Jホラーの源流ともいえる〝日本の怪談〟お盆になるとテレビで必ず「怪談劇場」みたいな番組が放映されていた。今みると、やはりJホラーの原点はここにあるんだと感じる。
今回は「牡丹燈籠」幽霊は足が無いのにカラン、コロン~🎵
U-NEXTで鑑賞可
〇あらすじ
盆の十六日。旗本の三男坊新三郎は、吉原の遊女お露を知った。その夜、新三郎の住居を訪ねたお露と下女のお米は、武士の娘でありながら吉原に売られた不幸な身の上を語った。
そしてお米のたっての頼みから、せめて盆の間だけでもと、お露と祝言の真似事をして契りを結んだ。一方同じ長屋に住む伴蔵が、この有様を覗き、見た時にお露の裾が消えているのに仰天、易者の白翁堂に駆け込んだ。伴蔵から様子を聞いた白翁堂は、翌日、新三郎の顔にまざまざと死相を見て驚き、新三郎にそれが悪霊のためだと言う。
やがて新三郎は日毎にやせ衰えて行った。長屋の人はそんな新三郎を心配し、また悪霊の退散を祈願して、新三郎を籠り堂に閉じ込め、護符を張りめぐらしたが・・・。
1968年製作/88分/日本
※映画.comより抜粋
遊女お露役の赤座美代子さん。綺麗な人ほど幽霊になると怖くなる。
出た~、「よっ!お露!」と掛け声を掛けたくなる見栄っぷり!
〇感想
真剣に何十年かぶりに「牡丹燈籠」を観ました。いや~、やはり怖い!幼少期の頃なんで子供だましで怖いと決めつけていましたが、やはり怖い!怖いモンは怖かった!
お露と下女のお米が、フワフワと空中へ舞い上がる姿はワイヤーアクションなのか、浮遊感がハンパ無いです。また幽霊には足が無いという事を徹底し、一切映画の中では二人の幽霊は足を見せない。
ただ音響で遠くから〝カラン、コロン~〟と幽霊が来たぞ!とお知らせする足音は効果音として取り入れている。この効果が怖さを何倍にも増幅しています。
「牡丹燈籠」にしかない怖さは、映画に登場する多くの人々が、幽霊の存在を共有している事です。幽霊に惚れられるボンボン育ちの新三郎の自宅は貧乏長屋で、そこで貧しい子供達にボランティアで読み書きを教えています。そこの住人たちも幽霊の存在を認知しており、深夜にお露と下女のお米の幽霊コンビの足音が「カラン、コロン~」が聞こえてきたら、「わぉ!幽霊が来たぞっ!」と布団を頭から被ってビクビクと怯えるシーンがあります。昔、よくこのシーンになると幼少期の私も同じように布団を被って、布団の隙間からテレビを見ていました。「牡丹燈籠」は、観客と長屋の住民との不思議なコミュニケーションにより他の怪談とは違う怖さで一線を画していました。
今回の鑑賞で知ったのですが、霊魂は本来、お盆の期間の8月16日に〝あの世〟に帰るのですが、(映画冒頭でも灯籠流しで霊魂を見送るシーンがあった)成仏出来なかった霊魂は8月20日の裏盆(うらぼん)まで現世に残るらしいです。
今回の映画のポイントはこの期間で、新三郎は、8月16日にお露と知り合い、17日に新三郎は幽霊とは知らずにお露と契ります。この時に、下女のお米が布団を敷いたり、蚊帳を吊ったり、扉を閉めたりと、いそいそと初契りの準備をするシーンは何となく笑えます。で、お米が言った台詞が「さ、さ、早く、お嬢様!」そんな急がんでも、色気もこそもありませんぬ。ww
そして18日にも来るのですが、既にこの時には同じ長屋に住む伴蔵と易者から「あれは、この世の者ではない、幽霊や」という事を聞かされている。なので幽霊コンビに新三郎は辛辣な言葉を浴びせて追い払おうとしますが、途中で可哀想になり、更に若いので欲望に負けて、またもや契っちゃいます。2日間連続で契った新三郎は誰が見ても頬がこけて、げっそりしています。これを一般的には〝太陽が黄色く見える〟状態と言います。
映画「異人たちとの夏」(大林宣彦監督)でも風間杜夫が名取裕子のオバケを相手に契りまくっていました。なぜか世論は、それを怨霊に憑りつかれた為と言いますが、それは違います。その認識では怨霊が可哀想です。あれは契りまくるので疲れているだけです。(キッパリ!)
