防音納屋のカウンターに飾った2枚の浮世絵はどちらも喜多川哥麿の「江戸の花娘浄瑠璃 紅葉」です。

でも色が異なります。なぜでしょうか?

喜多川哥麿の「江戸の花娘浄瑠璃 紅葉」

 

左側は江戸時代に製作された「オリジナルの浮世絵」を戦後にコピーした「プリント版」で、右側は「オリジナルの浮世絵」をもとにして戦後に彫りなおした「復刻版」です。復刻する時にオリジナルの浮世絵の元の色を想像して復元したために色が異なっているのです。

オリジナルの浮世絵のコピー「プリント版」

 

戦後に色を復元して彫りなおした「復刻版」

 

つまり、三味線を弾く女性の着物の色は、江戸時代には緑色をしていましたが、その後200年が経過して浮世絵の色が褪せて茶色になったという訳です。

 

また、浮世絵は木版画ですから同じ絵柄の浮世絵が多数刷られ、現在でも複数枚残っているものもあります。江戸時代には同じ色をしていた浮世絵もその後の保存状態の違いによって色の褪せ方が異なるものもあります。また、後摺りでは版木が減ってくるため初摺りとは絵柄が少し異なるものもあります。

ネットで見つけた「江戸の花娘浄瑠璃 紅葉」

 

初摺りと後摺りが異なることで有名なのが葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」です。

初摺りでは入道雲のような雲の形がはっきりしていますが、後摺りでは空一面が薄暗い色で塗られています。

初摺りの「神奈川沖浪裏」

 

後摺りの「神奈川沖浪裏」

 

初摺りと後摺り、どちらが好きかは、人それぞれ好みでしょう。