1. I Saw Her Standing There 
(John Lennon/Paul McCartney) 
2. Misery 
(John Lennon/Paul McCartney) 
3. Anna (Go To Him)
(Arthur Alexander) 
4. Chains 
(Gerry Goffin/Carole King) 
5. Boys 
(Luther Dixon/Wes Farrell) 
6. Ask Me Why 
(John Lennon/Paul McCartney) 
7. Please Please Me 
(John Lennon/Paul McCartney) 
8. Love Me Do 
(John Lennon/Paul McCartney) 
9. P.S. I Love You 
(John Lennon/Paul McCartney) 
10. Baby It's You 
(Mach David/Burt Bacharach/Barney Williams) 
11. Do You Want to Know a Secret 
(John Lennon/Paul McCartney) 
12. A Taste of Honey 
(Ric Marlow/Bobby Scott) 
13. There's a Place 
(John Lennon/Paul McCartney) 
14. Twist And Shout 
(Bert Russell/Phil Medley) 

Originally Released Mar. 22.1963
Produced by George Martin 

"1, 2, 3, 4!"
The Beatlesの歴史の幕開けに相応しい、
高らかなカウントで始まるI Saw Her Standing There
このアルバムには、その後のThe Beatlesの
全てが詰まっている。
様々な音楽的な変遷があっても、
The Beatlesの全ては、このデビュー・アルバムに詰まっている。

先にシングルとしてリリースされた
Love Me DoP.S. I Love You
Please Please MeAsk Me Whyを除く10曲が、
1963年2月11日にロンドンのAbbey Roadで録音された。
この歴史的なレコーディングを、
4人は僅か13時間で完了した。
全てオーバー・ダブなし、一発録りによる
スタジオ・ライヴ・セッションだ。
The Beatles版マラソン・セッションと言ってもいい。

John Lennon - Paul McCartney作7曲、
カヴァ7曲がそれぞれ半々。
自分達のオリジナルが、
他のライターのポップスに劣るものではない、
カヴァ曲でさえ4人に掛かれば
忽ち名曲にしてみせるという力強い自負がここにある。

 

 

アルバム前半は、Paul McCartneyが歌う
I Saw Her Standing Thereで始まり、
それからJohn Lennon、
George Harrison、Ringo Starrの順で、
4人のメンバー紹介も兼ねている。

The Rolling Stonesのカヴァでも有名な
You Better Move Onのヒットでも知られる、
Stax Records最初のスター、Arthur Alexanderの
Anna (Go To Him)
やや鼻にかかった声で"ア~ナ"と歌いだす
ジョンが、これまたたまらん。

George Harrisonが歌うChainsは、
The Loco-Motionのヒットで有名な
Little Evaのバック・コーラスでも活躍した、
3人組の黒人女性グループ、The Cookiesのナンバー。
Gerry Goffin - Carole Kingによるソングライティングで、
つまりThe Loco-Motionのついでに作ったようなもの。
因みに彼女たちには、
Don't Say Nothin' Bad (About My Baby)という、
Billboard全米7位、R&Bチャートでも3位になった
ヒット・シングルがあります。

そのGerry Goffin - Carole Kingによる代表曲に、
The ShirellesのWill You Love Me Tomorrowがあります。
Carole Kingもセルフ・カヴァしておりますけど、
Ringo Starrが歌うBoysは、
Will You Love Me TomorrowのB面に収録されていたもの。
あまりにも有名な曲のB面をカヴァするというのは、
いかにもThe Beatlesらしい。

そしてこのアルバムでは、
The Shirellesをもう1曲カヴァしていた。
Burt BacharachによるBaby It's Youだ。
The CarpentersのYesterday Once Moreに、
"Every Sha-la-la-la"というフレーズがありますが、
あれがBaby It's Youだというのは
容易に推察できるとして、
では、あの主人公が聴いているのは、
どちらのヴァージョンなんだろうと、夢想する。
The Shirellesのオリジナル・ヴァージョンも悪くないけど、
John Lennonが歌うBaby It's Youを聴いてしまったら、
The Beatlesのレコードを掛けてる彼/彼女と、
積極的に友達になりたいと思うんです。

長時間に及ぶレコーディングで
くたくたになっていたが、もう1曲必要ということで、
The Isley BrothersのTwist And Shoutをチョイスした。
作曲者クレジットのBert Russellとは、
Solomon Burkeのヒットを手掛け、 
後にVan Morrisonを見出すBert Bernsのこと。

当時ライヴでクロージング・ナンバーとして
演奏されていたのだという。
2テイクがレコーディングされたが、
採用されたのはテイク1のほうだった。
ジョンは殆ど歌詞を叫んでるだけだけど、神懸り的である。
始めからこのテイクで完了させるつもりだったのだろう。
もうとっとと終わらせて家に帰るんだ、という気迫が見える。

アルバム全体を聴くと分かるけど、
それ1枚があたかもライヴのように進行する。
選曲も並べ方も、そういうことを意識している。
このスタイルは、解散するまでずっと貫かれたものだ。
The Beatlesはライヴアルバムを一度もリリースしなかった。
が、最高のパフォーマンスは
スタジオで録音されたものに入っている。