東野圭吾さんの同名ベストセラー小説を映画化した、『白鳥とコウモリ』。
松村北斗さん、今田美桜さんが主演を務め、三浦友和さん、中村芝翫さん、柄本佑さん、吉田羊さん、風吹ジュンさん、井川遥さんら、豪華キャストが出演。
「罪と罰」「家族」「償い」をテーマに、過去の事件と現在の事件が複雑に絡み合っていくミステリーです。
今回は、ネタバレ全開で感想を書きたいと思います。
1984年、すべての始まり
物語の始まりは、1984年の愛知県。
金融業者の灰谷(はいたに)が、事務所で刺殺される事件が起こります。
灰谷は、詐欺まがいの商品を扱い、多方面から恨みを買っていた人物。
その事件の第一発見者の一人が、倉木達郎でした。
その後、福間淳二という男が逮捕されます。
しかし福間は留置場で自ら命を絶ち、事件は真相が分からないまま、1999年に時効を迎えます。
ところが――。
実は、真犯人は当時大学生だった白石健介でした。
白石は、祖母が灰谷から詐欺商品を買わされていたことを知り、金を取り戻そうと灰谷のもとを訪れます。
しかし、灰谷の口車に乗せられ、激昂した白石は灰谷を刺してしまう。
その現場を目撃したのが倉木でした。
倉木は灰谷の悪事を知っていたこともあり、白石をかばうために証拠を隠します。
その結果、犯人ではない福間が逮捕されてしまう。
福間が命を絶った後も、白石と倉木は真実を語らないまま、33年の月日が流れます。
2017年、再び起こる殺人
そして2017年。
東京・竹芝で、善良な弁護士・白石健介の遺体が発見されます。
そう。
1984年に灰谷を殺害した、あの白石健介です。
やがて、倉木達郎が逮捕されます。
倉木は、
「1984年の事件の真犯人が自分だと、白石に知られてしまった」
と自供。
さらに、白石を殺害した経緯まで詳細に語ります。
こうして事件は、解決したかに見えました。
しかし――。
被害者の娘と加害者の息子
倉木の息子・和真(松村北斗)は、父親の自供に違和感を抱きます。
一方、被害者・白石健介の娘、美令(今田美桜)もまた、
「自分の父親について、何かがおかしい」
と感じ始めます。
本来なら、加害者の家族と被害者の家族。
決して交わるはずのない二人です。
ところが二人は手を組み、事件の真相を追い始めます。
そして、明らかになっていく驚きの事実。
2017年の白石殺害の真犯人は、倉木ではありませんでした。
犯人は、倉木が通っていた小料理屋「あすなろ」の店主・浅羽織恵(あさば・おりえ)の息子、安西知希。
当時、中学2年生でした。
しかも知希は、1984年の事件で冤罪となり、命を絶った福間の孫だったのです。
33年前の罪が、再び悲劇を生む
知希は、祖父が「人殺し」として扱われ、その影響で家族が苦しんできたことを知っていました。
そして、あるメールをきっかけに白石と接触。
その後、白石を呼び出し、殺害してしまいます。
ところが、白石は刺された後も生きていました。
そして最後の力を振り絞り、自分で車を動かして、知希が犯人だと分からないようにしようとしたのです。
つまり白石は、最後の最後まで犯人をかばおうとした。
そのことに気づいた倉木は、知希が犯人だと知りながら、自分が身代わりになることを決意します。
1984年。
倉木は、白石をかばいました。
そして33年後――。
今度は、その白石を殺した少年を、倉木がかばう。
この因果関係が、この映画の大きなポイントだと思います。
なぜ知希は白石を殺したのか?
では、なぜ知希は白石を殺したのでしょうか。
当初、知希は、
「人殺しと言われたことへの仕返し」
「母や祖母が苦労したから」
「冤罪のせいで両親が離婚したから」
などと話します。
しかし、話を掘り下げていくと、知希は別の理由を口にします。
それが、
「殺人に興味があった」
というもの。
自分が「人殺しの孫」として恐れられてきた経験から、殺人というものに興味を持つようになった。
そして、復讐による殺人なら刑罰も軽くなるのではないか。
そんな考えから、実際に殺人を犯してしまったのです。
ここには、単純な「復讐」という言葉では片付けられない、人間の歪みが描かれています。
感想|真実を知ることは、本当に正しいのか?
