期末試験も終わり、後は楽しい春休みを待つばかり…のハズの午後。
土曜日だから、午前中のみの診療が終わったばかりの航ちゃんの所へ、ワクワクしながら会いに行った。
あの貧血の一件以来、両家両親ともに公認の2人は今やお互いの家を行き来する仲になった。

「航ちゃ~ん、いるぅ?」

「コラ。結。私用の時は病院の方から入るんじゃないって何回言えばわかるんだ?」

「はぁい。ごめんなさぁい(笑) それよりね、もう診察終わったでしょ?ランチがてら、どっか行こうよぅ。」

「ダメだ。結。この間言ったやつ見せて。どっか行けるかは、それ見てからだよ。」

そう、それは1週間ほど前のお話…いつもの点滴の針を刺しながら、航ちゃんが聞いてきた。

「結?はい。針刺すよ~。で、試験結果はいつわかるの?」

航ちゃんいわく、結は注射や点滴が嫌いだから、その時だけは体が固まって逃げないから、都合が悪い事聞くのは、針刺してる時がいい―。んだそう。
何度か逃げようと試みるも、『動いたら体の中に入ってる針、折れちゃうよ~』って脅かすから体がカチンコチンになっちゃう。

「うぅ…。来週末には、わかるんじゃないかな…?」
って言いながら、目は泳ぎっぱなし。
そう。もう結果は全部返ってきた。赤点とか散々な結果ってわけでもないけど、平均点に届いてないのがほとんどだし、見せられたもんじゃない。おまけに『通信の試験も受けようとしてたんだから、さぞかし期末試験に自信あったんだろうね。もし平均点より下なら、お仕置きだからね。』って怖いことをさらりと言ってのけた。
『(1週間で忘れてくれないかな…。)』ってことがあったのが1週間ほど前。そして今日がその『来週末』。

「(ちぇっ。忘れてなかったか…)う、うん。あの…その…。」

「試験結果の一覧表、回答、問題用紙、一式持っておいで。1週間、猶予あげたんだから、覚悟はできてるでしょ?(ニコッ)」

航一は『何でもお見通し』と言わんばかりに笑って診察室のベッドを整えながら言った。

「え?!1週間前には結果出てること知ってたの?!」

「当たり前だよ。僕も結と同じ高校だったんだから、試験後どれくらいで結果が出るかも知ってるよ。ま、同じじゃなくても、あの時の目の泳ぎ方見てたら、すぐわかるけどね。さ、早く。僕もあとココ片付け終わったら帰るから、結も家に取りに帰って、先に僕の家に行ってて。」

そう言われて『はい。わかりました』と言えるわけもなく…。結は俯いたまま動けないでいると、

「結?どぅした?早く取っておいで。」

「うにゅぅぅぅぅ…(涙)。」

「『うにゅぅ?』結?(笑)じゃあ一緒に取りに行こうか?復習するにしても、教科書とかあった方がいいし。」
(こりゃ、相当、見せるのに覚悟のいる点数だったんだな…。)

「どうして復習が必要な点数だって思うの?」

「必要なかったら、覚悟するのに1週間もいらないよね?今日はお父さんとお母さんは?」

「二人で買い物に出かけてる。夕方には帰るって。」

「そう。じゃ、一旦僕の家に寄って、お昼食べて行こう。母さんに結の分も用意してもらうよ。」

そして二人で片付けを済ませて、航ちゃんの家でお昼ご飯を食べて、『結ん家で勉強見てあげてくる』と告げて家を出た。
(もう逃げられない…。)結は首根っこをつかまれた猫のようにシュンとなって家に帰った。

―結の家(リビング)―
航一の座るソファーの前のローテーブルには、テスト結果一覧表、解答、問題、教科書類…。航一が持っておいでといったもの全てが並べられ、航一はその中から、結の点数と学年平均点が書かれた一覧表を手に取った。結は一覧表を穴があくほど見つめる航一の前、ローテーブルの横に正座して航一をチラチラ見上げたり、絨毯の毛をイジイジして待っていた。時々、視線を一覧表からそらし、チラッと送られる視線が結にとってたまらなく痛かった。
全10科目中、平均点に届いていないのが8科目…。お世辞にも褒められた結果ではない…。
長い長い沈黙が続き、足もそろそろ痺れて限界になった頃、航一がようやく結を見てふっと笑った。

「結?言われなくてもきちんと正座して待っていたんだね。偉いね。」

「ぁ、足、崩していい?」

「まだダメ。今からお説教だから。今回の試験の結果見て、どう思った?」

「このままじゃ、ダメだなって…思う。」

「そうだね。もうちょっとしっかり勉強しないとね。点数ばかりを見て評価するのはよくないけど、数学なんて、基本的な問題は出来てるのに、惜しいなって間違いが何個かある。」

「…うん。」

「結?お説教やお仕置きされてる時の返事は『はい』って言うようにしようね。」
躾は最初が肝心とも言うけれど、一度目は優しく注意が航一の考えだ。

「…はい。」

「よし。いい子だ。」と言って頭をクシャッと撫でてあげる。最初から叱ってばかりだと『叱られるから言うことを聞くだけ』になってしまう。なぜ、そうしなければいけないのか、理解させないと覚えない。自分の中で納得しないと、成長はしないと航一は考える。

「さて、結。本題に入ろう。今回、期末試験と同時に通信の試験も受けようとしていたけど、僕の母さんが止めた時に、素直に聞いて期末試験だけに絞れば、もっときちんと勉強できたんじゃないかな?留年するほどじゃないけど、赤点じゃなかったからいいって問題じゃないよね?3年生は授業のほとんどが1.2年生の応用なんだよ。ってことは基礎が分かってないと初めから躓くことになる。」

