今回は障がい者を通じて、社会構造が見えてくる映画を3作品選びました。どぞ、

 

 

「くちづけ」

〇あらすじ

知的障害のため、心は7歳児のままの女性マコは、元人気漫画家の父親いっぽんに連れられ、知的障害者の自立支援グループホーム「ひまわり荘」にやってくる。無邪気で陽気な住人たちに囲まれ、のびのびと日々を送るマコは、そこで出会った男性うーやんにも心を開いていく。ようやく見つけた理想の場所で娘が幸せになれば、いっぽんも漫画家として復帰できるかと思われたが、やがてひまわり荘の一同に厳しい運命がふりかかる。
2013年製作/123分/G/日本

 

〇感想

この映画に出てくる施設利用者の知的障害の男性は、妹が婚約間近でしたが、自分が障がい者である事から縁談が破談になります。妹は兄を施設を退所させて、自分で面倒を見る事を決意します。また、グループホームは、親が管理する〝障がい者年金〟から支払われるお金で運営されます。しかし、ある障がい者の親は、障がい者年金を使い込み、支払いが何か月も滞り、その施設利用者はグループホームに居れなくなります。

 

竹中直人が演じる漫画家のいっぽん先生の娘マコも障がい者ですが、いっぽん自身が病気になり、自分の命がそう長くない事を悟ります。自分が亡くなると娘のマコは誰が面倒をみるのか?不安になり、それを周囲にぶちまけるシーンがあります。

「刑務所の中は、軽度の障がい者が重度の障がい者の面倒を見ており、受刑者の五分の一は障がい者である。それも冤罪が多く、警察から障がい者が尋問を受けた時に、障がい者は何て答える!?怖いので私がやりましたって答えてしまう!これからマコはどうなる?!」

胸が掻きむしられるシーンでした。更にホームレスの中には、知的障害者がいる事実も知り、「マコには、浮浪者にも犯罪者にもなって欲しくない!」いっぽん先生はマコの将来を考え、施設に入れる事を考えます。しかし更に厳しい現実が待ってます。いっぽん先生が描くマコのあるべき姿の漫画(パラレルワールド)には涙腺爆発!した。

貫地谷しほりさんが愛おしくも切ないマコを演じています。かなり泣かせに掛かっている映画なの注意です。w

※Amazonプライムで鑑賞可。

 

 

「Mommy マミー」

〇あらすじ

15歳の息子スティーヴを育てる、気の強いシングルマザーのダイアン。スティーブはADHD(多動性障害)のため情緒も不安定で、普段は知的で純朴だが、一度スイッチが入ると攻撃的な性格になってしまう。そんな息子との生活に右往左往していたダイアンだが、隣家に住む引きこもりがちな女性教師カイラと親しくなったことから、少しずつ日々に変化が訪れる。精神的ストレスから吃音に苦しみ休職中だったカイラも、スティーブの家庭教師を買って出ることで快方に向かっていくが……。
2014年製作/134分/PG12/カナダ

 

〇感想

健常者でも16歳の頃は〝嵐の16歳〟といい成長期の過渡期で感情の起伏が激しく、コントロールが難しい年齢です。そのため犯罪を起こしたり、巻き込まれたりする年齢と言います。この映画の主人公スティーブは15歳で、発達障害(ADHD)と他の障害もあるようです。(おそらく強度行動障害)

母は超前向きな人で、息子スティーブが暴れて他人に迷惑を掛けてもへこたれないパワーを持っています。しかし彼女も人間なので限界があります。カナダのS14法案に則り、親の権限で息子を再度入所させます。施設へ向かう道すがら、母は自分とスティーブのもう一つの人生を妄想します。それは、息子が大学受験に受かり、一人暮らしを始めて、彼女が出来て結婚するまでのストーリーを妄想します。このシーンが切なくて、一番キツイかったですね。

現実は、スティーブが居なくなり、独り家で暮らす母は声を圧し潰し、決して泣きませんでした。まだまだ、これから頑張る、諦めないというシーンです。しかし、これは今までは意味が違うと思います。それは息子と共に人生を歩む事を断念し、独りで生きる事を決めた瞬間だと思います。なぜなら、スティーブの状態は以前より悪化し、施設からは二度と出れないと感じるからです。前に出来た事が出来なくなった・・・これが現実です。

※U-NEXTで鑑賞可。

 

 

「二十日鼠と人間(1992)」

〇あらすじ

1930年、大恐慌時代のカリフォルニア。頭が切れて物知りのジョージ(ゲイリー・シニーズ)と、巨漢だが精神薄弱のレニー(ジョン・マルコヴィッチ)の2人は、農場から農場へ渡り歩く日々を続けていた。助け合いながら自分たちの夢を語り合う2人は、次の仕事先であるタイラー牧場に到着した。新しい仲間と仕事にも慣れ、彼らの夢に賛同するキャンディ(レイ・ウォルストン)の言葉に、夢が現実に近づいたように思えたが・・・。

1992年製作/115分/アメリカ

 

〇感想

この映画も何度か観ていますが、主演のゲイリー・シールズ自身が監督していたとは知らず勉強不足でした。;;兎にも角にも、賢いジョージ(ゲイリー・シニーズ)と、精神薄弱のレニー(ジョン・マルコヴィッチ)の演技力に尽きる作品です。

何度もレニーがジョージに、二人の夢と希望である〝自分達で農場経営する〟その話をしてくれと真っすぐな眼差しで懇願するシーンがあります。とても切ないですが、印象的なシーンです。その内容は「小さな牧場だが、一人に一つずつ小屋を建て、そこに住もう、野菜畑をつくり馬、牛、豚を飼う。そして、うさぎも飼おう。小屋にはストーブを置いて、雨の降る日はそこに座って雨音を聞く」それをレニーは楽しそうに聞きます。この夢を語るシーンが劇中に何度も出てきます。ある意味、伏線となっており、最後にそれが何倍にもなって返ってきます。

どの映画にもよく出てくる台詞で「女はトラブルの元だ」今回もその定義が当てはまります。

※U-NEXTで鑑賞可。

 

 

※追記

国や福祉制度、人間関係は違いますが、3作品に共通するところがあります。それは「夢と現実のギャップ」です。彼らが健常者になったら、結婚したら、自分達で農場を開いたら、、、親や身近な人達はそのような夢、妄想を抱きます。しかし、現実はそんなに甘くはありません。生きずらい世の中を日々生きるだけです。ある意味、それがベストな状態なのかもしれません。