悠ちゃんが帰国して、『おかえりパーティー』をして、早2ヶ月……。
いよいよ悠ちゃん、金・土曜日、非常勤医師として、クリニックに勤務する日。
パパさんのお願い通り、工務店のおじちゃんはテキパキと段取りして、レイアウトを考え、工事中も診療出来るようにしてくれて、スゴく助かった✨
今回の工事で備品棚を奥の部屋へ移し、広い診察室を仕切って1診・2診を作ってくれた。
そのお陰で、航ちゃんの言う『結のお仕置き部屋』【通称:おサルさんのお部屋】が無くなった(笑)チョキ
外からは2つの部屋だけど、診察室から奥は自由に行き来が出来る仕組み。
この改装を機に航ちゃんが私と受付の2人、お揃いのナースウェアを用意してくれた🎵
白でピンクのラインが入った、可愛いの❤️
ー悠ちゃん初勤務日ー

「おはよう~✨朝礼始めるよ~☺️
紹介します。少し前、伝えた非常勤医師の件。今日からとりあえず、金曜と土曜、クリニックに来てもらいます、僕の弟です。
悠真、挨拶を」
航ちゃんが今日も爽やかな笑顔で朝礼を始めて、悠ちゃんを紹介した。

「おはようございます。はじめまして。
櫻井 悠真です。初期臨床研修の後、すぐにドイツへ渡り手術の腕を磨いていました。専門は外科です。この度、臨床研究をする為に帰国して大学院の研究科に入学しました。特技は縫合です🎵
よろしくお願いします✨」
これまた悠ちゃんも航ちゃんに負けない爽やか✨笑顔で挨拶をして、志保ちゃん達も自己紹介をしあった。
あらあら、志保ちゃんがちょびっと『ラブ』じゃない?(笑)
何て目の保養になるクリニックなんだろう❤️

「基本2人共、内科も外科も診れるけど、混んでなければ、なるべく外科は悠真に回して。しばらくは親御さんにも顔と腕前を覚えてもらうためにね(笑)
結も外科の診療補助を覚えないといけないから、なるべく悠真に付いて。以上、今日も1日、笑顔でよろしくお願いします✨」と航ちゃんが言って、1診(コアラさんのお部屋)に入っていった。
悠ちゃんは2診(ライオンさんのお部屋)に入り、志保ちゃんと有紀ちゃんが受付で上手く振り分けてくれた。
今日はそんなに忙しくもなく、穏やかに半日が過ぎていった。

ー午前診終了後ー
片付けと備品チェックを終えて、報告に行くと、航ちゃんと悠ちゃんが話し込んでいた…
「結ちゃん?まずは外科治療に必要な器具や備品を覚えようか?兄貴に教えてもらったりした?」
今日、ケガで来院した子の処置がわからなくて、ワタワタした事を話してたみたい。

「う~ん。名前言われてもわかんない。
治療に必要な器具や備品を航ちゃんが用意して、トレーに並べてあるのを『次それ、右のやつ』って言われて渡す感じ…」

「結は看護師じゃないから、備品や器具名を言ってもわからないよ(笑)」

「兄貴が教えないのと、結ちゃんが覚えようとしないからだ。看護師資格が無くても、医療従事者なら覚えておくに越したことはない。
兄貴💢、結ちゃんを甘やかすな」
ちょっと厳しく言われて、泣きそうになっちゃった…。

「(笑)厳しいなぁ……悠真は」

「これくらいは当然だ」
悠ちゃんは外科の備品棚から色々と取り出し、トレーに並べて持ってきた。

ガーゼテーピングピンセット持針器外科剪刀‥ハサミの事ね。抜糸剪刀、こっちが3-0、これが2-0縫合糸…太さが違う。
これが縫合テープ生食…生理食塩水の事。
傷口を洗ったりするのに使う。
あと麻酔薬注射器外用局所麻酔クリーム…とりあえず、クリニックで、よく使うのはこんなもんか…ちなみに、入れ物はトレーじゃなくてバットね。
最後に大切な事。ここは小児科なんだ。
小さい子供達が痛い思いや辛い所。注射器やハサミがバットに入れられて、自分の目の前に来たらどう思う?
『何するの!?』って思うよね?不安になる。
そう思わせないために、必ずバットには専用ガーゼを掛けて、中身が見えないようにして持ってきてほしい。クリニックには置いてないって兄貴が言ってたから、購入しておいた。
結ちゃん、やってる間に覚えるけど、自分でもちゃんと覚える努力するんだよ?俺は兄貴みたいに甘やかしたりしない。
父さんと同じく、スパルタだから覚えといて」

