15-先ず手始めに-U.S.A.1964-No.15-再録 | maidoの”やたけた”(ブログ版)

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バスでシスコへ

そうや!大阪市長の挨拶を預かってきてるのです。
こんな大事なものは早く渡すに限ります。
単独行動の練習を兼ねて、サンフランシスコ市役所に行くと言ったら「それは無理だ!守衛が入れてくれないだろう。上手く会えたとしても、一体どう言って渡す積り?」
なるほどそう言えばそうです。
市役所の郵便受けに放りこんで帰って来たんでは、皺にならないように大事に持ってきた甲斐がありません。
どうせ、そんなに大層な内容が書いてあるはずは無いのですが、だからといってうやむやにも出来ません。
「じゃぁ、通訳にコラリアが付き添って、どうしようも無くなったら、助太刀をさせよう」と意見がまとまりました。
突然コンニチワと訪問しても向こうさんも困るだろう、とコラリアが市役所に電話をしてくれました。
「午後早い時間ならばOK」との事です。
しかし、大サンフランシスコ市の市長が20歳の日本人と18歳のギリシャ人の娘が訪ねてきたからといって、ハイハイと会ってくれるんでしょうか?
通訳といってもコラリアは全く日本語を知らないのですから、ちょっと釈然としないのですが、他に方法が無いから仕方ありません。
そうなれば、背広を着込んで、ワイシャツにネクタイで威儀を正していかなければなりません。
かくかくしかじか、とロジャーの事務所に連絡すると「丁度夕方所属しているクラブの礼会があるから、ゲストに呼んであげる」と夕方の予定もバッチリ。

エルカミノまでとことこ歩いて、バスを待ちます。
しばらくするとデッカイのがやって来ました。
グレイハウンド!これぞアメリカ!
でっぷりした運転手が1人だけで車掌が居ません。
「サンフランシスコ市役所に行きますか?」と訊いたら「No!」でお終い。
すると、乗客のおばあさんが、一生懸命何か話し掛けてくれました。
運転手がジロッと睨んだので、コラリアが背中を突っつきます。
おばあさんの後ろが空いていたので、そこに座ると、運転手が振り返って短く何か言ったのですが、はて?
どの道、この状況では「乗ってゆくのか?止めるのか?」と訊いている以外には考えられないので「YES!」と言うと、プッシュン、バタンとドアが閉まって発車しました。
おばあさんが後ろ向きになって一生懸命教えてくれたのは「このバスは市内のバスターミナルまでしか行かない。バスターミナルから市役所まではタクシーで行け」という事だったのです。

コラリアは必死で口を出すのをこらえてくれました。
「私はあなたの後見人よ!(I'm your guardian!)」
守護天使なら、お願い、野垂れ死ぬ前に現われてください。
バスターミナルで親切なおばあさんとお別れ。 役所=public office 、それなら市役所は「City office」かと確かめたら、それでは多分タクシーの運転手が「エッ?」と聞き返すというコラリアの意見だったので、タクシーに乗って「市役所!(City hall!)」
。 無言で走り出したけれど大丈夫かしら?
あっと言う間に到着。
こんな距離なら歩けばよかった・・・。
お金を払うと運転手が何やら言っています。
ウヘェ、タクシーにチップが要るんだそうです。
手の平に載せた硬貨からコラリアが運転手にチップを渡しても、まだ停まっています。
「ドァを開けて!」とコラリアに突付かれました。
タクシーのドアはお客が開け閉めするんですね。
乗った時はコラリアが開けたのか?
そう言えば、自分で閉めたような気もします。

市役所は堂々とした石造りのでかい建物。
コラリアは平気な顔でピョイピョイと石段を上がって、制服を着た恐ろしげなオジサンに何か聞いています。
「こっちよ!」と促されて、受付らしき所へ。
脇腹を突付かれながら「私は〇〇です。市長と面会の約束をしています」膝がガクガク。
「チョット待って!」というと電話を掛けて、ニッコリ笑って、小さな応接室のようなところに案内してくれました。
どう見ても日本人にしか見えないような女の人が現われて「コヒー?お茶どちらにします?」
下手に「お茶」と言うと、ブラックかグリーンか、ミルクかレモンかと話が難しくなりそうなので「コヒーをお願いします」
いかんなぁ、こんな弱気では.....。

