活躍が非常に短命だった船で、この船を建造している途中に会社が競合していた両備国際フェリーに売却され、売却先の両備国際フェリーと航路が統合され存続航路が池田~高松航路に決まった。
しかも存続航路もこの船とほぼ同時進行で新造船を建造しており、この船の活躍の場は先行きの全く読めない不透明な状況で就航した。
結果的には約1年前に運航を終了し草壁~高松航路には半年も就航していない、非常に短い活躍となった。
このような不運な環境の中で就航した新造旅客船は、日本の旅客船史上でも非常に稀なケースではなかろうか?と勝手に思う。
小豆島へ就航している定期旅客フェリーとしては珍しく九州の造船所で建造されており、他の小豆島へ就航している定期船とは外観からして一風変わった造りとなっている。
客室も競合の激しい中で、少しでも利用者にくつろいでもらいつつ航海を楽しんでいただけるよう随所に工夫が施されている。
寛ぎながら前面展望が楽しめるように工夫された上等客室は結果就航時から差額無しで開放されており、誰でも利用できるようになっていた。
また、向かい合わせになっているシートにはご年配や女性の利用者にやさしいシートヒーターを備え付けた座席もあり、海際の座席には海へ向けて座席と机を配置した「ペアシート」も設けられていた。
デッキに出るとまず自動販売機はシンボルカラーの「ブルー」一色に塗られており、その自動販売機の横にある階段を上がってフライングデッキに上がると円形に配置されたベンチがあり、先代の「ブルーライン」にもあった《更に上段の展望フライングデッキ》もお約束のように造られていた!
ただし先代のようにブリッジ上部ではなくて、船員室後方へ設置されており航海中に味わえるダイナミックさが半減してしまったように勝手に思う…
この展望フライングデッキがこの船の中途半端さを見事に物語っているように思え、どうやら先代があまりにも立派な船だったためにそれを超える船を造ることができなかったようだ。
当然先代の時とは違ってバリアフリー適合の問題や材料高騰による建造船価の問題もあって大変だったとは思うものの、客室の装備などにも統一感やテーマ性に欠け、ただ「お客様に便利だと思うもの」を思いついたように付けていった感が否めない…
裏を返せば、先代が「良く出来すぎた」船だったからなのかもしれないが、生活航路の側面を持ちつつも観光路線でもあるのでやはり遊び心も少しは必要だったのではないかと勝手に思う。
次の活躍の場が早く見つかることを心からご祈念申し上げます…