1. フリ・フリ’66
作詞・作曲:かまやつひろし
2. ノー・ノー・ボーイ
作詞:田辺昭知 作曲:かまやつひろし
3. リトル・ロビー
作詞: 阿久悠 作曲:大野克夫
4. ビター・フォー・マイ・テイスト
作詞:川喜田和子 作曲:かまやつひろし
5. ロビー・ロビー
作詞: 阿久悠 作曲:かまやつひろし
6. ミスター・モンキー
7. ヘイ・ボーイ
作詞:ささきひろと 作曲:かまやつひろし
8. ワンス・アゲイン 
作詞:岩本梶子 作曲:かまやつひろし
9. 落ちる涙 
作詞:岩本梶子 作曲:かまやつひろし
10. ラッキー・レイン 
作詞:ささきひろと 作曲:大野克夫
11. しずかに
作曲:Tomaso Giovanni Albinoni
作詞・編曲:かまやつひろし
12. ゴー・ゴー 
作詞:川喜田和子 作曲:かまやつひろし

Originally Released Apr. 15, 1966

1960年代後半の日本の音楽シーンを
席巻するグループ・サウンズ。
その最古参にして最上のグループ、
それが1965年5月10日に「フリ・フリ」で
デビューしたザ・スパイダースだ!

実はその歴史は随分古くて、
57年に結成された堀威夫(後のホリプロ創業者)率いる
ガレージ・バンド、スウィング・ウェストで
ドラムを叩いていた昭ちゃんこと田邊昭知さんが、
1961年にそこから独立して結成したものだった。
バンドの名付け親は、かまやつさんの父親で
ジャズ・シンガーのティーブ・釜萢。

当初は色んなメンバーが入れ替わり立ち代りし、
バンド、或いはユニットとしての機能は
皆無であったと思われる。
ラウンジミュージックを嗜好しながら、
(特にホリプロの)歌手のバック・バンドをやって、
方向性を探っていったんだね。
因みに、このガレージ・バンドから
自分たちのスタイルを作っていくというのは、
The BeatlesやThe Beach Boysとも共通する。

それで62年5月に、専属歌手として
イノヤンこと井上堯之さんが、
7月にはスティール・ギター担当で大野克夫さんが、
そして11月には、喜劇俳優・堺駿二の息子である
堺正章がヴォーカルとして入ってきた。
この人がいるのといないのとでは、
スパイダースの運命は大きく違ってくる。
堺正章の声なくして、スパイダースはあり得ない!

そして63年にカッペちゃんこと加藤充さんが、
またスパイダースの頭脳ともいうべき
かまやつひろしさんが加入した。
この時、後にワイルド・ワンズを結成する加瀬邦彦さんが、
2ヶ月間だけリード・ギターとして加わった時期もある。
加瀬さんは寺内タケシとブルー・ジーンズに引き抜かれ、
エレキ・ブームのほうへ流れてしまうが、
結局66年にワイルド・ワンズとして、
スパイダースが作り出したスタイルのほうへ
舞い戻っていくんだ。
この辺りの試行錯誤がおもしろく、
日本の音楽シーンが過渡期に入っていたことを示している。

64年2月、井上順ちゃんが7人目のメンバーとして加入。
時同じくしてThe Beatlesがアメリカへ上陸し、
その情報がかまやつさんの耳に届いた。
イギリスではThe BeatlesやThe Animalsが現れて、
とにかくエラいことになってるぞと。
それで3月に井上堯之さんがギタリストに転向、
彼はかまやつさんが日々持ってくる
The BeatlesやThe Rolling Stones、The Kinksなどの
レコードを聴きながら、
ロック・ギタリストになる猛特訓を積んだ。
こうして、我らがザ・スパイダースの7人が、
ここに揃ったわけです。

 

 

かまやつさんは、The BeatlesやThe Animalsとともに、
1964年2月にLong Tall Sallyでデビューした
The Kinksの存在について、度々言及している。
アメリカでもヒットしたYou Really Got Meに、
何かピンとくるものがあったのだろう。
そして日本の三三七拍子とキンキー・スタイルを
クロスオーバーしたデビュー曲「フリフリ」を作った。

ロック・ギタリストになるべく猛練習を積んだ
イノヤンのギター、三三七拍子のつんのめるような
田邊さんのドラム、そして天性のシンガー、
堺正章の声が日本のレコードの溝に刻まれた。
歌詞を見ると、The KinksがYou Really Got Me
そうしたように、同じフレーズを何度も何度も
繰り返している。

田邊さんとかまやつさんの面白い人・モノを発掘する
才覚が、「フリフリ」、そしてそれを1曲目に収録した
このファースト・アルバム『ザ・スパイダース・アルバムNo.1』に
盛り込まれている。
レコードはデビュー曲を改題した
「フリ・フリ’66」や「ノー・ノー・ボーイ」、
「ヘイ・ボーイ」といったヒット・シングルを中心とする
オリジナル12曲で構成されている。

この時点では特定のリード・ヴォーカルがいるわけではなく、
The Dave Clark FiveやThe Byrdsのように、
複数人のコーラスでヴォーカル・パートを作っている。
でも堺正章はそこにいるって、すぐに分かるね。
The Dave Clark FiveのBecause
聞き込んだ成果が、「ノー・ノー・ボーイ」にはある。