倉野くんが死んでから数日で、みんなの話題から消えていったのは彼の印象があまりにも薄かったからではないのだ。

人の死に対して、非常に悲しむのもほんの一時的なものであり、そのほんの一時期を過ぎてしまえば誰も気に留めることなどないのだ。と、私は実感させられた。そう、倉野くんのときと同様、田村くんの死の話題もいつの間にか消えていた。私は、他の人とは違う境遇なので、みんなのようにいつもどおりを過ごすことができずに、どこかそわそわしていた。別に嫌いじゃない・・・むしろいいやつだと思っていた。サッカーで焼けた黒い肌が今もなお、目に映る・・・


私はまた、チョコレートを買うために学校近くのいつものコンビニに寄った。するとそこにはヤングマガジンを立ち読みする白い横顔が・・・平井くんだ。私は今は愛しの赤井くんに恋する以前は、いわゆるイケメンと言われている平井くんに恋をしていたのだ。っていうか告白もした。でも返事は・・・・・・。

その後なんとなく気まずいため、一度も接触していなかったけど・・・コンビニ客は私と平井くんの二人だけだった。私がじろじろと平井くんの様子を見ながらチョコレート選びをしていると、視線に気づいたのか平井くんは私の方を振り向き、一瞬目が合った。あー!気まずいー、脂汗だらだらで適当なチョコレートを手にとってレジに向かう。そしてそそくさとその店を出て行った。

家に帰ってチョコレートやけ食いして、さらにさっき脂汗かいたのが悪かったのか、右ほほにまた白いニキビが出来た。何度も経験しもう慣れっこだったので、潰すのにまったく抵抗がなかった。ほとんど後も残らず、完璧な出来だ。コレは将来美容関係進めるかな・・・とか考えながら眠りについた。

次の日。朝礼で校長先生から、平井くんが昨晩亡くなったと聞かされた。


最近何かと同級生が死ぬな・・・と思った。どれも私と関係がある人・・・しかもどの日も、私がニキビを潰す日だと・・・私は気づき始めていた。何か法則性があると考えた私は、家に帰って個人個人が自分とどのような関係かリストアップしてみた。


・倉野くん…私のことが好きだったっぽい。あごニキビを潰した日に死亡。

・田村くん…告白されたが私はフった。左ほほニキビを潰した日に死亡。

・平井くん…私が告白しフられた。右ほほニキビを潰した日に死亡。



すべて恋愛関係に関する関係・・・そしてニキビ・・・まさか。あの、「思い・思われ・フリ・フラレ」ってやつ?倉野くんは・・・私を好きになった・・・つまり思われ・・・思われニキビは・・・「あご」!な、なんということだ・・・田村くんと平井くんもこの法則にしたがって死んでいっている・・・。さらにニキビの特徴も、一つ一つ、個人個人に合わせてありことにも気づいた。つまり、


・倉野くん…友達の評判「キモイ」→膿んだニキビ

・田村くん…サッカーで焼けた黒い肌→黒ニキビ

・平井くん…色白の肌→白ニキビ



ということだった。つまり、次できるであろう額の・・・「思いニキビ」。コレを潰してしまうときっと赤井くんを殺してしまうのだろう・・・そんなことは絶対にさせない。いままで毎日のように買っていたチョコレート生活をやめて、健全なる食生活の元過ごしていた。ただそれがストレスとなって、またニキビが出来てしまった。ただ・・・今回できた場所が額ではなかった。特徴は大きくもない赤いニキビ。赤ってどんなんだよ。髪の色?そんな花道みたいな人は回りにいないよ。

予想が外れて、ただの偶然に過ぎないんだろうなと思って安心しつつも、そのニキビは一応潰さないように努力した。触りたくなっても、人の命が関わってくると考えるとゾッとして衝動を抑えることができた。


そしてニキビができて数日後のある体育の時間。私の苦手なバスケットボールで、今日は保健室行って休みたいなと思ったけれど、このまま休んでしまうと体育の単位が足りなくなって進級できなくなっちゃうので仕方なく出席。ただのバスケだけならなんとかなるものの、となりで男子がバレーとやっていてボールがこっちまで飛んでくるかどうか考えると怖かった。

