こんばんは。

 

新留です。

 

 

『二月の勝者』という漫画をご存知ですか?

 

中学受験を題材にした漫画で、受験をする家庭内でどんなドラマが起こるのか、中学受験対策を行っている塾側ではどんなことを考えているのか、などがリアルに描かれていておもしろく、

 

NHK「おはよう日本」やフジテレビ「ノンストップ」などでも取り上げられたりした人気の作品です。

 

ドラマにもなっていましたよね。

 

X(旧Twitter)などを見ていると、発売のたびに内容に一喜一憂している方も多く、中学受験をする保護者さんのバイブル的な扱いになっているようです。

 

 

僕自身も出るたびに買っているのですが、読んでいたところ、たしかに! と思ったセリフがありました。

 

 

この漫画の主人公は、東京の中学トップ校の合格者の6割を輩出するという「フェニックス小学部」の元・最上位クラス担当だった黒木蔵人先生。

 

その輝かしい経歴を捨て、前年、東京の御三家に合格した子がいなかった「桜花ゼミナール」という塾の校長になるのですが、

 

新任の女性の先生が、その合格請負人である黒木先生に、

 

 

「あの子達を合格させるために今の私にできることを教えてください」

 

 

と尋ねます。

 

そこでの黒木先生の答えがこうでした。

 

 

「人にただ「答え」を教えてもらっているうちは「学習」とは呼べない」

 

「ジャイアントキリング(本来はスポーツなどで使われる「大番狂わせ」の意味。この漫画内では逆転合格などの意味)を成し得る可能性。それは、『自分の頭で考えているか』」

 

 

自分の頭で考えている子は、ジャイアントキリングをする可能性がある。

 

わからないなりにでも、質問に対して、自分なりの考えを模索しているような子は「思考」しているのでいいけど、返事だけで済ませているような子は「思考」していない場合が多い。

 

子どもに考えさせるような授業をすること、考える子を育てていくことが大事なんだというようなことをいっていたのですね。

 

ほんとにそうだよねと思いながら読んでいました。

 

 

受動的に授業を受けているだけ、ノートを写しているだけでは得られるものは少ないです。

 

「アクティブ・ラーニング」という言葉が知られるようになりましたが、

 

能動的に参加するような授業でないと、自分で学んだことや考えたことを発話したり書いたりして考えないと、「わかった気」になってしまいます。

 

そして、「わかる」と「できる」の間にはものすごい差があるので、

 

何となくわかったところで、それを適切にくり返さないと、「できる」という段階にはなかなか行けません。

 

発話してもらったり、書いてもらったりして、きちんと考えているのか、を確認してあげることが大事なんですよね。

 

 

子どもたちに授業中に質問をすると、中には、すぐに「わからない」、「できない」という子がいます。

 

間違えること、自分ができないとバレることを恐れるマインドセット(「Fixed Mindset」と言います)になってしまっている子も多いですし、

 

自信がなく、心理的に最初からできないと思い込んでしまう子もいます。

 

「考える」ということを面倒くさがる、教えられることに慣れ、自分で考えないクセがついている子もいます。

 

 

でも、「できない」というのは、「できるまでやっていない」というだけだったりするんですよね。

 

そして、やっているというときでも、そのやり方が、雑になってしまっていることも多いです。

 

 

考えること。

 

そして、小学生でも中学年以降は、論理的な思考ができるようになってくるので、やったことがきちんと身になるよう、脳にとって適切な学び方、考え方でやっていくことが大事です。

 

 

人間の脳が何かを習得するときには、

 

 

①脳内につながりをつくる

 

②くり返す

 

③感覚を身につける

 

 

という3つのステップを踏むのですが、やり方がまずいと、やっているのになかなかできないという残念なことになってしまいます。

 

まずは、全体像をつかみ、そのスキルを構成する細かい技術を知る。

 

そして、回路をつくるため、「正確さ」を重視し、一つひとつ「丁寧に」マネをしてみる。

 

この際に心がけておくのは、

 

 

「どれだけ早くできるかではなく、どれだけ遅く正確にできるか」。

 

 

この段階で適当なことをすれば、回路ができないので、「できている」と「できていない」の違いが認識できません。

 

天才研究の第一人者であるアンダース・エリクソン教授の言葉を借りると、

 

 

「能力の差は練習の差」

 

「上達しないのは生まれつき才能がないためではない。正しい方法で練習していないからだ」

 

 

なのですね。

 

退屈さを感じるかもしれませんが、この段階では、ペースを落とし、じっくりと一つひとつの動作を身につけていくことが大切です。

 

 

次に「くり返し」。

 

ただし、「たくさんやらせる」のとは違っていて、太極拳のようなゆっくとした動き、「正確さ」が大事です。

 

そして、細かいことを意識しないといけないので、なかなか疲れます。時間的にも、1日でそれができるのは3時間ぐらいが限界です。

 

そのくり返しを経て、違うやり方をしたときに、「あれ? なんか違う」、「気持ち悪い」と感じる感覚を身につけていきます。

 

子どもたちを見ていると、この、「遅く正確に」、「じっくりとくり返す」のが苦手な子が多いのですよね。

 

ぱっと目を離すと、雑に「あ〜考えてないな」と一目でわかるやり方でやっています(笑)

 

「無理」、「わからない」といって考えることから逃げようとする子もいます。

 

でも、わからないのではなく、わかろうとしていないだけで、一つひとつ、「次はどうするんだっけ?」といっしょにやってもらうと、きちんとできたりします。

 

 

先日も、算数は苦手と決めつけ、文章題を最初から「わからない」と考えていない子に、一つひとつプロセスを確認しながらやっていってもらうと、しっかりと、できていました。

 

本人も、「あれ、できたやん……」というような感じでしたが、やればできることってたくさんあるんですよね。

 

考えることから逃げず、また、簡単に「ムリ」、「苦手」、「できない」なんて、自分の可能性にフタをしないでほしいなって思います。

 

 

そして、正しい勉強のやり方というのはあるし、正しい考え方というのもあるのでそれらを今のうちから身につけてほしい。

 

「試行錯誤する」というのは、「てきとうにやる」のとは違います。

 

 

イギリスの心理学者アラン・バドリーはいいます。

 

 

「勉強しようという意思は、適切な学習法の利用があってこそ役立つ」

 

 

『二月の勝者』の黒木先生のセリフを思い出すたびに、

 

子どもたちが自分の頭で考える子になるよう、

 

適切な考え方と学び方を身につけてもらえるように、意識してやっていかないとなと思うのでした。