『バッド・ルーテナント:トウキョウ』
■ あらすじ
新宿・歌舞伎町の裏社会に生きる刑事・矢吹恭二は、ドラッグやギャンブルに溺れ、ヤクザから命を狙われているうえ、相棒を殺したという噂まである男。
そんな彼の前で、ヤクザばかりを狙った猟奇殺人事件が発生します。
矢吹は遺体に残された入れ墨から身元を割り出し、石塚満という男を容疑者として追うことに。
一方、来日したFBI捜査官グエンの任務は、日本で行方不明になった次期アメリカ大統領の娘を捜索することでした。
やがて矢吹とグエンはバディを組み、それぞれが追う事件は複雑に絡み合っていきます。
歌舞伎町の裏社会を舞台に、二人がたどり着いた先に待っていたものとは……。

■ タイトルの意味と過去作品
「バッド・ルーテナント」とは、直訳すれば「悪い警部補」。日本語なら「悪徳警部補」といったところでしょうか。
ドラッグやギャンブルに溺れ、自らも犯罪の闇に染まっていく刑事。そんな主人公の人物像を表すタイトルです。
本作には、過去に同じタイトルを持つ作品があります。
1992年、ハーヴェイ・カイテル主演の『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』。
そして2009年には、ニコラス・ケイジ主演の『バッド・ルーテナント』が登場しました。
今回は舞台を東京・歌舞伎町に移した作品です。
監督は、エログロやバイオレンス描写でも知られる三池崇史監督。
『殺し屋1』『オーディション』『着信アリ』など、刺激的な作品を数多く手がけてきた監督だけに、私も期待していたんですけどね……。

■ 感想:二つの事件は、もっと絡み合ってほしかった!
ところが、嫌な予感が的中してしまいました。
本作では、大きく分けて二つの事件が並行して進みます。
一つは、ヤクザばかりを狙う猟奇殺人事件。
遺体をバラバラにし、肉団子のようにしてカラスに食べさせるという、なんともエグい殺人です。
もう一つは、次期アメリカ大統領候補の娘ミーガンをめぐる事件。
この娘が、また強烈!
刺青を入れた人物を探し出しては、怪力で首をへし折って殺していくという、とんでもないキャラクターです。
当然、私は「この二つの事件が、いったいどうつながっていくんだ?」と期待するわけです。
ところが……。
向こうは向こう、こっちはこっち。
二つの事件が思ったほど有機的に絡み合わず、観ているこちらとしては、どうにも物語に乗り切れませんでした。
さらに、宗教的なモチーフを思わせる鳥葬の描写も登場します。
しかし、これが物語の中でどのような意味を持つのか、私にはいまひとつ伝わってきませんでした。
「これ、物語にどう関係するん?」
そんな疑問が残ってしまったんですよね。

■ 海外キャストが歌舞伎町に馴染まない?
もう一つ気になったのが、外国人キャストの存在です。
今回、FBI捜査官グエンを演じるのはリリー・ジェームズ。
『ベイビー・ドライバー』や『イエスタデイ』などで印象に残る女優さんです。
華やかな魅力のある俳優ですが、本作ではその雰囲気を封印し、凄腕のFBI捜査官を演じています。
一方、次期大統領候補の娘ミーガンを演じるのは、プロレスラーとしても知られるリヴ・モーガン。
こちらも強烈な存在感を放っています。
ただ、ここは完全に私個人の感想なのですが、ハリウッドで活躍する有名俳優が日本を舞台にした作品に登場すると、どうしても日本の風景から浮いて見えてしまうことがあるんです。
外国人キャラクターが片言の日本語を話す場面でも、映画の世界から現実に引き戻されてしまう。
もちろん、海外キャストが悪いというわけではありません。
ただ、本作では私にはどうにも馴染みが悪く感じられました。

■ 東京・歌舞伎町なのに、どこか無国籍
さらに気になったのが、街の描き方です。
本作の歌舞伎町は、漢字やカタカナの看板が目立ち、ネオンがギラギラ。
確かに派手ではあるのですが、私には日本の歌舞伎町というより、映画『ブレードランナー』に登場するような架空のアジア都市に見えてしまいました。
海外の映画製作会社も関わっている本作ですが、もう少し日本らしい空気や、歌舞伎町ならではの猥雑さを前面に出してほしかった。
せっかく東京を舞台にしているのですから、もっと泥臭く、生々しい街の姿が見たかったんですよね。

■ もっと描いてほしかった、矢吹の人間性
逆に、私がもっと掘り下げてほしかったのが、主人公・矢吹の人間的な側面です。
矢吹は、卓球を通じて亜矢子や三奈という女性たちと関わり、児童福祉施設に子どもを預けるという一面も持っています。
こうした描写からは、悪徳警部補と呼ばれる男の中にも、単純には割り切れない人間性があることがうかがえます。
だからこそ、猟奇殺人や国際的な陰謀を派手に描くだけでなく、矢吹という男の内面をもっと掘り下げてほしかった。
「悪徳警部補と呼ばれる男が、それでも捨て切れない人間らしさ」
そこを中心に描いていたら、また違った面白さが生まれたのではないかと思います。
■ 総合評価:Bマイナス
ということで、映画『バッド・ルーテナント:トウキョウ』の評価は……
Bマイナス!
小栗旬を主演に、國村隼、舘ひろし、中野英雄といった実力派俳優を揃え、海外キャストも投入した意欲作。
しかし、豪華なキャスト陣が十分に生かされているとは感じられず、二つの猟奇事件も期待したほど密接に絡み合いません。
さらに、東京・歌舞伎町の描写にも、個人的には違和感が残りました。
そして、観終わってから浮かんできた疑問。
「この海外キャストを使ったパート、本当に必要だったの?」
もちろん、これはあくまで私の個人的な感想です。
ただ、予告編を観たときの期待が大きかっただけに、今回は残念な結果となりました。
私の映画の第六感……。
残念ながら、今回は当たってしまいました。
ガッカリです。