「……は…ぃ……ショボーン

「悠真、最初からそんなに結にプレッシャー掛けるなよ。仕事を教えるのは構わないけど(笑)」

「わかってる」
悠ちゃんはトレーの中身を元の場所に片付けに行った。……あ、トレーじゃないんだ…何だっけ?あぁ……バット(?)‥無理よぅ‥覚えるなんて。

それから毎週悠ちゃんのいる日は、午前診終了後に、悠ちゃんの外科診療補助教育が行われた…💧

ー数週間後の土曜日ー
「…………兄貴…💦今まで外科の患者は来なかったのか?何で結ちゃんはこんなに覚えが悪いんだ?💢俺が居ない時も、兄貴がしっかり教えてくれよ?」

(そんなにハッキリ言わなくてもガーン)……
そう思いながら、悠ちゃんの作ったテストとにらめっこしている。
そんな私を航ちゃんと悠ちゃんは腕組みしながら上から見下ろして、ヒソヒソ話し合っている。

「来ない訳はないだろ?(笑)別に、俺1人で準備して、処置してただけだけど?」

「兄貴…1つ許可をくれないかな?結ちゃんにスパルタで教え込んでいい?ほら、父さんみたいに…お…り…たた……て」

「フフ(笑)その方が結も真剣になるかな?俺からも未だにやられてるから、別に構わ…けど、ほどほど…してく…よ?」

何?何をヒソヒソ言ってるの?聞こえそうで聞こえないんだけど…?
「結ちゃん!💢集中!」
悠ちゃんにプリントを指でトントンされて怒られた😢⤵️⤵️

「はぃぃ…💦ごめんなさい😢」
集中したところで、わかんないんだけど…💧

「悠ちゃん‥も、わかんない…」
しばらくしてギブアップした私は、テスト用紙を悠ちゃんに渡した。
(フゥゥ…)テスト用紙を見た悠ちゃんはあからさまに、1つため息をついて、
「結ちゃん、俺だって結ちゃんにオペ看みたいに出来るようになれとは言わない。
だけど、とりあえず、器具や備品の名前を覚えて、言われたモノを正しく揃えられるようになろうね☺️その為には、鬼になる事も必要だと思うんだ。
さて、まだ半分しか見れてないけど、もう6つ間違いがあるよ。兄貴には許可はもらったから、ちょっと立って」
(?)わからずに椅子から立ち上がると、悠ちゃんは引き出しから定規📏を取り出した。
「えぇ…!?あ…の…」
航ちゃんを見ても、『仕方ないね…(笑)』って感じで苦笑いしてる。
反論する間もなく、悠ちゃんに腰を押さえられ、机に手をついてお尻を突き出す格好にされた。
「とりあえず、6問間違えてるから、6発ね」
バッチーン❗‥バッチーン❗‥バシーン❗‥
「ひ!っぅぅ…いたいぃ…よぅ…💦」
悠ちゃんの手にはステンレスの50㎝定規が握られている。
「あと3つガマン!💢」
バッチィンバッチィンバッチィィン
さすがにナースズボンもパンツも下ろされはしなかったけど、その分、思いっきり叩かれた。
「ひぃ…ん…💦酷…💧」

「結?僕は結が覚える努力をしていないとは思わないよ。僕も悠真も、結がそんな子じゃない事はよく知ってる。もちろん、結が暗記は大の苦手だって事も知ってる。結は、ただ名前を覚えようとするからなかなか覚えられないんだ。
例えば、『生食とガーゼ』、『麻酔と注射器と麻酔クリーム』みたいなセットで覚えると、名前だけじゃなく、用意するモノを言われた時、全部を聞かなくても、ある程度は準備出来るようになる(笑)」