でも今日は進級できるかどうかが関わってくる大事な授業。ここでまじめにやって、無事に進級しようと思い、バスケに集中し始めたその瞬間でした。

「佳子!!危ない!!!!」

朱美の声が体育館に響き渡る。その時目の前からは白いボール飛んできて・・・・・・。

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佳子が死んで、もう一週間になる。
私はあの時、もう少しだけ早くに飛んでくるボールに気づいてあげればよかったと思っている。佳子はそのボールを顔面の真正面から受け、折れた鼻や真っ赤なボール跡をつけたその顔は床にそのまま落ちていった・・・。不気味で鈍い音を立てて・・・

せっかく佳子の顔の鼻の上にニキビ・・・いや、両思いニキビができて、占いなんてあんまり信じないほうだけど「それって両思いニキビってやつじゃない?ホントよかったね!」って言ってあげたかったのに・・・

手元が狂ったのか、間違って佳子に向かってスパイクした彼はその佳子の助かる見込みのない姿を見て気が狂ったかのように叫びまわり、屋上へと走っていった。校庭から先生たちが、そんなことはやめろ!とか、君の責任じゃない!どうかそこからはなれなさい!と言って彼を説得させようとしていた。しかし彼は、「俺はあいつの後を追うんだ・・・!」と言い残し、裸足でそこから跳躍をし、重力に逆らうことなくそのまま・・・・・・。
私はチョコレートが大好きだ。


そのおかげなのか、それとも年齢的なものなのかはよくわからなかったけど、ニキビ体質ではあった。正直コンプレックスでもあった。多少のニキビならメイクでなんとかごまかせることができたけど、悪い生活習慣を送っていたためか、あごに大きくて赤いニキビができてしまった。

これじゃあ愛しの赤井くんに見せる顔がない!そう思って私は思い切ってそのニキビを潰すことにした。潰してみるととなかから膿んで黄色い気持ち悪い液体が出てきた。私はそれをティッシュで処理し、この程度なら目立たないなと思うと安心して眠りについた。

次の日。登校中、私は昨日潰したニキビがなんとなく気になっていた。触ると痛いとわかっていても、思わず触ってしまう口内炎みたいに・・・。なんとなくうずく感じがするので、指先で思わずツンツンやってしまうのだ。

教室についてカバンを下ろすと、なんだかみんな騒がしい。先生も廊下を走り回っている。なんなんだろうと思って、友達に何がおきたのか聞いてみた。

「隣のクラスの倉野くん、昨日の夜亡くなったんだって。」

倉野くんと言えば・・・風貌とかは悪いけどオタクみたいで、性格も根暗だったらしい・・・休み時間はライトノベルを読んでいて、昼ご飯も一人でぽつんと食べているのが印象的だった。それに倉野くんからはラブレターを一度だけもらったことがある・・・部活終わりの放課後、下駄箱をあけてみると一通の手紙が入っていた。手紙が入っている白い封筒の裏には「2-D倉野」と書いてあった。部活友達の朱美からは「あの倉野くん?やめときなよ佳子・・・正直キモイじゃんあいつ・・・」と言い、私からそれを奪い取ってその場でビリビリに破いてゴミ箱に捨ててしまった。

こんなすぐ死んじゃうなんて・・・手紙の内容くらい読んであげればよかったかな。そう思うのも倉野くんが死んでから数日間だけだった。ただでさえ影の薄い人だったので、友達の話題からその名前が消えるのは割合早かった。


そんなことも忘れて私はまたいつもの日常を過ごしていた。ただ一つだけ違っていたのは、人生で初めて告白されたことだった。その人の名前はサッカー部に所属している田村くん。同じクラスで、以前は隣の席にもなったことがあった。その時に私と田村くんは割と仲良く接しており、メアド交換もした。そして数ヶ月、彼と何度かメールをしたりした。そして先日、告白をされた。

しかし私には愛しの赤井くんがいる・・・そのことを話すと田村くんはすぐ諦めるように私の前から立ち去っていった。その後、数日間学校を休んだけれどまた元気に学校に来れるようになって私は安心をした。安心すると、なんだかお腹がすいてきたので学校帰りに数種類のチョコレートを買って帰った。その日のうちに食べてしまったのが悪かったのか、次の日にはまた目立つニキビが左ほほにできた。いわゆる黒ニキビと言われるもので、大して大きくはなかったが際立って目立っていたのでそれもまた潰した。ニキビを潰すのはよくないとわかっていても、それはマクドナルドに行ってセットを頼んだのにフライドポテトは食べるなと言っているようなものなので無理なのである。

