ー今日は元日ー
「「明けましておめでとうございます🎵」」
「…あけまぃて?パパ、あけまぃてなぁに?」
「駿?朝起きたら『おはよう』、寝る前は
『おやすみなさい』それと『行ってきます』、
『ただいま』…。いっぱい挨拶があるでしょ?
お正月はね、『明けましておめでとうございます』って挨拶するんだよ😃」
「ふぅん。わかった🎵ママ、マ~マ❗あのね、明けまぃておめでとうございます🎵」
小さい駿がペコリンッ🎵とお辞儀しながら
上手にお正月の挨拶をした。
「はい😃明けましておめでとうございます🎵
駿?お正月のお箸、並べてくれる?」
「はぁぁい☺」
駿は今年4歳になる。4月から幼稚園に入る事
が決まった😁
これを期に、結も少しずつ、航一のクリニック
を手伝う事になった。
親子共々、今からドキドキ✨
さて、どうなることやら…(笑)

お雑煮を食べてから、航ちゃんの実家へ…。
皆でお正月のご挨拶をして、航ちゃんパパは
当然、航ちゃんと呑みながら、駿はい~ちゃん
のお膝にスッポリ嵌まって、栗きんとんを
モグモグ食べていると、航ちゃんが
「そうだ、父さん、4月から駿も幼稚園に
行くことになったんだ😃それに合わせて、結も少しずつクリニックに出るって言ってる😃」
「そうか😃結ちゃんもいよいよ助手デビューかぁ😃頑張りなさい」
「はい🎵もぅ、今からドキドキでぇ…💦」
「駿がいるから、もちろん午前中だけね。駿の
入園までに何度かクリニックに出て、仕事に
慣れてもらって、2月末に小学校である、就学前検診に、一緒に来てもらおうと思うんだけど、その間、駿を預かって欲しいんだけど、無理かな?」
「構わないよ。そういうことなら、協力しよう。なぁ、日菜子」
「えぇ。しばらくの間、駿とい~っぱい遊べるのね~😆嬉しい🎵」
航ちゃんは手放しで喜ぶママさんを見て、ほっとする反面、(釘さしとかなきゃな…)と思ったのか、「母さん、あんまり駿を甘やかさないでくれよ?家に帰ってから大変なんだから…💧」
「だぁいじょうぶよ~🎵航一ぃ。駿は賢い子よ。心配しなくても~。なんだったら、お泊まりしてもいいのよ😆駿~🎵」
(はあぁぁ💨…💦)航ちゃんは顔を引きつらせて、ため息をついた。
「(笑)まぁ、航一、いいじゃないか。父さんもいる。駿のワガママが過ぎたら、ちゃんと言い
聞かせるよ。な、駿?いい子にできるよな?」
「うん🎵僕、い~ちゃんといい子する~😁」
航ちゃんは、この孫に甘い2人に苦笑するしかなかった…(笑)


ー数日後 1月6日(土)ー
クリニックの年始診療開始日。
今日は、挨拶も兼ねて、初出勤(?)。
「正式には4月から、診療助手として働いてもらいます。僕の奥さんの結です。遠慮せず、
ビシッバシ!仕事を教えて。駿が幼稚園に行ってる時間だけだけど、コキ使ってくれて構わないからね」

「お世話になります✨結です。
    よろしくお願いします✨」
櫻井こどもクリニックは、航ちゃんとあと受付
に2人の小さなクリニック。今までは、受付の手が空いたときだけ、診療助手の仕事や、クリニックの掃除を受付の2人が分担して手伝ってくれてた。
そんな小さなクリニックでも、やる事や覚える事はいっぱい!
あっという間に半日が過ぎた。
診察時間が終わり、片付けをしてから、航ちゃんから薬や検査キットの場所、診療助手の仕事について細かく説明を受けた。
だけど、私は上の空…。
そう。今日は早速、患者さんの順番を間違えて
呼んじゃって、航ちゃんもアタフタあせる
航ちゃんが知ってる子だったから、パソコン
の名前とその子が違う事に気付いたけれど、
一歩間違えば大変な事になる。
診察が終わった後、お説教されちゃった😢

「今の時期はインフルとアデノウイルスの検査
キットが…結?聞いてる?…ゆ~いさん!?」
「あ、はい!ごめんなさい…もぅ1回、お願い
します…」
「(ハァ‥)結?失敗の事、まだ引きずってる?」
「………💦(コクン)」
「こっちにおいで」
航ちゃんはそう言って、私をインフルエンザ等の感染症だった患者さんが使う、『ぞうさん🐘のお部屋』に連れて行き、ベットに手をつかせた。
「5つね」そう言ってスカートを上げ、パンツ
を下ろし、パチィン❗パチィン❗バチィン❗
バチイィン❗バチイィン❗
と勢いよく叩いて、「はい!おしまい」と言ってパンツを戻した。

「いっっつぅ…💧ごめんなさい…💦」
「確かにアレは結が悪い。もし、僕も気付か
ないまま診察して、その子に薬のアレルギー
があったら?それを見落としたら?
取り返しがつかなくなるね?だから僕はいつも
どうしてると思う?」
「…わからない‥です」
「今日半日、僕の横に付いていて、気付いた事
はない?(フッ)初日だし、緊張もしてるし、わからないか?今回だけ!答えを教えてあげよう。
それはね……」
そう言って航ちゃんが教えてくれた事は、
入ってきた子やその親に、名前の確認をするって事…たったそれだけ。
『○○君?今日はどうした?(笑)』そう聞く事で、子供の緊張も解けるからって。
親も、子供の名前を呼んでもらえるだけで、
『ちゃんと診てくれてる…』って安心して、
家での様子、症状を、より詳しく伝えようとしてくれるんだって。
そう言えば、聴診器を当てる時、喉を診る時、
お腹を触る時…どんな診察をする時も、必ず
その子の名前を呼んでいた気がする。
お薬の説明なんて、子供が聞いてもわからない事でも、ちゃんと子供の目を見て、
『○○ちゃん?今日、先生が出す甘い薬はね…』って、優しく説明してたな…。
『先生のお薬、ちゃんと飲んで、しっかり寝て、早く治そうな🎵』って。