しばらくすると、私の倍ほどもありそうな、恐ろしく背の高い人がニコ~ッと笑いながら現われました。
この人が市長?
鼻にかかったような声で何か言っているのですが、はて??
あまり、聞き直すのも失礼かと、適当なところで「Yes!」を繰り返していると、「letter」という言葉を繰り返しているのが聞き取れました。
さては、手紙のことを言っているのか?よし!今が手紙を渡すチャンス!
「これが、私が預かって来た大阪市長からの挨拶状です。くれぐれもよろしくとの事でした。」
果たして話の流れに合っているのかどうかは判りませんが、良い加減に渡さないと、折角覚えた台詞を忘れそうです。
大外れではなかったらしく、ひときわニッコリすると、立ち上がって手を差し出しました。
ホッとして「お会いできて嬉しかったです。ありがとう」ヨーシ詰まらずに言えたぞ!。

ぐったり疲れて、近くのスタンドでコーラを買って、ビルの日陰に落着きました。
「上出来!」とコラリア。
「あの人が市長?」
「エッ?あなた話してたじゃない。『市長はお約束していたのに、急に用事が出来てお会いできなくて大変残念だといっていました。私は市長付きの秘書です』ってあの人が言ったら、あなたニッコリ笑って受け答えしていたじゃないの?」
ヘ~そんな事を言っていたんですねぇ、市長ともあろう人が、凄くきさくな感じで、さすがは民主主義の国と感心してたんです。
考えたら、いくら何でも、アメリカ有数の大都市の市長が、訳の判らん学生と、玄関ホールの近所のブースで会ったりしませんよね。
「あれは東海岸の発音よ、イギリスっぽくてあまり好きじゃない。聞き取りにくかった?」
あのー、まだ、そんな発音の違いが判るような段階には達してないんですよ。
「でも、ちゃんと目的は果たせたじゃない!これなら大丈夫、何処にだって行けるわ!」
人事だと思って楽観的なことを仰いますが、到底そうは思えないんですけどねぇ。

夕方までは時間が有るので、ウロウロと見物をしていると、おや!「Wells Fargo 銀行!」
見覚えのあるリボン型の枠の中に Wells Fargo の文字が書かれたサインが出ています。
西部劇に登場して、強盗に襲われる、あの銀行でしょうか?
コラリアに訊ねると「そうよ!駅馬車(Stagecoach)を走らせていたの。変なこと知ってるのね?」
へ~これがそうか!と感激しているとコラリアが中に入ってパンフレットを貰ってきてくれました。
なるほど、「歴史」の項に疾走する駅馬車の絵が載っています。
急にカリフォルニァとサンフランシスコに親しみを感じました。

「お腹が減っちゃった!」とコラリア。
そう言えば、お昼を食べてないんです。
7番街まで行って、ケーブルカーで港に行く事になりました。
玩具みたいなケーブルカーが走って来ました。
ピョイと飛び乗ったコラリアに遅れまいと、慌てて続いて飛び乗ります。
同じ真鍮のバーにしがみ付いて身体は斜めに道にはみ出したまんま。
楽しそうにグイッと身体を押されると、落ちそうになります。
奥の方に車掌か、運転手が居るみたいですが、切符はどうするんでしょうね。
急な坂を登りきると、今度は下り。
肘で突っつかれて、進行方向を見ると「海!」
海が見えると何だか「オシ、海が見えたらコッチのもんや!」と自信が沸くような気がするんですが、気がするだけ。
グワ~ッと派手な音を立てていたケーブルカーがギィギィと軋んでスピードが遅くなりました。
コラリアが跳び降りたので、後に続いたのですが、ん?ただ乗り?

遅い昼ご飯については次回で、

2003/03/30:初出
2022/04/18:再録

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