見落としていたことがあったんだよな。タイムラグだよな。
そう、とてもうっかりしてたよ、育成と現実との間にはタイムラグが生じているというめちゃくちゃ当たり前なことを見逃していたんだ。そこがこのシリーズの要なんだよな。このシリーズの中に2002年というキーワードが何度も登場するが、年代が非常に重要なんだな。
例えば香川や乾がどんな環境で育ったのか?そんなことを調べたり考えたりしながら小学校年代にどんなことをしておけばいいのか、なんてことを考えたりしていたわけさ。世間的にも例えばワールドカップ前に不甲斐ない A代表を見て、日本の育成のどこが悪いのか考える、というような記事を見かけたよね?
間違ってないよ、そういうのは大切なこと。ただ、忘れちゃいけないのが、今のA代表の世代の選手が育った環境と、今の子供たちが育っている環境はまったく別物だということなんだよね。今回の記事のきっかけは新世代A代表の主軸にクーバーコーチングスクールの出身者がずらりと並んだことだった。
クーバーがどうのこうのという話をしたいんじゃないんだよね。今やクーバーに行かなくても他にも魅力的なスクールはいくらでもあるし、スクールなんて行かなくてもネット動画やDVD見ていくらでも個人練習もできる。クーバー以上にボールタッチにこだわったスクールもあるしコーディネーションにこだわったスクールもあればミニゲームばかりやっているスクールもある。それでもクーバーが良ければ全国100校以上ある。
でも中島翔哉選手が8歳の頃にはまだクーバーは21校しかなかった。長谷部誠が8歳の頃にはまだ日本に1校もなかった。そうやって少し歴史を振り返った時に改めて驚いたんだんだよ、日本の育成環境の激変にね。今では当たり前のことが、かつては当たり前ではなかったんだ。例えばJのアカデミー、いわゆるJ下部チームの歴史を見てみる。
全国サッカー少年の憧れ?だよね。ここに入ることができるのは各地域のトップレベルの子達のほんの一握り。でもね、一握り、、、とは言っても実は今やJ1の下部ジュニアユースに限っても全国に35チームもあるんだよね。1チームで複数のジュニアやジュニアユース持つところもあるからね。J2まで合わせれば60チームを超える。各チーム25人くらいだとして全国に1500人くらいはJ下部ジュニアユースに通っていることになる。それなりの数はいるんだよね。
では2002年はどうだったのか?2002年はなんとたったの7チームしかなかった。Jリーグのアカデミー組織が試験的に発足したのがこの2002年なんだよね。それ以前から独自に育成をやってきたチームはあったが、現在のようにJ加盟の際の義務付けとなりJ加盟全チームがアカデミーを持つようになったのは2008年、中島翔哉選手が14歳の頃。
クーバーという黒船スクールが全国に広まったのも、日本独自のボールタッチにこだわる個の育成が全国に広まったのも、Jのアカデミーやスクールが全国に当たり前になったのも、すべて2002年以降、つまりロシアワールドカップを戦った日本選手の多くは実はまるで知らない別世界の育成環境なんだよね。
今回クーバー世代がウルグアイに勝利した。勝利以上にみんながその内容に驚いたよね。その世代のイケイケぶりに旧世代がみんなたじろいだ。あのハンパない大迫でさえ新世代の前ではもたもたして見えたよね。でもね、歴史を振り返ると当然なんだよ、育ってきた環境がもうまるで違うのだ。
つまり恐らく今回の世代がたまたまではない。それ以降がむしろ育成環境の激変が激しいわけだからね。多分今後わけわかんないくらい上手い選手が山のように次々出てくる。ボウズはそういう選手たちと戦うんだなあ、ものすごく大変だなあ、、、というのが最近パパの感じていることなんだ。
ではこのまま日本が強豪国にあっさり仲間入りかと言うと、これがまた難しいんだな。パパは以前書いたことがあるけど、パパの予測ではこれから世界は均質化するんだ。以前は地域ごとに集積していた育成における知見がネットを通して世界中に拡散する。日本は今後ヨーロッパや南米と格差を感じることは少なくなってくる。でも同時にアジア、アフリカなどの様々な「サッカーに関しては今まで聞いたこともない国」も一気に台頭してくる。
もちろんその国全体での取り組み、協会トップの方針がその国のサッカー力を左右するのは言うまでもないが、それとは関係なく情報の拡散により草の根レベルで恐ろしいくらいレベルアップが急速になってくる、それが各国A代表に徐々に現れ始めるのがまさにこれからなんだよね。
例えば日本におけるネットの普及率を見てみよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20170623-00072326/
現在の普及率はおよそ85%だが、これは高齢者の方々を含むものなので例えば子育て世代に関して言えばほぼ100%の普及は間違いないだろう。でも例えば香川真司が8歳の時、1997年ではどうだったのか?わずか9.2%だよ。このシリーズでこだわっている2002年においては57.8%である。
家庭向き光回線が初めて登場したのが2003年、ユーチューブがサービスを開始したのが2005年、iPhoneが発売されたのが2008年である。
https://www.daj.jp/20th/history/
ネット以前と、以降では生活が激変した。同時に育成環境も急激に変化した。ネットがあれば素人でもすぐにサッカーを教えられるようになった。パパもサッカー未経験だったが今は正直に言ってやればものすごく魅力的なチームを作れる自信があるし、練習メニューも豊富に持っている。でもそれもすべてネットがあったからこそだ。
アザールのドリブル、小野伸二のスルーパス、カンナバーロのディフェンス集、パリサンジェルマンu12の練習、欧州プロを顧客に抱える個人レッスンのプロコーチのメニュー、青森山田の練習、メッシの個人練習、バイエルンのアップ、マンUのフィジカルトレーニング、日本代表合宿中の1対1、バスケの代表合宿でのコーディネーションメニュー、バトミントントップ選手のフットワーク練習、、、
いろんなものを毎日のように見て少年団のチーム練習やボウズ達との朝練に取り入れてきた。ヨーロッパ各地で子供達を教えているコーチのブログみたいなものもたくさん読んだし、様々な国のコーチ、監督、トレーナーの意見を読み、各国の育成の違いを研究したり。もちろんブロ友さんのブログも参考にさせていただいた。食についの知識もすべてネットで手に入れた。
ネットがなかったらほっとんど出来てないよね。世界中で同じことが起きている。サッカーではまだまったく知られていない国の、まったく無名チームの無名コーチが、一生懸命ネットを検索して「こんな練習方法があったのか!面白い!」「そうか、育成はサッカーだけじゃない、食べることも寝ることも大事な育成なんだ!」なんてやっているかもしれないね。
ともかく日本では2002年以降、スクール環境、Jのアカデミー環境、ネット環境すべてが激変した。その激変がまさにこれからA代表に反映されてくるんだよね。果たしてどんな変化を見せるだろうか?パパもうっかりしていた、でもこのタイムラグについてしっかり認識して書かれた育成論をパパはまだ見たことがないんだな。これから良くも悪くも嵐のような激変が訪れると言うのにね。
というわけで次回は今回のJのアカデミーの歴史を踏まえた上で、既に予告してある「U18日本代表選手たちが所属していたジュニアユースチーム」を眺めてみよう。