頼まれ事その2
サンフランシスコ市役所で、心配していたほどヒドイ目にも会わずに事が済んだので、もう1つの頼まれ事のサンマテオ市への表敬訪問を済ましてしまうことにしました。
これさえ済ましたら、背広を着る用事は一応終了です。
託って来た市長(?)の挨拶状、何か判らないデカイ箱に入ったお土産もあります。
エルマー・S・アンダーソンさんに連絡を取ってもらうと、市長(?)が「午後に来なさい、その後自宅で夕食を一緒に食べよう」と言っているから、昼過ぎに迎えに来てくれるとのことでした。
アンダーソンさんとウチの親父のヨタ話しがきっかけで、いまアメリカに来ているのです。
ロジャーさんの所に居候できたのもアンダーソンさんの紹介ですから、言わば恩人。
しかし、私は会ったことが無いのです、きょうが初対面。
現われたアンダーソンを見て驚いた。
黒の詰襟の服を着込んでいるんですよ、牧師さんではありませんか!
そう言えば住所に「The Pilgrim Plaza」ってありました。
大きなフルサイズの車でビュ~ン。
最初の挨拶の練習をする間も無く、あっという間に市役所に到着してしまいました。
しかし小ぢんまりした市役所ですね。
チョッと大き目の個人の家みたい。
サンフランシスコとエライ違いです。
案ずる事も無く、受付らしいディスクに座ったオネエさんにアンダーソンさんがペラペラと喋ると、オネエさんはニッコリ笑ってインターホーンに何やら言いました。
とたんに、直ぐそばのドァが開いて、スポーツシャツを腕まくりした眼鏡の小父さんが、満面の笑みを浮かべて、片手を差し出しながら出て来たかと思うと、私と握手をしながら、腕を取って、今出てきた部屋に引きずりこみました。
アンダーソンさんが「彼が市長(?)さ」
(といったように聞こえたんですが、後日お会いした市長と似ているけど代理の別人だったかも?という疑いがあるので(?)付きにしました。ほんまに頼り無い話です。)
エ~ッ。全く予想外の展開に頭は空白。
自分でも判らん事をゴニョゴニョ言いながら、お土産と挨拶状をお渡ししましたが、その間も市長(?)は何かワイワイ喋っています。
やにわにベリベリっとお土産の包みを開いて「オ~ッ、JAPAN!」
豊中市役所お願いしますよ!藤娘の日本人形なんか持たさんといてよ!
笠ががケースの中に散らばってるがな!
「ちょっと待ってください、この状態完全で無い、私これ修繕する、ちょっと待って」
ケースを開けてよく見たら、幸い軽傷。
形どおり手から笠がブラ下がるように何とか形をつけて、はいOK。
横でイライラしながら見ていた市長(?)が、市役所を案内して下さるとの事。
大して広くないから良いようなものの、背が高くて足が長いから、歩く速さが尋常ではない。
ついてゆくのが大変。
応接間みたいなところで何やら説明をしてくれているけれど、ん?会議場?
なんと市会議員はたったの6人、市役所全体でも職員は50人足らずらしい。
人口は豊中市と大して変りが無いはず?う~判らん。
クルクルッと30分も掛からずに見学お終い。
又市長(?)室に戻って、机の引出しからブルーのリボンを取り出して、わたしの胸に着けてくれた。
ホ~、名誉市民!
こう簡単に貰うと重みがないなぁ。
「ちょっと待って」というと、机で何やら書き出した。
封筒に入れて「はい、豊中市長(?)への挨拶状」ヒャ~簡単ですねぇ。
「実は私はしばらくこの国に居る積りなので、日本に帰るのは秋になります。郵送の方が早く着くと思います」と苦心惨憺して言うと、
「ただの挨拶だから、何の問題も無いよ」
そんなもんなんでしょうかね。
コーヒーが出てきました。
持ってきたおネエさんが市長(?)に何か言っています。
アンダーソンさんが大笑いして説明してくれたところでは、何時もお客さんが来てコーヒーを持ってくると、市長(?)はどっかに行ってしまっているんだそうです。
「お願いですから、私がコーヒーをお出しするまでは部屋にいてください」と注意されてるんですて!
客の前で市長(?)に注意するおネエさんも大したものですが、女性職員に注意されて、ニコニコしながら謝る市長(?)は日本には居ないでしょうね。
さて、市長(?)さんはチョッと落着いたかと思うと、私を促して出かける素振り。
アンダーソンさんは用事があるので「後で市長(?)の家に迎えに行くから、Have a good time! と消えてしまった。
市長(?)の車に乗って行った先はスーパーマーケット。
カートを押してついて行くと、店員に声を掛けながら、何やらかにやら選んではカートに入れて行きます。
両手でやっと持てるほど買いこんで、ビュ~ンと言った先はパトカー風の車が駐車してある小さな事務所。
何?Sheriff Office(シェリフ事務所)?
ズカズカッと入って、でっぷりした小父さんとヤァヤァらしきことを言いながら、肩を叩き合って大笑い。
一体何がどうなっているのか?
私の方を向いて「Driver's lisence」と言ったたような気がしたから、聞き直すと、出せ出せという手振り。
うまいこと持って来ていたので、渡すと二人で捻くり回して何やら相談しています。
呼ぶから側に行くと、書いてあるのを一つ一つ指差して「これは何?」
それが、私の名前、ライセンスの種類、等と四苦八苦して説明しました。
またしばらく二人で楽しそうにお話、私は手持ち無沙汰。
突然外へ連れ出されて、ポラロイドで写真撮影。
市長(?)が車に乗れというので助手席に廻りかけたら、運転席を差して、運転しろと言ってるみたい。
助手席にでっぷりした小父さん(この人がシェリフらしい)、後ろに市長(?)。
「Go ahead!」って、え~運転するの?
こんなでかい車で、おまけにオートマチックは乗った経験が全くなし。
「チョッと待って」と運転席を眺めまわしていると、シェリフが一々指差して教えてくれた。
ところが言葉が...。
なんとかエンジンを掛けて、でも発車していいものかどうか?
後ろから手が伸びてきて、レバーを Drive に入れて、市長(?)が「Go!」
Go!はエエけどサイドブレーキのレバーが見当たりません。
肩を叩くから振り返ると、足元を指差しています。
エッ、このペダルを踏むの?こんなサイドブレーキ初めてですよ。
グッと踏んだら、カチッと音がしてペダルがビヨ~ンと上がった。
必死で踏んでたブレーキを恐々離すと、スルスルッと前進する。
後ろで市長(?)が「Good!」悪い夢と違うかなぁ....。
そろそろと道に出て、指示どおり右へ右へと1ブロック回って帰ってきたらヘトヘト。
喉はカラカラ、足はガクガク。
事務所に逆戻りして、お二人は缶ビール、私は7upを頂いて休憩。
と、シェリフが何かカードをくれました。
ぼやけた私のさっき写した写真が貼って有ります。
ゲ~ッ!免許証貰えるんですか?
今のが試験?嘘でしょ!
よく訊いたら、カウンティー内だけの限定仮免許ですって。
サンフランシスコ市内では運転は駄目って、それはそうでしょうねぇ。
それでも、運転出来る事は間違い無い。
「郵送でも構わないから、最期にカウンティーから離れる時に返してくれ」
記念に欲しいといったけれど、通じなかったのか、ほんとに駄目なのか?
こんなんでエエのかなぁ?
いよいよ、市長(?)の自宅へ、さすがに私に運転しろとは言わなかったですねぇ。
2003/03/31:初出
2022/04/24:再録
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