沼尻竜典指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに行ってきました。

ホールは、神奈川県立音楽堂でした。

 

神奈川フィル音楽堂シリーズの第28回でした。

 

プログラムは

 

モーツァルト   ディベルティメントK.136

山本和智     オーケストラのための「姿なき舟と航跡」

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」

 

アンコールは、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲でした。

 

木質の古いこじんまりとしたホールなので、オケは10型の小編成でした。

それだけに、各パートの音が細かいところまでよく聴こえ、大きいホールで聴く時とは違った楽しみがありました。

 

ディベルティメントK.136の第2楽章は斎藤秀雄氏が一番好きだった曲だったと思います。

その曲を小澤征爾氏訃報の翌日に聴くなんて、浅からぬ因縁を感じます。

小澤さん沢山聴きました。

半期に1回定期演奏会を振る小澤さんを聴くために10年以上新日本フィルの定期会員でした。

サイトウキネン・オーケストラと毎年お正月の(といっても3年だったと思ます)マーラー。

ウィーン・フィルとのブラームスの交響曲第4番も鮮明に思い出すことができます。

ロストロポーヴィチとのドヴォルザークも忘れられません。

今でもチャイコフスキーの「悲愴」で一番聴くのは若き日の小澤とパリ管のCDです。

ドン・キホーテ、ハ短調交響曲、オケコン、聴いたコンサートを思い出せばきりがありません。

心よりご冥福をお祈りさせて頂きたいと思います。

 

筋肉質に、ピシッとまとまった「スコットランド」でした。

最初の和音からフルオケとは違った細部までが音の重なりが聴こえます。

去年は指揮者無しでベートーヴェンの交響曲第7番、その演奏はその演奏で印象的でしたが、今日は沼尻さんを戴いて細部まできっちりと揃いながらも、少人数ゆえの自由さがあり、指揮者無しとの違いを面白く聴くことができました。

 

演奏後のカーテンコール、数回目の時、石田さんは肩に布の肩当を置き、アンコールを弾く気満々で沼尻さんを待っていました。

ところが沼尻さんは拍手に応えただけでステージ袖に歩き出しました。

見送る石田さんの不満を隠すことない挑みかかるような表情が印象的でした。

そしてもう一度沼尻さんが登場した時は、椅子から立たないどころか、ヴァイオリンを肩に弓まで準備して今にも弾き出さんばかりです。

沼尻さん、笑いながら石田さんの肩をポンと叩いて指揮台に、一連を眺める直江さんは大笑いです。

スコットランドの途中でも何度か直江さんが石田さんを見て「微笑んでる」に留まらない笑い顔で演奏していました。

石田さんが変顔してるんじゃないかと疑ってしまうほどです。

 

石田さんのこの自由さが神奈川フィルの素晴らしさの一因だと思います。

一見、我儘そうに、こわもて風に、好き勝手に、自由に、振舞っているように見えて、とても繊細です。

それを分かったうえで、笑顔で懐柔する沼尻さん、溢れる笑顔でともに演奏するオケのメンバー、ある意味家庭的とさえいえる暖かみと飾らなさ、伸び伸びと果てしなく伸びてゆく音、とても素晴らしいオーケストラだと思います。

沼尻さん、神奈川フィルはとってもいいシェフを得たと思います。

両者のますますの相乗効果が楽しみです。