多数の死傷者を出した北京・天安門前の車両突入事件はウイグル族の関与が濃厚に。公安当局は市内全域でウイグル族の摘発を始めているもようだ。http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/131031/wor13103100270000-n1.html
【北京=川越一、矢板明夫】中国の首都北京で5人が死亡、38人が負傷した天安門前の車両突入事件は、分離独立運動がくすぶるウイグル族の関与が濃厚になった。公安当局は少なくとも2人のウイグル族男性が事件に関わったとみて宿泊施設を徹底的に調べているもようだ。事件から一夜明けた29日、現場は何事もなかったかのように片付けられる一方、天安門広場周辺には大量の警察官が投入され、厳重な警戒態勢が敷かれていた。北京のホテル関係者によれば、地元公安当局は28日午後から共犯者を捜す名目で、市内の旅館や民宿を徹底的に捜索。ウイグル族を見つければ理由を告げずに連行することもあり、市内全域でウイグル族の摘発が始まっているという。
今年6月に新疆ウイグル自治区中部などで、ウイグル族と地元警察の衝突事件が連続して起きたことを受け、北京、上海、広州など都市部ではウイグル族追放の動きが強まっている。
北京東部の繁華街、三里屯付近で羊肉の串焼きを売っていたウイグル族は7月以降、ほとんど見かけなくなった。ウイグル族を支援する北京の活動家は「今回の事件を受けて、ウイグル族が都市部から排除されることがますます増えるだろう。一生懸命に働こうとしているウイグル族のチャンスが奪われている」と懸念を隠さなかった。
多数の死傷者を出した北京・天安門前の車両突入事件はウイグル族の関与が濃厚に。公安当局は市内全域でウイグル族の摘発を始めているもようだ。
北京の人権派弁護士によると、治安当局はテロ事件を未然に防げば多くの賞金がもらえるため、暴行や強盗などの事件でウイグル族の容疑者を厳しく取り調べ、“テロ事件”として処理するケースもあるという。中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は29日の定例会見で、事件について「調査中」と述べる一方、新疆ウイグル自治区で頻発している暴力事件には「断固反対し、打撃を加える」と強調した。
当局は情報の統制に極めて敏感になっている。北京市内のNHK国際放送は29日昼に続き夜のニュースでも、事件を報じようとしたテレビ画面が突然真っ黒になり一時、視聴できなくなった。国営の中国中央テレビも事件の扱いは小さく、ウイグル族の関与の可能性も報じなかった。
海外のウイグル人組織、世界ウイグル会議のイリハム副議長(日本在住)は産経新聞の取材に、「公開された情報だけでは不明な点が多く、ウイグル人による犯行かどうかはまだ断定できない」とした上で、事件を機に少数民族への締め付けが強化されることへの懸念を示した。