近所のお寿司屋さんで、春をいただきました。
ここのお寿司屋さんでは、まずお酒を飲みながら、ひとしきりつまみを食べます。
「初物です。お味がついてますので、そのままでやっつけちゃってくだせぃ」と。
このやっつけちゃう系つまみがなにしろ美味しすぎて、ついつい箸も酒も進みます。
年をとってから炭水化物が沢山食べられなくなったせいもあり、お寿司の組み立ての最後までたどりつけたためしがないのが悔やまれる。
春のいぶきを感じる「やっつけちゃう系」の数々がこちら。
まずは、春鰹と田せりのあえもの。
「からし醤油であえてます。お味足りなかったらそこのおてしおでお醤油使ってください」
春の鰹のさっぱりとした美味しさをマウントするかのようなセリの青臭さが、たまりません。
「おてしお」という語感も良い感じ。
筍の木の芽焼き。
「こちらは、九州の鹿児島産の筍です。まだ京都まで筍がきてなくて。塩だけでやっつけちゃってください」
言われなくてもあちあちのやつをやっつけちゃいますよ。
木の芽がほんのちょっとあるだけで、極上感3倍増し。
そして白魚。
「お好みでお醤油をすこ〜したらしてやっつけちゃってください」
1本1本の白魚がぴ〜んとしていてハリがあって、内臓のえぐみ、白身の甘みのバランスが見事。
小さなお魚の中で全てが完結。
総合栄養食ならぬ総合つまみの代表格。
春のうまいものって、少しえぐみがあって、そのえぐみに力強さを感じます。
昔の人は、初物七十五日で寿命が75日延びると言い、季節のものを珍重して食べたそうです。
今は、ハウス栽培や養殖、輸入品など、1年中美味しいものが食べられる世の中ですが、春の訪れを、町の寿司屋で感じる事ができるのは、本当に良いものだなぁと思います。
「鮨たなか」:
「何でもない事がとびきりの幸せ。緊急事態宣言明けのお寿司と日本酒が最高でした」は、こちら