年3枚体制は、
65年まで続いたのだ。
(因みに64年はライヴ盤含め4枚出ている)

1963年夏、Capitol Recordsは、ホットロッドの
コンピレーション盤Shut Downをリリースしたが、
その際、バンドの同意なしに、
409、Shut Downを収録した。
それに対抗してBrian Wilsonは、録音中の新曲8曲を
速やかに完成させ、タイトル曲を始めとする
既存の楽曲3曲と合わせたアルバムをでっち上げ、
結果的にホットロッドのコンセプト・アルバムとなった。

時に男の趣味は理解できないと、女は口々に言う。
お互い様なのだが、それが見えていないので、
理解できないと言う。

車、バイク、オーディオ、レコード、ガンプラ‥
およそ家族で共有できない、
自分、もしくは共通の趣味を持つ人との間でのみ
楽しめることに、金と情熱をつぎ込む。
事情が許せば、実際のガンダムが手に入るなら、
手に入れようとするかもしれない。

George Lucusの映画『アメリカン・グラフィティ』は、
その理解できないと女が口々に言う男の趣味の世界の話だが、
そこに出てくる1962年の風景‥車やファッション、
ネオン輝くメルズ・ドライヴイン、ロックンロール‥
総ての舞台装置に胸が熱くなる。
部活にのめり込むだけが青春じゃないし、
明るく健全な青春ばかりでもない。

その『アメグラ』の世界をレコードにしたのが、
The Beach Boysだ。しかもルーカスの10年前に。
フォード・デュース・クーペをいかしたあのコと呼び、
しかもそれにベッツィと名前まで付けてしまう。
しかもラストから2曲目‥A Young Man Is Goneは、
The Four Freshmenも歌ったTheir Hearts Were Full of Spring
メロディに、自動車事故で亡くなったJames Deanに
因んだ歌詞を載せ、アカペラで歌っている。

男の趣味は理解できないと言われる領域のテーマですが、
George Lucusが『アメグラ』をやる10年前に、
こういうアルバムを作っていたThe Beach Boysはエラい!