鷗飛ぶ監獄の空晴れ渡りサッチモの歌を口遊む(くちずさむ)かな

(アメリカ 郷隼人・佐佐木幸綱選 第十首)


クリスマス・キャロルを合唱せしチャペル多人種混合のミサのお祈り(アメリカ 郷隼人・高野公彦選 第六首)


今日は、第40回朝日歌壇賞が

発表されていました。

 


佐佐木選

もういない爺さんの笑う声がする祖母の居室に陣どる鸚鵡(スイス 岸本真理子)

高野選

首脳らは悲痛な面(おも)で歩み出る原爆資料館のExit(出雲市 塩田直也)

永田選

どっちみちどちらかひとりがのこるけどどちらにしてもひとりはひとり(豊中市 夏秋淳子)

馬場選

いつか会う約束交わしこっそりとプールの中で指切りをする(富士宮市 鍋田和利)


夏秋淳子さんは、実は本日の永田和宏選第三首に選ばれている。


ほんたうは羨ましいのよひとりよりふたりがいいに決まってゐるわ


選者評:残された誰もがそう思いつつ生きる(永田氏)



それから

海外詠ではないが気になった歌


赤い蛇を鎖骨のくぼみに飼っている明日の午後の摘出オペまで

(奈良市 山添聖子・永田和宏選 第四首)


横雲が教室中に広ごりて定家と眠る五限の古典

(西条市 村上敏之・馬場あき子選 第十首/高野公彦選 第三首)


選者評: 定家の名作「春の夜の夢の浮き橋とだえして峯にわかるる横雲の空」を教えても生徒らは居眠り。(高野氏)


「春夏冬」の屋号にふらり熱燗と酢牡蠣でちょっと秋の道草

(大阪市 岡洵子)

 

コップより清酒あふれて受皿へ表面張力見られぬ酒場

(枚方市 秋岡 実)