香港の大先生のところを訪問した時、紹介役を務めてくださったのは自ら武術をやっている映画プロデューサー、大学の先生等だったのだが、当然、似たもの同士なので話は盛り上がったのだが、大学の先生が父親の話を持ち出すと、大先生を含めてなぜか皆話がトーンダウンしてしまうのである。特に父親を早くに亡くていている者もいた。
大学の先生は興味深いことを言った。
「私が武術について研究していて、いつも興味深く思うのは、熱心に武術を練習している人や、そういう先生はなぜか父親の影が薄いことが多いのです。」
その話題の時、自分自身も例外でないと感じていたし、皆、具体的に言葉には出さないもののある種の共感した雰囲気が流れてしまっていた。
武術と言うものはもしかしてそういうものなのだろうかと思ってしまった。