ボウズがサッカーをやめる!?(前編) | ドングリクンパパのブログ

クラブユースタウンカップのトーナメント1回戦。相手は強い。夏のタウンクラブの大会ではボウズ達はまだストライカー君もいて絶好調だった。しかしトーナメントで対戦したあるチームに歯が立たず3-0完敗、その相手が3位だった際に、決勝をJ3下部相手に5-0で快勝して優勝しているチーム、それが今回の相手だ。

 

正直勝利はまったく期待していなかった。チームらしさが出せて、良い試合が出来れば良いなと思っていた。結果は4-0で敗戦だったのだが、思った以上にやれていた。相手はしっかり下から繋ぐ上手くて速くて強い相手、でもちゃんと自分達の時間帯も沢山あって惜しいシーンもあり、それぞれの選手がしっかり良さを出してやり切っていた。良く頑張ったなあと思う。

 

ところがこの日ボウズだけは最低だった。驚くほど酷かった。普通なら完全に前半途中で交代レベルだったが、高校年代最後の大一番なので出してもらっていた感じじゃないかな。後半はほんのちょっとらしさを出せたシーンもあった、、、かな、どうかなという程度。

 

高校3年間、サッカー人生12年間の集大成の試合が何かをはっきり物語っていた。やっぱりこれは、、、どう考えてもムリだ。先延ばししていたものに引導を渡された、そんな気がした。帰宅後ボウズは明らかに落ち込んでいたが、パパもそれ以上に落ち込んでいた。

 

「ま、これが実力だよな」

「そうだね」

「この試合、自分ではどう思った?」

「この先どうしようかな、、、って感じ」

 

そうだな。そういうレベルだよな。パパもまったく同じ気持ちだった。どうしようかな、つまり今後もサッカー続けていくのかどうか、そういう話だよな。

 

「夏の大会もそうだったけど、こういうレベルの相手になるとなんにも出来なくなるよな」

「うん、、、もう薄々分かってはいたんだけど、、、もう少しやれるかなと思ってたけど、、、」

「、、、、、、、」

「やっぱりフットサルの方がいいのかなって」

 

中学生の頃から試合後は必ずやっている振り返りをこの日は初めてやらなかった。ボウズの心が完全に折れていたし、パパの心も折れていたからね。今までどんな状況でも決して諦めることなく、へらへら笑って楽しそうに部屋でもドリブルを始めてしまう、そんなボウズをこの日は見る事が出来なかった。完璧に折れていたのだ。

 

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振り返りをしても更に落ち込むだけ。何か希望の見える話をしたくなって結局フットサルの話になったんだよ。ボウズは「普段のフットサルコートでやる紅白戦では誰にも負けない自信はあるし、1対1でもあいつらに勝てる。でも試合になるとあいつらの方が活躍して俺は全然ダメダメになる。やっぱりフットサル向きなのかもしれない」と言う。

 

ひとつはやはりフィジカル的なものだよな。レベルが上がれば上がるほど球際の強度や一瞬のスピードが問われる。ボウズのチームは球際の激しさがウリのひとつなので、チームメイトはこういう試合で魂のこもった素晴らしい球際の競り合いを見せてくれるし、それがチャンスに繋がるのだが、ボウズにはそれが出来ない。

 

ボウズだけ何度も球際で負けて、相手と並走しても必ず負けて、役に立たない上ピンチを招いてチームメイトから罵倒され続ける事になる。チーム全体を鼓舞し続ける為には不甲斐ないプレーに罵声が飛び、もっとやれよ!!と怒鳴る声も大事なんだよ。本当にギリギリのヒリヒリした試合では絶対にそういう声も必要なのだ。生ぬるい声ではあっという間に相手に飲まれてしまう。

 

全身から火が噴き出すような強い気持ちを全員が持ち続ける必要がある。ところが元々気の弱いボウズは球際で負けが続き、ミスも出るとどんどん委縮していってしまう。プレーが消極的になり、焦りも出てますますミスをしがちになり、どうにもこうにもダメダメな沼に落ちて行ってしまう。フィジカルを凌駕するレベルの技術や判断があれば良いのだろうけどそこもイマイチ足りてない。

 

それでももう少し気が強くて、心を燃やして全力でプレー出来ればやれることもあるだろうけど、ボウズはそもそもそこが向いてないのだ。でもそんなんでフットサルなら通用するのかよ、とも思う。ただ今はネガティブな話をするタイミングではないのだ。

 

とりあえず純粋にどっちがボウズに向いてるだろう?そんな話をしたりしてな。

 

*エリアが狭くスペースが限られる → 直線スピードでぶっちぎられる可能性が低い

*エリアが狭くスペースが限られる → スピードで抜くより駆け引きで抜く事が多い

*エリアが狭くスペースが限られる → サッカーより両足の重要性が高い

*ボールが軽い → 筋力なくても強いシュートが打てる

*ロングボールに対するヘディングの競り合いがない

*人数が少ない/戦術的な動きが多い → サッカーより混沌複雑ではない

 

これらを考えるとやはりボウズにはフットサルの方が向いてるのかな、とも思える。ちらっと検索してみた感じだと、フットサルはサッカーよりプレスの際の距離が近いそうだ。サッカーからフットサルに転向してプロになった人の話では、うっかり寄せ過ぎるとスペースを使ってひょいとかわされてしまう危険があるサッカーと違って、フットサルはスペースがないのでとにかく近距離まで素早く寄せる事が大事なのだと。

 

これもボウズにとってはやり易いはずだ。ボウズはスピードがないので相手が距離を取って守ってくるのが苦手。ただ相手が奪いに来るタイプだとボウズはベクトルをずらしてススっとかわすのが非常に得意なのだ。まあプロの平均身長などを見てもサッカーより断然低い。もちろんフットサルも上を目指すならかなりのフィジカルが必要になるのは間違いないけど、サッカーほどではないもの間違いない。

 

まあこうして考えるとやっぱりフットサル向きなのかもな、そんな話をしているうちにボウズもなんとなく元気を取り戻してきてな。夏休みにS君パパに誘われて行ったフットサルで出会ったイタリアのプロ・フットサル選手の話をしたりして。

 

「あの人、確かドイツのマインツのフットサルチームにいる時、サッカーのマインツからも声掛かったんだよね?そういうルートもあるってことだよね?」

「俺は高校もフットサルコートがメインで練習してきたから、本格的にフットサルはやったことないけど、ふつ~のサッカー選手よりサイズ感は慣れてるかもね。あと監督さんのメニューに結構フットサルっぽいものもあるし」

 

もちろん実際やったらそんなに甘くないよ。世の中なんだってそうだ。フットサルは戦術的なものが非常に発達していて慣れるまで大変だと聞くしね。ただ向いている向いてないで言ったらサッカーよりフットサルの方が向いてそうなのは間違いないよな、とりあえずそんな話になった。でも最後にパパはひとつだけ言っておいた。

 

「フットサルはアリだと思う。でもひとつ思うのは、、、今壁にぶち当たってるわけじゃん。その壁を前に逃げ出すような感じになるならもったいないよな」

「うん。そうだよね、、、」

「でも人には向き不向きがあるし、フットサルに本気で夢中になれるなら、つまりちゃんと前向きな転向なら全然ありだと思うんだけどさ。でもここで転向するのが逃げなのかどうかの判断は正直難しいよな」

「うん」

 

そこはボウズが自分で判断するしかない。しかしこれまでボウズのやってきた事を思うと、、、「逃げ」という判断にはならない気もするんだよな、やるべき事はやってきているからね。すると、、、そっか、、、

 

サッカーが、、、終わってしまう?

 

 

続く