率直な感想を言うと、かなり考えさせられる作品でした。
特に印象に残ったのが、倉木と白石、二人の父親の選択です。
三浦友和さん演じる倉木も、中村芝翫さん演じる白石も、実は「真実が明らかになること」を望んではいなかった。
二人は、それぞれの罪を背負いながら、ある意味では自分たちなりの「償い」を選択していたわけです。
ところが、その思いを知らない和真と美令が、いわばパンドラの箱を開けてしまう。
二人は純粋に真相を知りたい。
当然のことです。
しかし、真相を追い続けた結果、親たちが選んだ道を壊してしまうことになります。
ここが、この映画の非常に皮肉なところです。
あまりにも可哀想な浅羽一家
そして、個人的に一番つらかったのが、浅羽母娘の一家です。
1984年には、夫・福間が冤罪によって命を絶ってしまう。
そして33年後。
今度は、その息子ではなく、孫である知希が殺人を犯してしまう。
しかも、その結果として倉木が身代わりとなり、事件の真相が明らかになってしまう。
つまり、風吹ジュンさん、井川遥さんが演じる一家は、1984年の冤罪と夫の死に続いて、今度は息子の犯罪によって、再び奈落の底に突き落とされることになります。
これは……。
可哀想すぎる!
特に井川遥さんの涙声が、本当に痛々しい。
気になったのは警察の捜査
一方で、個人的に気になったのが、警察の捜査です。
1984年の事件について、
「もう少しきちんと裏付け捜査をしていれば、冤罪は防げたのでは?」
と思ってしまいました。
もちろん、実際の警察がここまで杜撰な捜査をするとは思いません。
だからこそ、ミステリーとして見ると、
「なぜ、ここまで捜査が進まないの?」
という違和感が残りました。
物語を成立させるための設定だとは分かるのですが、ここは少し現実味に欠けるように感じました。
恋愛要素は少し多かった?
そして、もう一つ個人的に残念だったのが、恋愛要素を少し入れすぎてしまったこと。
人間ドラマとしては分かるんです。
和真と美令の関係を描くことにも意味はあると思います。
ただ、その分、肝心のミステリー部分が少し薄まってしまった印象があります。
この作品は、「罪」と「家族」と「償い」という非常に重いテーマを扱っているだけに、個人的にはもう少しミステリーに軸足を置いてほしかった。
特にラストシーンは……。
正直、
「えっ、どういうこと?」
と、ちょっと理解に苦しみました。
印象に残った常滑の夕景
そんな中で、個人的にとても印象に残ったのが、常滑の港を映した夕景のシーン。
美しくて、そしてどこか切ない。
この作品の持つ重い余韻ともよく合っていて、心に残る場面でした。
評価は「B」
ということで、私の評価は、「B」です。
重厚なテーマを扱っているだけに、もう少しミステリーに軸足を置いてくれたら、さらに印象に残る作品になったのではないか。
そんな感想を持ちました。
とはいえ、
「罪を犯した人間だけが、その罪を背負うのか?」
「真実を明らかにすることは、本当に正しいことなのか?」
「家族は、親や祖父母の罪をどこまで背負うのか?」
そんなことを考えさせられる作品です。
東野圭吾作品らしい、過去の事件と現在の事件がつながっていく構成も見どころ。
重いテーマの作品ですが、ミステリー好きの方には、一度観ていただきたい作品です。
そして最後に一言。
今田美桜さん、目が大きい!
……可愛いけどね(笑)
映画『白鳥とコウモリ』
監督:岸善幸
原作:東野圭吾
出演:松村北斗、今田美桜、三浦友和、中村芝翫、柄本佑、吉田羊、風吹ジュン、井川遥 ほか






















































