尾高忠明指揮、NHK交響楽団のコンサートに行ってきました。

ホールは、みなとみらいホールでした。

 

N響オーチャード定期が旧東急本店の再開発工事で土日しかコンサートを開催できないことから「東横シリーズ」と銘打ってオーチャードホールとみなとみらいホールに振り分けてのコンサートでした。

かつては渋谷と桜木町を結んでいた東横線にちなんでの銘々だと思いますが、廃線になってもうじき20年、桜木町に東横線の駅があったことを知っている人がどれぐらいいるんだろう、と思います。

 

詳しい事情は知らないまま、N響のシーズンプログラムを見て「みなとみらいでプロムシュテットが聴けるなら」とチケットを購入するつもりでいましたが発売直後に完売、すっかり諦めていました。

ところがプロムシュテットの来日中止でチケットサイトにドッと売りが出て、今日は正規料金の4割ぐらいの価格で譲って頂き聴いてきました。

 

プログラムは

 

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ソロ レイフ・オヴェ・アンスネス)

ブラームス   交響曲第3番

 

アンコールは、ピアノソロでグリーグの抒情小品集第5集第2曲「ノルウェーの農民行進曲」でした。

 

まずはエンペラー。

出だし和音「やっぱりN響が日本一かも?」と思わされる素晴らしい響きでした。

迫力満点なのに、微塵も音に濁りがなく、重低音がずしんと響いてきます。

続くアンスネスのピアノ、もっと濁りのないピュアな音、一音一音が個別に粒だって音色の混ざりや濁りが全くありません。

奥深い山を流れる清流のような、清らかで心洗われる響きです。

その特徴は、アンコールのグリーグでより深く聴くことができました。

美音なんですが単なる美音じゃない、どこまでも透き通っているような、それでいて人工的じゃない、知的で純粋無垢な天使が飛び交うような素晴らしい音を聴くことができました。

 

メインはブラ3。

今期のオーチャード定期はブラームスチクルス、第一弾は3番でした。

尾高さんらしい、誠実さでスコアに忠実に、懐の深い、ブラームスと正面から向き合った、正統派の演奏でした。

N響アワーのテーマで使っていた第3楽章は、秋を迎えた今に相応しい、しっとりとした趣で聴かせてくれました。

どこかの部分を取り立てて論じる箇所もない、黙って聴くに相応しい、申し分のない、とても良くまとまったバランスの取れた演奏でした。