次の日。昨日田村くんが死んだことを先生から知らされる。
ハイネタ切れ~過去ログサルベージ。


まぁただサルベージするだけじゃつまらないからね、過去のネタを書き直すという新しい趣向でせめて攻めまくってみようと思う。で、書き直してみたらまったく違うものが出来てしまった。まぁそれはそれでありかな。

っていうことで、ちょうど2年前の3月のテキスト。「進研ゼミ」から「真剣」

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「真剣」

こんなはずじゃあなかった。どこかで何か僕の中の歯車が狂っただけなんだ・・・


先日、「個人的能力、学習力を数値化した薄っぺらな社会適応能力が記してある学生の敵」と誉れ高い通知表が僕の手元に帰ってきました。

中を開いてみると、まさかの数字のオンパレード。どうせ教育側はテストでしか人間を見てくれないんだ・・・テスト以外も重要ですよとか言っているのは建前でしかないんだよな。たしかに僕はテストの成績は最悪でしたが、日ごろの授業はもうそれはそれは大変まじめに、授業料を一円も無駄にしない受け方をしていたっていうのに・・・でもそんなやる気なんかより、必要なものはちゃんと数字を残すってことですよね。野球の選手だっていくら練習頑張っても、いくら2軍で活躍したからって1軍でまったく数字を残さなければ即クビ。さらには、ちょっと活躍できなかったからと言って中村紀のようにすぐに捨てられる現実。やってられません。親に見えたりなんかしたら、背番号が三桁になるだけじゃすまない気がするんだ・・・


人間の価値とはやはり数字なんだな・・・人間なんかやめたい。僕は思考を持たないで本能のみで生きていく昆虫か何かになりたい・・・そう思っていると、クラスのアイドル的存在2年連続一位に輝いているにもかかわらず、僕と幼馴染だっていうあの「実花ちゃん」の表情はどこかうれしそうだった。

僕「どうしたんだい?実花ちゃん。」

実花「あ、nebe。見てみてーこの優秀な私の優秀な成績を!」

僕の成績が低いことを知っているかのように、実花ちゃんは嫌味たらしく通知表を見せ付けてきた。


僕「ん・・・んん!?」

僕は思わず声をあげて驚いた。ご、合計40という驚くべき数字。以前は僕と実花ちゃんはテスト前になると一緒に図書館等へ行って、わからないところを教えてあげると言うのは定期イベントであった。それが楽しみの一つでもあったので、僕はテストという響きを聞くとなんだかわくわくしていた。それなのに、今現在の僕の通知表は合計30・・・いつの間に・・・いつの間に「10」も数字が離れてしまったのか。10と言う数字。口に出してみると別にたいしたことのないように思えるそれだが、勉強時間に換算すれば何百・・・いや何千時間にも相当すると思われる・・・

僕は、自分の無力さに打ちひしがれて表情を落とした。少ない握力で、力いっぱい荷繰りこぶしを作った。下唇を噛みながら。

実花「アレ?もしかして・・・気にしてた、成績のこと・・・」

僕「・・・うん・・・」

実花「ごめんね。・・・nebeって進研ゼミとか知ってる?」

僕「あ、うん。小学校の頃やってたよ。」


グシャグシャになった通知表を持って家路につく僕。家に入ると同時に、母親の笑みがこぼれていた。

母「おかえり。通知表見せて御覧なさい。」

僕「・・・(スッ)」

しわだらけの通知表を紐解くように、折り目を開いて上から順番に視線が流れていった。

母「・・・フフフ、じゃあ・・・塾行きましょうねぇ~!」

僕「・・・ハァ」

思わずため息をもらしつつ、僕は自分の部屋に閉じこもっていた。何もする気がおきなかった。いままで上からの視線で優越感に浸って勉強なんぞ教えていた人が、今度は逆に僕より成績がよくなるという・・・そしてその人から成績の心配をされるという・・・なんたる屈辱!僕はゲームする気もマンガを読む気すら失せていた。ふと部屋を見回してみると、机の上に手紙が置いてあった。進研ゼミからだ。

