1. Who's Lovin' You
(William “Smokey” Robinson)
2. (You Can) Depend on Me
(William “Smokey” Robinson/Berry Gordy, Jr.)
3. Heart Like Mine
(William “Smokey” Robinson/Ronald White)
4. Shop Around
(William “Smokey” Robinson/Berry Gordy, Jr.)
5. Won't You Take Me Back
(William “Smokey” Robinson/Berry Gordy, Jr.)
6. 'Cause I Love You
(William “Smokey” Robinson/Ronald White)
7. Your Love
(William “Smokey” Robinson)
8. After All
(William “Smokey” Robinson)
9. Way Over There
(William “Smokey” Robinson/Berry Gordy, Jr.)
10. Money (That's What I Want)
(Berry Gordy, Jr./Janie Bradford)
11. Don't Leave Me
(William “Smokey” Robinson/Berry Gordy, Jr./
Brian Holland/Robert Bateman)

Originally Released June 16, 1961
Produced by Berry Gordy, Jr.

高校に上がってThe Beatlesを聴き出し、
英語の歌というものに関心を持った時に、
その歌詞に注意を向けさせたソングライターが、
少なくとも4人はいた。
John LennonとBob Dylan、Jim Morrison、
そしてSmokey Robinsonである。

そのSmokey Robinsonの歌との出逢いは、
彼やThe Miraclesの曲ではなく、
The BeatlesやThe Rolling Stonesによるカヴァや、
Smokey Robinsonがプロデュースした
Mary WellsのMy Guy
The TemptationsのMy Girlといった曲であった。
僕の経験上、少なくともSmokey Robinsonと
彼のThe Miraclesの音楽に触れるには、
そこへより意識的にならなければならない。

そもそもMotown Recordsというレーベルは、
Smokey Robinsonと、彼が友人と組んでいた
ヴォーカル・グループを売り出すために作られた。

1957年、まだ17歳だったSmokey Robinsonは、
Jackie Wilsonの事務所でオーディションに臨むものの、
あえなく落選。
だが脇で見ていた1人の男、Berry Gordy, Jr.に見出され、
別室で再びオーディションされた。
Berry Gordy, Jr.によれば、この時Smokey Robinsonは、
大学ノートに100曲近くのオリジナル曲を書き溜めていたという。
それまで誰も作品を批判するものはなく、
Smokey Robinsonは結局その100曲全てにダメを出されたのだが、
それから作品を持ってきては批判を受け、
批判を受けては作品を持ってくるという日を繰り返した。

それから程なくして、The SilhouettesのGet a Job
アンサー・ソングGot a Jobを書き上げ、
グループ名をThe Miraclesに改称し、End Recordsからリリースした。
丁度同じ頃、Berry Gordy, Jr.の姉Anna Gordyと
Gwen GordyがAnna Recordsを立ち上げ、
The Miraclesを始め、Marv Johnson、Singin' Sammy Ward、
Mable Johnなどを売り出すようになった。

The BeatlesやThe Rolling Stonesもカバーした
Barrett StrongのMoney (That’s What I Want)
全米で大ヒットしたが、思ったほど会社の収益が上がらなかった。
というのは、録音はAnna Records名義でも、
配給はシカゴのChess Recordsが行っていたからだ。
そしてSmokey Robinsonの発案でBerry Gordy, Jr.は
自分たちでレコードを作り、自社配給することを決意。
1959年、僅か800ドルの資金でTamla Recordsを設立した。
以上、ここまでMotown Records誕生の経緯について。

要するにMotown Records誕生は、
1957年にSmokey RobinsonとBerry Gordy, Jr.が出逢わなければ
起こり得ず、引いては今日のように、
アフリカンアメリカンの音楽がメインストリームで
聴かれるということもなかったわけです。

 

 

そこでこのThe Miraclesによるファースト・アルバム。
まず、全曲オリジナル楽曲で固めている。
Barrett StrongのMoney (That's What I Want)
カヴァというのも入っているし、
Brian Hollandがソングライティングに関わったものもあるけど、
自作曲を収録することに、Smokey Robinsonはこだわったようだ。
それは、そもそも誰がこれを始めたのかという
オリジネイターの意地でもあるし、
この時期の彼がとても才気に溢れ、
寝ても覚めても新しい曲が生まれていた証でもある。

まず珠玉のバラード2連発で始まるのがいい。
The Miraclesの醍醐味はなんといっても
Smokey Robinsonのファルセット・ヴォイスで、
それを十二分に聞かせるには、この掴みしかないのだ。

前者はThe TemptationsやThe Jackson 5、
後者はやはりThe Temptationsが、
優れたカヴァを残しておりますけど、
The Miraclesによるオリジナルはよりブルージーで、
その場で即興でやったような、生々しさがある。

特に(You Can) Depend on Me
Smokey Robinsonのファルセット・ヴォイスの先に、
Theme from Mahoganyを歌うDiana Rossや、
Human Natureを歌うMichael Jacksonがいるわけです。

英語の詞では韻を踏むというのがとても重要だけど、
それに捕らわれるあまり、辻褄の合わない
物語になることもしばしばある。
Bob Dylanがかつて優れた詩人に
Smokey Robinsonを挙げたのは、
韻を踏みながら、物語を膨らませているからである。

初めからそれが出来てたわけじゃないけど、
例えばWay Over Thereという歌では、
“mountain side”と“river wide”、
“much to wide”と“other side”、“one more time”と
ライムが踏まれ、これをアップテンポで歌うと、
言葉が音としても小気味よく入ってくるわけです。

時は1961年。
Motown Recordsは漸く軌道に乗りだし、
こうしてアルバム1枚を作るまでになった。
この前年にThe MiraclesのShop Aroundが、
ビルボードのR&Bチャートで1位、
全米でも2位の大ヒットを記録。
更にこの年にはThe MarvelettesのPlease, Mr. Postmanが、
同レーベル初の全米No.1シングルになるわけで、
その勢いが遠く大西洋を隔てたイギリスへ届くのも
時間の問題だった。