井上道義指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに行ってきました。
ホールは、みなとみらいホールでした。
年内で引退する井上道義さんが神奈川フィルを振るLastコンサートでした。
併せて、勤続42年定年で今月末に退団する打楽器奏者の平尾信幸さんのLastステージでもありました。
チケットは完売、満員札止めでした。
最初のメインはプレコンサート。
退団する平尾信幸さんと6月1日に入団したばかりの金井麻理さんとの打楽器デュエットでした。
ステージ上で何人かが楽器の調整をしてる中に最初に現れたのはVcTopの上森さん、木管2列目の端っこにどっかと座りました。
すると次々とメンバーが手ぶらで楽器も持たずにステージ上に現れて、思い思いの場所に座ります。
2ndVnTop直江さん、ObTopの古山さん、HrnTopの豊田さん、FgTopの鈴木さん、Tubの宮西さん、お馴染みのメンバーが次々とステージを埋めてゆきます。
プレコンサートが始まる前にはステージ上の聴衆は30人余り、CbTopの米長さんは客席入り口のドア際で聴いていらっしゃいました。
客席も6割~7割の入り、いつもならワイワイガヤガヤ、演奏してるのを無視して連れと喋っていたり、チケット片手に席を探していたり、およそ演奏を聴く気がない人も沢山です。
でも今日は、ウロウロしている人も少なく、みんな平尾さんの演奏を楽しんでいるようでした。
演奏後は、プレコンサートでは初めて見るカーテンコール、ステージ上の団員と客席一体となった大拍手でした。
さて、プログラムは
シャブリエ 狂詩曲「スペイン」
ドビュッシー 夜想曲
伊福部昭 ピアノとオーケストラのためのリトミカオスティナータ♭(ソロ 松田華音)
伊福部昭 日本狂詩曲
アンコールはありませんでした。
前半はフランスもの。
井上道義のフランスもの、聴いたことがあるのかないのか、記憶にありませんがとても息があった演奏でした。
指揮台を使わずに振りますから、ステージと客席ギリギリまで下がったり、最後は譜面台の前に出てきて、目の前に迫られた2ndVnTopの直江さんは笑顔を浮かべて演奏していました。
「夜想曲」第1曲「雲」ではライトを落としステージを暗くしての演奏でしたし、第2曲「祭り」からはいつもの明るさに照らされながらの演奏でした。
陰影に富んだ、奥行きの深いドビュッシーでした。
後半は伊福部昭。
ゴジラの人、の認識で作品を聴くのは初めてでした。
武満徹も良くわかりませんし、黛敏郎や芥川也寸志も聴いも面白さがわかりません。
最近「音楽的な才能がないんだ」とやっとで気付き、十二音階以降の音楽を理解するのは諦めました。
諦めてみると、シェーンベルクもベルクも、ヴェーベルンですら肩が凝らずに気楽に聴けます。
ですが、伊福部昭は日本人作曲家のオーケストラ曲を聴いて初めて「面白い!」と思いました。
今まで聴いた和風を意識した「越天楽変奏曲」などの作品も、取って付けたようなわざとらしさしか感じられませんでし、未消化な印象しか受けませんでした。
「ノーベンバーステップ」も尺八の必然性が良く理解できず、武満を理解することを諦めました。
伊福部昭は、和楽器で奏でる音やメロディーを見事に洋楽器に置き換えている印象です。
まるで篠笛を吹いているようでもあり、篠笛に調性はありませんが、違和感なく西洋音楽たるクラシックの音階や音律にマッチさせた音楽に聴こえました。
今まで聴いた日本人作曲家の和を意識した曲は、無理やり西洋音楽に寄せようとして無理が生じているように感じられたのかもしれません。
伊福部昭で、初めて違和感なく、わざとらしさを感じることなく、オーケストラ作品を楽しむことができました。
ピアノソロの松田華音さん、美形は漏れなく追いかける僕には珍しく、なぜか縁がなく、今日が初めてでした。
「ピアノは打楽器」を地で行く、力強い打鍵が生み出す、歯切れのいいリズム感、大好きな演奏タイプのピアニストでした。
怒涛のように激しく迫りくる井上道義さんの勢いに、気圧されることなく対峙して、鉄壁の如く跳ね返す力強さ、素晴らしいピアノでした。
今日まで聴かなかったことを後悔しつつ、これからしっかりとフォローしようと思います。
今日のプログラムは打楽器奏者が沢山必要な曲ばかりでしたが、トラで去年まで契約団員だった岡田満里子さんが乗っていました。
昨年王子ホールでリサイタルを聴いて以来でしたからとても久し振りで嬉しかったです。
お元気そうで何よりでした。
いくつもの気付きや新たな発見があった充実したコンサートでした。