まるで担任の先生との面談のように、航一は要点をついてコンコンとお説教をする。今までいけないと分かっていてもフワッとしか考えていなかった結も、さすがにこれほどわかりやすくお説教されると、本当にまずい!ということは分かってきて、青ざめる。

「いけなかったことはわかったみたいだね?じゃ次。これからどうすべきか。考えてごらん。」

「春休み…頑張って…復習?する?」

「(笑)自信なさそうな決意だね。よし、じゃあ僕も手伝うよ。勉強を見てあげる。病院があるからずっとは無理だけど、平日は休診時間の2時から4時、うちにおいで。4時過ぎには病院へ行くから、その時に次の日までの宿題とたっぷりと課題を出しておく。それを仕上げて、また2時においで。わからなかったらその時に教えてあげる。休診日は時間があるから、連絡くれたらいつでもいいよ。都合が悪い日は前もって言ってくれればいい。せっかくの春休み、お友達とも出かけたいだろうからね。しばらくは通信の勉強も試験を受けるのも禁止。母さんにも伝えておく。」

「(禁止…。)はい。航ちゃん、ありがとう…。よろしくお願いします。」

「はい。いいよ。結の為なら。よし、お説教は終わり。じゃ、足崩していいよ。こっちおいで。」

全部終わったと思った結は、『こっちおいで』に素直に喜んで航一に抱きついた…。が!

「はい。いらっしゃい。次はお仕置き」
航一の言葉に耳を疑った。

「え?!終わりって…。」

「お説教は終わりって言ったけど?この間言ったよね?『もし平均点よりも下だったらお仕置き』って。10科目中8科目が平均より下…今日はお仕置き初めてだけど、1科目5回として40回のお尻だね。」
そう言いながら、あっという間に膝に乗せ、まずはスカートの上から5回。
パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!

「ひぃぃ…。航ちゃん、痛い!」結はパパやママからお尻を叩かれた事はあったが、それも小学生の頃の話。随分ご無沙汰だったお尻叩きは、スカートの上からとはいえ、すこぶる痛いものだった。

次はスカートの裾を上げて、パンツの上から5回。
ぱちぃん!ぱちん!ぱちぃん!ぱちん!ぱちぃん!

「あぁぁぁあん…!ごめんなさぁい!」

いよいよパンツに手がかかると、
「お、下ろすの?パンツ?」

「今までのはウォーミングアップ。40回は今からだよ。」と厳しく言い放った。

「そ、そんなぁ…。もう許してぇ…。」

「ダメ。反省できないんだったら数を数えさせるよ。」
そういうとスルリッとパンツを膝まで下ろしてしまった。ウォーミングアップを終えたお尻は、ほんのり桜色になっている。

「ふうぇぇぇ…。」

「(パンッ!)やっ!、(パンッ!)…ん…、(パシィッ!)ひゃぁう!、(パッチン!)くぅ…。、(パチン)…。」

航一は結のお尻を右、右のお尻と腿の間、左のお尻と腿の間、左、真ん中と時計回りに1セット5回ずつ叩いていく。

「(バチィン!)い、痛っ~!、(パンッ)ふ、くぅ、(パシィッ!)ふぇぇん…、(パシ)あぅ…、(パシィッ)…い…」
初めてのお仕置きという事もあり、少し手加減しつつも十分効果があるように叩く。

「今回は初めてだし、結もいけなかった事も分かっているから、(パンッ、パチン、パチン、パンッ、パチン!)少し軽めに叩くけど、(パシ、パチン、パチン、パンッ、パチン!)課題や宿題をサボったりしたら、次からは厳しく叩くからね。」
パチン!パチン!パチン!パチン!パン!

「はいぃ…。(涙)!航ちゃん、全然軽くないよ~!痛ぁい…。」

「通信の勉強も試験も、しばらくやらない事!『禁止』って言ったときの結、ワルい顔してたのわかってるよ。」
パチン!パチン!パチン!パチン!パン!
「はいぃ…。通信は航ちゃんがOKするまでお休みしますぅ!(バレてたのか…)」

「都合の悪いことを先延ばしにしない事!僕はお仕置きでも何でもやるといったらやるからね。」
パチン!パチン!パチン!パン!パチン!
「はいぃ…。ごめんなさい!」

「春休みが終わっても、予習と復習をきっちりやる事!後、私用の時は病院の入口からは入らない事!(笑)」
パン!パチン!パチン!パチン!パン!
「はいぃ…。痛いぃ!ちゃんとやりますぅ!…って最後ぉの、は?」
「何回言っても聞かないから、おまけ!」
ぱっちぃぃん!!
「ひっどぉぉい!もう、いっぱい痛いのにぃ!」

「ははは。よしよし。おしまいだよ。頑張った、頑張った。勉強も頑張ろうな。」
そう言って航一は結のパンツを直し、優しく優しくさすってあげる。結は航一の膝に向かい合って座り、航一の首に腕を回して胸に顔を埋めて甘えた。
その日の結は、少し痛むお尻をさすりながら、航一に試験問題の間違えたところを見てもらった。買い物から帰ってきた両親は勉強をしている結を見て、嵐の予感を感じたのは、言うまでもない…。
次の日から、航一に時々お尻を痛くされながら、宿題とたっぷりの課題に追われる春休みを過ごした。