「ぅん…わかったぁ…えー💦」
お尻を擦りながら、ちょっと拗ねて言った。
すると、テストの採点を終えた悠ちゃんから
恐怖の言葉が……。

「結ちゃん、残念だけどね、後半の問題、
10問中、8問間違えてるね…(笑)さて‥」

「ゃ‥ゃだ…悠ちゃん…💦ね、航ちゃん…」

「┐(´∀`)┌結?(笑)今日のテストは悠真が出したテストだから、悠真にフォローとお仕置きされなさい。諦めなニヤニヤ
航ちゃんに助けを求めてみても、『諦めな』の一言で部屋を出てしまった……。

「結ちゃん、おいで。フォローしてあげるから」
呼ばれて付いていった所は備品棚。
「はい、この問題。ガーゼを止めるのは…?」
ガーゼのある段を指差して答えに導いてくれる。
「……テー…ピング?」

「そう。縫合テープじゃない。だから、ガーゼの横にテーピングが置いてある。縫合テープは縫合糸の所。縫う程でもない傷口を塞ぐのに使う。
こうやって、一緒に使うものはなるべく近くに置くようにしてるでしょ?はい、お尻」
バッチィン❗「ひっ!」
「はい次!」…バッチィン❗「いたぁ…」
「次の問題…」バッチィィン❗…「ぃ!ぅ…」
悠ちゃんは、1つ1つ問題のフォローをしては、定規でお尻を叩いて、またフォローをして……きっちり8問全部のフォローをして、8発+途中で『もぅやだ!💧』ってお尻を庇って座り込んだから、おまけで2発お尻を叩かれた。

「結ちゃん、今日のまとめプリントを渡しておくから、来週迄にしっかり覚えてくるんだよ?」

「はぁい……ショボーン

「じゃ、お疲れ様✨」
悠ちゃんはそう言って、備品室をあとにした。

しばらく、航ちゃんの顔も見たくなくて、ライオンさんの部屋のベッドに座って、涙を堪えてた…💧
(私は覚えが悪い…だから、悠ちゃんの診察の足手まといになるんだ……航ちゃんもきっとそう思ってるんだ……)そう考えると、涙が止まらなくなった。
少し泣いて、航ちゃんのいるコアラさんの部屋へ行った。航ちゃんはパソコンに向かっていた。
「…航ちゃん、終わった…もぅ、帰るっ…!」
航ちゃんはパソコンを閉じて、片付けをして、「(笑)お尻、診てあげようか~?」

ショボーンえーんプンプンいいっ!知らない!バカ💢
言い捨ててコアラさんの部屋を出ようとすると、航ちゃんに腕を掴まれた。
「『バカ』って言っていい事?」
「あ、……ダ、ダメ…💧」
「言ったらどうなるの?」
「航ちゃんに…お尻…叩かれる……」
「だよね?」
航ちゃんは掴んでた腕を引き寄せて、私の腰に手を回してガッチリと捕まえた。
抵抗しても敵うハズもなく、ナースズボンもパンツも下ろされてお尻を見られた。
「……悠真のやつ…服の上からだからって、手加減なしに結構やったな…(笑)」
航ちゃんがお尻の真ん中辺りを横にツッー…と指を滑らせると、
「いっった‥!!💢」
「うん。赤いみみず腫が出来てる。可哀想に」
そう言ってお尻を撫でて同情したのに、
パァンパァンッパァンッパァンッ
パチィンパチィン❗……
パチィンパチィンパァンッ
パッチィィン
叩かれた後だろうが、みみず腫があろうが、
きっちり10回、お尻を叩いて、パンツとズボンを元に戻した。
「はい!おしまい。『バカ』なんていけない言葉使うから、またお仕置きされるんだよ?
さぁ、帰ろうか?駿も園でお迎えを待ってる」

クリニックの裏の鍵を掛けて、小走りに車まで行く航ちゃんを、お尻の痛みをガマンしながら追いかけた。
航ちゃんの車の助手席に、シートとお尻の間に手を入れて、そぅっと乗り込んでクリニックをあとにした…💦

★つづく★