1. Route 66 
(Bobby Troup)
2. I Just Want to Make Love to You
(Willie Dixon)
3. Honest I Do
(Jimmy Reed)
4. Mona (I Need You Baby)
(Ellas McDaniel)
5. Now I've Got a Witness
(Nanker Phelge)
6. Little by Little
(Nanker Phelge/Phil Spector)
7. I'm a King Bee
(Slim Harpo)
8. Carol
(Chuck Berry)
9. Tell Me
(Mick Jagger/Keith Richards)
10. Can I Get a Witness
(Brian Holland/Lamont Dozier/Edward Holland, Jr.)
11. You Can Make It If You Try
(Ted Jarrett)
12. Walking the Dog
(Rufus Thomas)

Originally Released Apr. 16, 1964
Produced by Eric Easton, Andrew Loog Oldham

The Rolling Stonesのデビュー・アルバム。
暗闇に5人が『西部警察』のように並んでいる。
アメリカ盤では妥協して文字を入れてしまったが、
カッコいいことには変わりない。

1963年、The BeatlesのPlease Please Meが連続26週、
ついでwith the beatlesが21週間、
NMEの全英アルバム・チャート1位を独占していた。
1963年に聴くものがThe Beatlesしかなかったことを示し、
その47週間は越えがたい大河のように、
前の時代との間に横たわっているが、
そのwith the beatlesの22週連続1位を阻んだのが、
The Rolling Stonesのデビュー・アルバムで、
結局12週間その座を守った。

The BeatlesとThe Rolling Stonesで
黒いアルバム・ジャケットが33週間続いたわけですが、
こういうセンスは、当時日本は勿論、
アメリカにだってなかったし、正にLet's Spend the Night、
夜にぴったりな音楽が、イギリスからやってきたのだ。

The Rolling Stonesの場合、シングル2枚を出して、
さあ次はアルバムだとはならなかった。
オーディションでThe Beatlesを蹴った
実績のあるDecca Recordsは、いざストーンズと
契約したものの、その種の音楽にまだ懐疑的だった。

そこでアルバム作りに先立って、4曲入りのEP盤を制作。
Chuck BerryのBye Bye Johnny
The BeatlesもカヴァしたBarrett StrongのMoney
Arthur AlexanderのYou Better Move On
そしてThe CoastersのPoison Ivyという内容で、
後々ストーンズがやったことに比べれば、
軽めの選曲なのだけど、これがEPチャートで1位となり、
アルバムを作る環境ができたわけです。
 

 

アメリカ盤のファーストには、England's Newest Hit Makers
というタイトルがつけられた。
ジャケットの帯に記す文言ではないか。
当時はThe BeatlesもThe Animalsもthe Yardbirdsも、
イギリスとアメリカで別々のアルバムを作っていた。
The Rolling Stonesも当然そうだし、この慣行は、
1967年のJimi Hendrixになっても、まだ続いた。

The Beatlesの場合、イギリスではアルバムに
14曲収録され、アメリカではそれが破壊されて、
12曲になっていた。
Meet the Beatlesは、イギリスのwith the beatles
相当するけど、一番肝心なモータウンのカヴァ3曲がカットされ、
with the beatlesは事実上破壊された。
一方The Rolling Stonesは、取り替え可能な曲を用意し、
イギリスでも12曲入りに留めた。
これは初めからアメリカのマーケットを意識しつつ、
レコードのエッセンスが極力破壊されないようにした。

イギリス盤の4曲目‥Bo DiddleyのMona (I Need You Baby)を
切って、1曲目にNot Fade Awayを持ってきた。
Buddy Holly没後5年にあたって、
アルバムのA面1曲目にNot Fade Awayを入れ、
アメリカに乗り込んでいったわけです。

I Just Want to Make Love to YouのMick Jaggerは
ロック・ヴォーカルのお手本そのものだし、
I'm a King BeeでBrian Jonesが出している
ギター・サウンドは、ジミヘンに先駆けている。
そしてCharlie Wattsのドラムスの気持ちいいこと。
シンバルの鳴りが美しいよな。

で、Tell Meだ。
The Beatlesが開けた扉をくぐったミックとキースの、
小さな一歩だけど、新たな境地。
Please Please MeTwist and Shout、
She Loves You
などのロックンロールを
がなり立てていたThe Beatlesは、
シングルI Want to Hold Your HandのB面に
突然バラードを持ってきた。
ミックはThis Boyにショックを受けたんだ。
小さな一歩だけど、これがAs Tears Go By
結実するかと思うと、感慨深いものがある。

そして最後から3つ目に、Marvin Gayeの
Can I Get a Witnessが入っている。
The Beatles以来、当時のイギリスのバンドは、
モータウンをやるのがちょっとしたブームで、
後々、ヒッピーだウッドストックだと言っている時でも、続いた。
ここに、CreamやJeff Beck、Led Zeppelinといった、
ロンドンのブルースとジャズのシーンから生まれた
ブリティッシュ・ロックの流れとは異なる、
今のUKロックへと繋がる潮流が窺えるんだ。
そういう意味では、このストーンズのファーストは、
記念すべきイギリスのロックの始まりを今に伝える。