で、8月19日に長屋の人々は、これはアカン!このままやったら新三郎先生は死ぬ、そうなると子供の読み書きは誰が教えるんや!となり、近所の坊さんに知恵を借ります。坊さんは、昼間に寺のお堂に新三郎を幽閉し、お堂に護符を貼り、サルになっている新三郎とお露を物理的に会えないようにします。
深夜に幽霊コンビは新三郎が居るお堂に行きますが、護符が貼ってあるので入れません。そして、お堂の周りをフワフワ、クルクルと回ります。カメラワークと照明により、その姿はメチャ怖く、トラウマ級!やっぱりワイヤーアクション?マトリックス?
更にお露が恨めしそうな声で「新三郎様~、夫婦の契りを結んだ私にこんな仕打ちをするとは、恨めしい~」と言います。間髪入れずにお米が「また、明日来るので、護符を剥がしてください~」と捨て台詞をはき、朝になったので墓へ帰ります。明日来る・・・アスクル・・・注文みたいな。
さて、最後の夜、ラストスパート!!幽霊コンビと長屋チームとの攻防となります。しかし、幽霊コンビは新三郎にお堂の護符を剥がさせる事を諦めます。幽霊コンビは近所の伴蔵に護符を剥がす事をお願いします。しかし、伴蔵は100両をくれたら護符を剥がす事を条件に幽霊と約束します。
これを裏で操っていたのが、実家に帰省し、自宅に戻ってきた気が強く、欲ボケな女房です。
この女房役を小川真由美さんが演じており映画「鬼畜」の緒形拳さんのお妾役を思い出しました。
小川真由美さんと西村 晃さん、欲ボケな二人。日本ではこのパターンは懲らしめられます。w
さて、長屋の人々は新三郎先生が生き残って、子供達に読み書きを教えてもらおうと必死のパッチで読経を唱えます。「南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!」と一晩中、唱えながら団扇太鼓を〝バン!バン!バン!〟とを叩き続けます。それと同時進行で伴蔵夫婦の悪巧みの場面を交互に切り替えて静と動で観客を煽ります。そして驚愕のラストが待ち受けています。それは観て感じて下さい。
俳優陣が凄いですね。伴蔵役を西村 晃さん(にしむら こう)、易者役に志村 喬さん(しむら たかし)共に黒澤映画のレギュラー陣って言っても過言ではないです。それと伴蔵の嫁役の小川真由美さんは、相変わらずベッピンさんやけど、気が強く男性を翻弄する〝悪女〟を演じ切り最高ッス!♡
映画「生きる」の志村 喬さん
出た!「七人の侍」の志村 喬さん!島田勘兵衞!侍チームJAPAのリーダーだっ!
他、「寅さんシリーズ」、「東宝ゴジラシリーズ」にも出てるよ🎵幅が広い!
映画「鬼畜」のお妾さん役。気合十分!
「もう!あんたの子供やで!あんたが育ててや!」男ならゾッとするシュチエーションです。
クール・ビューティー代表の岩下志摩さん。二人は映画で何度もバチバチに闘っています。
どちらも違うタイプやけど、どっちも、ええなぁ~💛
※追記
もうすぐ8月でお盆の月なので日本の怪談を観て紐解きたいと思います。
以上