◼️結視点◼️
『…ったく‥無事か? 方向音痴のクセに、
夜にウロウロするからこんな事になるんだ。
でも、迷子になったのは、色々と訳があるみたいだから、明日ゆっくり話をしよう?
とりあえず、今日は帰っておいで。
これ以上、啓祐に迷惑かけるんじゃない』
「……はぃ…航ちゃん…ぁの‥お尻叩く?」
『わからない。どうしてこうなったのか、啓祐からしか聞いてないし。結の口から説明して。でも今日はもう遅いし、お説教もしない。だから、帰っておいで☺️』
「はぃ…ごめんなさい……」
電話を切って、スマホを啓祐君に返すと、
「送るよ」とだけ言って、先に歩き出した。
私は啓祐君の後ろを歩く由美から一歩下がって、お互い無言で歩き出した。
「啓祐、怒ってる…きっと」
由美がポツリと言った一言に、「ごめん」とだけ返して、また無言で歩き続けた。
啓祐君にマンションまで送ってもらったけど、
玄関を開ける勇気がなくて、固まっていたら、
(ガチャリ‥)中から航ちゃんが開けてくれた。
「…ロック解除が鳴ったのに、なかなか入ってこないと思ったら…💧啓祐、また結が迷惑かけたね…ごめんね…」
「いえっ……大丈夫っす。あ、結の荷物、ウチに置いてきたんで、明日、昼前にでも届けます。由美に事情聞いて、それからですけど…」
「わかった。ありがとう。僕もそれまでに、
結から聞いておくよ」
航ちゃんと啓祐君がそう話している間に、私は啓祐君に背中を押され、航ちゃんに腕をとられて、玄関に入れられた。
「結?体も酔いも冷めたでしょ?お風呂入っておいで」
航ちゃんはそう言って、啓祐君と話を続けた。
私は1つ頷いて、お風呂に入りに行った。
お風呂から出ると、航ちゃんはソファに座り、
医学書と資料を片手にビールを呑んでいた。
「こ、航ちゃん…?上がった‥お風呂」
「うん…ほら髪、ちゃんと乾かしなさい。
おいで」
『おいで』と言われ航ちゃんの前に行くと、
何故か正座してしまう私……。刷り込み?(笑)
航ちゃんはそんな私を見て、クスッと笑って、
タオルで髪を乾かしてドライヤーもかけてくれた。正座状態のまま髪を乾かしてもらうと、本当にお説教も無しに『おやすみ』と言われた。
ー翌朝ー
朝食と片付けを済ませると、「結。こっち」
航ちゃんに呼ばれた。(きた……)1つ息を付き、ソファに座る航ちゃんの前に立った。
航ちゃんは、何かを悩んでいるように、顔を伏せ、目頭を押さえている。
((・・?)わからずに突っ立っていると、
「結。座って」航ちゃんはソファの自分の横をポンポンとして、私を呼んだ。
「僕は、結からどっちの事を先に聞こうか迷ってる。結が家を飛び出した件と、迷子になるような事をした件。だけど、迷子の件は由美ちゃんが来てから一緒に聞く事にするよ。
で、昨日、僕が話した事は納得した?」
「納得……わかんない。航ちゃんが、私に相談しないで決めちゃった事は…許せない……でも…お医者さんって仕事だから…納得しなくちゃいけないって…自分の中では思ってる……でも昨日は無理だった…」
航ちゃんは迷いながら1つ1つ、言葉を選んで話す私を、じっと見つめながら、何も言わずに聞いてくれた。
「そっか…(笑)結は納得しないといけないから、納得しようとしてるの?結自身の意志や意見は要らないの?」
「だって…何を言ったって、航ちゃんが決めた事なんだから、変わらないでしょ?だったら、私は諦めて納得するしかないじゃん…💦」
「うん。変わらない。だからこそ僕は、結の気持ち、大切にしたい。結に『今じゃない。まだダメ』ってちゃんとした理由があるなら、考える。僕の選択で結の負担を増やす事はしたくない。何が納得出来ないか、聞かせて?」
「…………(ふぅぅ…💦)航ちゃんが居ないのが、
想像出来ない。駿に何かあったら…とか熱を出したらとか考えたら、不安になる」
「うん…。だから、実家にも協力してもらう。
何かあったら、連絡したらいい。
それに、家に駿と2人きりで居なくてもいいんだよ。父さんに連絡したら、『そう言う事なら、駿を連れてウチに泊まりにおいで』って言ってくれた。結の実家にも聞いてみよう?
僕も、時間を見つけて、病院から電話するよ」
「……うん…。わかった…頑張ってみる…💦
航ちゃんの体の事も心配…忙しくなるから」
「大丈夫☺️週に1回の事だから。それに、元々僕は頑丈に出来てるからね
でも、心配してくれてありがとうね✨」
航ちゃんは私の頭をポンポンして笑った……
「でもね……結…」
(ん?何だろう?)何かを言い掛けた航ちゃんを
不思議そうに見上げた瞬間…
インターホンがなった……。
★つづく★