僕「えー何々。『コレさえやれば絶対成績アップ!』ねぇ~。」

僕は昼間の実花ちゃんの言葉を思い出していた。

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実花「もう進研ゼミ最高。なんていったって赤ペン先生。なんで私のわからないところ知ってるの!?っていうくらいピンポイントで教えてくれるんだ。それにあの、『スーパー勉強できるクン』!もうコレなんかね、ゲーム感覚で勉強できるってやつだよ!nebe勉強嫌いでしょ?でもゲームは好き。好きと嫌いが合わさると・・・普通!たとえるなら!嫌いなキャベツの千切りを食べるためにあらかじめ味の濃い肉を食べておくと、肉の味が勝ってキャベツ独特の臭みをとってなんなく食べられることと一緒!テレビとか見ていてCMの間とかにも何問か出来るっていうすぐれものよぉー。どう、進研ゼミ。やってみよ?」

僕「はぁ・・・」

******************************

僕「昼間の実花ちゃんはどこか狂気かかった感じがしたなぁ。」

封を開けて、中身のマンガを読んでみる。ほうほう、主人公は部活でなかなかうまくいかない、けど勉強もいまいち・・・そんなところに成績の良いあの女の子が一声かけてくれる。「進研ゼミのおかげなのよ。」そして主人公も進研ゼミをはじめて、で、部活もなんかうまくいくようになって、そしたらあの女のことの距離も狭まっていく・・・って王道だなー。なんていう王道。でも、そういうところ。僕は嫌いじゃないよ。

僕「ママーン!塾なんかよりもさー、進研ゼミやりたいよー。」

母「何?自分の口臭が気になるの?だったらちょっと一服してきなさい。」

僕「口臭に拍車かけてるよママン!違う違う!やりたいんですよねコレ。お願い!」

母「どうせ小学校のときみたいに、付録だけもらって教材はやらないんでしょ?頑張りなさいよ。」

僕「なんていいお母さんだ!」


ということで、父とひと悶着はあったみたいなんだけど進研ゼミに入会することが出来た僕。実花ちゃんにそれを報告すると、さっそく二人で「スーパー勉強できるクン」を使って勉強という名のストロベリってる。学校でもそう。バナナを目前にしたオラウータンの如き目をした男子を横目に。

そして僕は森林伐採の際に森の中に響き渡るメキメキという音を鳴らしながら、勉強の力をつけていった。今では通知表の合計が40あたりをうろうろするほどの成績に。数字の中の世界も、なんてことないな。それもこれも全部実花ちゃんのおかげなんだ・・・実花ちゃん・・・

僕「あーあ、落ちちゃった・・・」

実花「え?また成績落ちたの~?もう、ちゃんとゼミやってるの?」

僕「いやぁ、それは違う。僕は恋に落ちたんだよ、君のね。」

実花「え・・・?」

夕日に染まる、実花ちゃんの顔はそれ以上にどこか赤くなっていた。視線を下げる実花ちゃん。僕は彼女の両肩を掴んだ。思った以上に硬い肩をしていた。

実花「フフ・・・フフフフフ・・・」

僕「・・・ん?美香ちゃん?」

実花「フフフ・・・フフフハハハハハハーッ!!」

彼女は豹変した。いままでの穏やかな表情の女の子は、そこにはいなかった。美香ちゃんじゃない美香ちゃんの肩から僕は手を離した・・・

実花「貴様・・・今まで何回「スーパー勉強できるクン」をいじった?」

僕「え・・・?いや入会してほぼ毎日だから・・・わかんない。数えてないし・・・」

実花「『スーパー勉強できるクン』には・・・背景にちょっとしたサブミナル効果が施してあるんだ・・・そう・・・進研ゼミの中毒になるためにな!!!」

僕「な・・・!なんだって!?」

僕は汗だらけになった手でこぶしを握った・・・ちょうど昨日の夕方からスーパー勉強できるクンを触っていなかった。僕は肩にかけていたカバンから『スーパー勉強できるクン』取り出して・・・プレイをしはじめていた・・・

僕「うおおおおおおおおお!!!勉強し足りないッ!し足りないッ!!」

実花「もう抜け出すことは・・・「不可能」・・・毎号ついてくる新しいソフトがしたくなって仕方なくなることだろうよ・・・フフ、この体ともおさらばだな・・・」


その場でそいつは、美香ちゃんの化けの皮脱ぎ始めていた。マスコット人形のように、美香ちゃんを装っていたのだろう・・・しかしそれは推測の話。僕は実花ちゃんの本当の正体を見ることが出来なかった。なぜなら僕は「スーパー勉強できるクン」から目を離せなかったからだ・・・

~おわり~