児玉麻里 & 児玉桃 ピアノ・デュオ・リサイタル、に行ってきました。
ホールは、神奈川県立音楽堂でした。
プログラムは
チャイコフスキー 「眠りの森の美女」組曲から
(ラフマニノフ編曲) 「序奏 リラの精」「アダージョ パ・ダクシオン」「長靴をはいた猫」「ワルツ」
チャイコフスキー 「白鳥の湖」
(ランゲリ編曲) 「情景」「四羽の白鳥の踊り」「パ・ド・ドゥ」
(ドビュッシー編曲) 「ロシアの踊り」「スペインの踊り」「ナポリの踊り」
ストラヴィンスキー 春の祭典
アンコールは、再びチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「金平糖の踊り」「花のワルツ」でした。
児玉姉妹、妹の桃さんは大好きで、リサイタルや室内楽、コンチェルトのソロも聴いていますが、お年様の麻里さんはたぶん初めてでした。
妹やご主人は何度も聴いているのに・・・。
お二人がステージに登場して、上手に桃さん、下手に麻里さんが座ります。
すると二人が椅子の高さの調節を始めます。
特に桃さんは、数回座り直して何度も何度もハンドルを回して調整していました。
「開演前に調節しないんだろうか?演奏前にハンドルをそんなに一生懸命回して腕疲れない?」と疑問に思いました。
演奏は、麻里さんが高音域、桃さんが低音域、が担当です。
麻里さんは、前後に少し頭を動かすだけでとても小さい動きでした。
桃さんは、左右に小首を傾げたり、3拍子に合わせて上半身をくねらせたり、決して大きな動きではありませんが、リズミカルに音楽に身を任せ、指先からだけじゃなく、体全体から音楽を表出しているように感じられました。
麻里さんは、硬質で、直線的な硬い音です。
桃さんは、タッチは力強いのですが、奥行き深く、大きな広がりをもった、豊かな響きです。
僕自身「ピアノは打楽器」だと思っていますので麻里さんの演奏もっ決して嫌いではありませんが、やはり機会があれば聴きに行く桃さんの方がしっくりときました。
インターミッションで、調整を終えた調律師が、ピアノの椅子を抱えて上手と下手の椅子を入れ替えました。
コンサート開始時に、二人が同時に椅子の高さの調節を始めた理由がわかりました。
ゲネプロの後、椅子の位置を入れ替えておくのを忘れていたからだと思います。
後半は、椅子の位置に合わせて上手と下手が入れ替わりました。
麻里さんが低音域、桃さんが高音域の担当です。
ピアノ2台による春祭、迫力満点、リズミカルで力強く、オケ版とは違ったテイストで、変拍子が交錯するリズムの面白さ、特異な和音、土俗的なメロディー、を楽しむことができました。
オケで演奏しても複数の楽器が複雑に絡み合いながら醸し出す音楽を、たった2台のピアノでフルオケに比肩するスケールで聴かせてくれた春祭でした。
上下が変わって驚いたのは、二人のピアノを弾く時の指の形です。
桃さんは、ピアノを教わった人が全員最初に言われる「優しく卵を握る」ような丸みのある柔らかい握りでした。
一方、麻里さんは、第二関節から先が、時には指の関節全てが真っ直ぐな、まるでホロヴィッツのような弾き方でした。
姉妹でも違うんだ・・・、と驚きました。
アンコールは、上下変わらず桃さんが高音域、麻里さんが低音域で再びチャイコフスキーでした。
演奏は前半よりもアンコールの方が断然楽しめました。
打鍵が強い安定した姉の支えの上に、歌心たっぷりなメロディアスな妹のピアノ、奏でられる甘美なメロディー、メロディーメーカーたるチャイコフスキーの面目躍如でした。
「花のワルツ」は今日演奏されたチャイコフスキーの3つのバレエ曲の白眉でした。
素晴らしかったです。
姉妹のピアノ・デュオ、とっても楽しいコンサートでした。