「ねぇ、航ちゃん…薬の事とか、子供が聞いてもわからない事を何で説明するの?薬剤師さんがちゃんと親御さんにするでしょ?」
「もちろんするよ?だけど、子供にはしない。
何に効くどんな味の薬なのかわからない薬を
結は飲みたい?飲みたくないでしょ?
僕の患者さんは、子供達なんだ。その子が納得して薬を飲んで、『治そう』って思わないと、治るものも治らないし、薬も飲んでくれないかもしれない。そう思わない?僕は、薬の飲み方とか難しい説明はしてないでしょ?薬剤師さんみたいに。だけど、飲もうと思ってもらえるように、治そうと思ってもらえるように、話をしているだけ。
さあ、結?答えを聞いた後、結はどうする?
考えてごらん?」
「…。航ちゃんから、次の人の名前を聞いた時…復唱す…る?」
これは看護助手のテキストに載っていた…。
『患者さんを間違えないためにー』って。
基本の事、忘れてた…💧

「正解⭕テキストに載ってただろ?忘れてたな?(笑)」
図星…。何で航ちゃんは看護助手のテキストの
中身、知ってるんだろ…?
そう思って顔をしかめていると、
「結のテスト勉強に付き合ったり、問題集を見てる間に、覚えちゃったよ😃」
そう言って笑われた。

「病院という場所は、大きくても小さくても、
命を扱う場所。だから、受付から診療助手、
ドクター、みんなで一人一人の患者さんを
見なくちゃいけない。患者さんを診察して
診るのはドクターだけど、患者さん一人一人
見るのは、ドクターだけじゃないんだよ。
今度、受付の志保ちゃんと有紀ちゃんを見ててごらん。ウチに来る子はちゃんと覚えてて、入って来たらすぐ、必ず名前を呼んで声を掛けてる。『○○君、ちょっと待っててね』とか『しんどそうだね、○○ちゃん』とかね」

『診る』と『見る』…同じだけど全然違う。
私は診る事は出来ないけど、一人一人をちゃんと見る事は出来る。
辛そうなのか、熱があるのか無いのか、病院や
注射が怖いのか…。
看護助手という仕事は、一人一人を見る仕事。
不安な気持ちに気付いて、寄り添ってあげる
仕事。そう習ったはずだったのに…。
(もう一度、勉強し直しだな…)そう思った。

「結?すぐに完璧にできなくてもいい。仕事
としては初めてなんだし、ブランクだってある。ゆっくりでいいんだよ?(笑)何か失敗したら、その時は僕がちゃんと叱ってあげるからね」
航ちゃんはそう言って笑ってくれた。


ーその日の夜ー
私はクリニックと診療助手の仕事を早く覚える
ため、テキストを引っ張り出し、読み漁った。
幸い、駿はご機嫌で、自分から『い~ちゃん家
お泊まりする~』って言ってくれてるから、
お言葉に甘えて、しばらくお泊まり🎵

「結?まだ起きて、勉強するの?初めから、
そんなに頑張ったら、バテちゃうよ?(笑)」
「うん。大丈夫…💦頑張って早く仕事を覚えなくちゃ…💦今日も航ちゃんの足引っ張ってばっかり…💦病院でまたお尻叩かれたら、ヤダもん…💧」
「(笑)個室が1つ空いてるから『結のお部屋』って書いて、可愛いおサルさんでも貼っとこうか?(笑)ニヤニヤ
と航ちゃんが楽しそうに笑った。
「もぅ!やめてよ!そんな事したら、ホントに
怒るからね~💦!」と頬っぺたをふくらませて拗ねてやった。
「ゴメン、ゴメン!嘘だよ😃じゃ、結が頑張るなら、僕も少し仕事するよ。書斎にいるから、わからないことがあったら、おいでよ」
「うん。わかったぁ🎵」
(最近、航ちゃん、何のお仕事なのかな?難しい顔して、書斎にいることが多い…)
そう思いながら、書斎に向かう航ちゃんを見送って、テキストに目を戻した。


でも、文字ばかりで、疲れている事もあり、
10分程であくびが1つ…(笑)
眠い目を擦りながら、あと何分起きていられる
のでしょうね…😅

40分後…
(そろそろ…かな?)航一は時計を見て、結が
勉強しているであろうリビングへ行った。

(アハハ(笑)やっぱりね…)テーブルには読みかけの
テキストと航一が結に作ったテスト用紙…。
「こんなの‥まだ置いてたんだ…(笑)」
(ん?)航一はルーズリーフに日付と何か書いてあるのを見つけた。
 『1月6日(土)
  クリニックで初仕事!高校生の時とは
  違う、何かもっと責任もって頑張るぞ!っ
  て気分。
  でも‥早速失敗💧して、航ちゃん…いや、
  先生に叱られた…💦
  しっかりしなくちゃ!』
(日記?ゴメン、結。読んじゃった…)
航一はルーズリーフをそっと裏向けて、疲れて
眠った結を起こさないように、抱き上げて、
ベッドに運んだ。
布団をかけて、ポンポンと頭を撫でると、結は
くすぐったそうに少し笑った…。

★おしまい★