辻彩奈&阪田知樹 ヴァイオリン&ピアノ デュオ・リサイタル、に行ってきました。

ホールは、神奈川県立音楽堂でした。

 

「華麗なるサロン、情熱のロマンス」と謳うコンサート、副題のニュアンスが今一つピンときませんでしたが、とても素晴らしい、楽しく、充実した内容のコンサートでした。

 

プログラムは

 

エルガー   愛のあいさつ

シューマン  3つのロマンス

クライスラー 愛の喜び・愛の悲しみ・美しきロマンス

ブラームス  ハンガリー舞曲第1番・第5番

ブラームス  FAEソナタより「スケルツォ」

シューマン  ヴァイオリン・ソナタ第1番

ブラームス  ヴァイオリン・ソナタ第3番

 

アンコールは、ディニスの「ホラ・スタッカート」(ハイフェッツ編曲)とパラディスの「シチリアーノ」でした。

 

前半は、誰もが良く知る小品をずらり、休憩の前から後半にかけて重厚なソナタを並べたプログラムでした。

 

辻さんは、芯が一本通ったしっかりとした音色で、時として固めの音が剛直に突き刺さってくる印象です。

本来ならその音色はエルガーと不釣り合いのはずですが、すっきりとした響きで、ゆとりたっぷりに可愛らしく聴かせてくれました。

辻さんの懐の深さが感じられる演奏でした。

クライスラーも、甘ったるくなることなく、すっきりと、でも柔らかで表情豊かに聴かせてくれます。

 

共演の阪田さんの存在も大きいと思います。

控えるところ、でしゃばるところ、ヴァイオリンを前面に立てながらも、しっかりとした自己主張のあるピアノはヴァイオリンとのバランスがとても素晴らしかったと思います。

辻さんと阪田さん、演奏の面だけでなく、考え方とか、臨む姿勢とか、相性抜群なんだと思います。

流れるようなヴァイオリンの後ろでピアノを刻んでみたり、迫りくるヴァイオリンと対峙してヴィルトゥーソの如く流麗に歌ってみたり、面白い取り合わせの場面が多々ありました。

 

前半の明るく華やかで軽やかな曲から、一転して、後半は深い精神性が求められる重厚なソナタ2曲でした。

しっかりとした音の構築の中、暗いばかりのブラームスではなく、爽やかさを失わないのはお二人の若さ故もあってでしょうか?

明るさと苦悩が交錯するシューマン、深い味わいながらも、重過ぎないブラームス、どちらも素晴らしい演奏でした。

 

アンコールのスタッカート、乱れることなく刻まれる音に技術力の高い、巧みな技巧で一気に弾き切る、すっきりと別世界に連れて行ってくれる、痛快、爽快なアンコールでした。

 

コンサートの途中で、二人がマイクを持って、プログラムの構成や曲の簡単な解説なども聞かせてくれました。

長過ぎず、短過ぎず、適度な節度のある解説で、お二人の誠実さが感じられる話振りでした。

 

スタッカートの前の曲紹介で、辻さんが「最後に・・・」と曲名を仰って演奏を始めました。

演奏が終わると多くの方が出口に向かわれましたが、2回目のカーテンコールの後アンコールをもう一曲聴かせて下さいました。

しっとりとした心に染み入る「シチリアーノ」でした。

聴き逃した方はとっても残念なことをしたと思います。

 

エルガーから始まって、リズミカルで力強いハンガー舞曲、深い味わいのソナタ2曲、アンコールにスタッカートとシチリアーノ、バラエティに富んだ内容を、どれもこれも十二分に聴かせてくれた、楽しく味わい深いコンサートでした。

お二人の相性抜群のコンビ、これからもまた聴かせて欲しいと思います。