フライトイレギュラー3は、2023年台風2号にまつわるものです。

2023年6月2日(金)、日本の南海上を台風2号が進んでいました。日本列島にあった梅雨前線が台風に刺激されて朝から各地で大雨が降り、午前中は四国、昼は関西、午後は東海地方で相次いで線状降水帯が発生、東海道新幹線は夕方から終日運転を取りやめました。

私はそんな日も、単身赴任先の福岡から東京に帰宅する予定で、21時05分福岡発のJAL332便の予約を持っていました。東海や関西の大雨は気になっていましたが、昼過ぎの時点では飛行機は平常運行でしたし、このまま何とかなるかなと思っていたのですが、15時半頃に何の気なしにスマホで運行状況を確認してみると、19時までに出発する羽田行きのJAL便が条件付き運行になっていて、特別取扱(無手数料でのキャンセル、変更不可運賃でも変更可の扱い)になっていました。運航条件は、羽田空港強風のため、着陸できない場合は成田空港に目的地を変更したり、福岡空港に引き返したりする可能性があるというものです。

福岡羽田便を飛ばしている他の3社(ANA、スカイマーク、スターフライヤー)には、そのような条件は付いていませんでした。なので、多分大丈夫だけど天候が悪化すると何があるか分からない状態なのだろうと理解しました。フライトイレギュラー1のときもそうでしたが、JALは運航条件を付けたり欠航したりするのが他社より早いです。ただ実際問題として、関東平野にも線状降水帯がかかり始めていて、空港があの真下に入ったらさすがに着陸は無理かもしれませんし、それを確実に予測するのは今の技術では無理なので、安全側に倒すという発想も理解可能です。

さらに、羽田空港には特有の問題があります。常に多くの飛行機が羽田に殺到しているために、気象条件などを理由に滑走路が一度閉鎖されると、着陸機が空の上で大渋滞を起こすのです。滑走路が開いた後も、空の渋滞が解消されるには相当の時間がかかります。

この渋滞は、その後2つの問題を引き起こします。1つ目は、その渋滞の影響で羽田に着陸する便に遅れが出ると、その遅れた便の折り返しになる羽田出発便も遅れるということです。そして夕方以降に福岡から羽田に向かう飛行機は、特別な事情がない限り羽田から飛んできた飛行機が折り返すので、羽田発の便が遅れると、自動的に自分が乗る予定の飛行機も遅れます。

2つ目は、自分が乗る飛行機自体は定刻に出発したとしても、その後空の渋滞に巻き込まれて最後尾に並んでしまったら、到着までものすごく時間がかかるということです。残りの燃料の量によっては目的地の変更や引き返しも十分あり得ます。

そんな運行状況を見ながら考えました。私が乗る予定の21時05分発の便には、まだ運行条件は付いていませんし特別取扱の対象でもありません。今の時点ではあくまで通常運行が計画されています。しかし気象レーダーを見ると、静岡県に中心がある強雨帯は、徐々に関東地方に移動しています。日没後にこれが抜けていなければ、私が乗る予定の便も条件付き運行になりかねません。

しかも、JAL332便の羽田着予定は22時40分で、そこから成田に目的地変更されても家にたどり着けません。というより、その時間になると成田も門限にかかります。そして、引き返し先の福岡空港も門限を超えています。とすると、セントレアや関空に降ろされかねません。また、目的地変更はなくても、1時間以上遅れると終電が厳しくなります。関東地方の気象条件は当面悪化方向ですから、21時05分の便が問題なく飛ぶという可能性に賭けるのはかなりリスキーに見えました。

とはいえ、自分が持っている便にはまだ運行条件が付いていないので、アプリから便の変更などはできません。とりあえず空港に行って交渉しないことには何も始まりませんが、遅い時間になればなるほど状況が悪化するリスクがあります。こういうときは皆同じことを考えるので、時間が経てば経つほど、前の便に変更しようにも空席がないという事態になりかねません。

今の時刻は16時過ぎ。まだ勤務時間が約2時間残っています。けれど、どうしても今日終わらせなければいけない仕事は一応片付いていたので、ここは帰宅を優先するとにして、時間休を取得しました。残務は週末に時間を見つけて、東京の家からテレワークで処理することにします。とにかくこういときは、即断即決、乗れる一番早い便に乗れる可能性に全力を傾けることが肝要です。

空港へ向かう途中の地下鉄車内でFlightAwareのアプリをチェックしてみると、この時点で羽田空港は悪天候で運用制限がかかり、着陸便を十分受け入れられない状態になっていたようで、羽田空港に向かう空路のあちこちで、飛行機が上空でぐるぐると旋回待機していて、航跡が渦巻きのようになっていました。このぐるぐる回っている飛行機が全部羽田に着陸するだけでも、余裕で1時間くらいはかかりそうです。つまり、この先の羽田に向かって出発する便は、1時間遅れを覚悟する必要があります。

さらに悪いことに、自分が乗る予定の21時05分発の羽田行きは、本来18時頃に羽田を出発し、20時頃に福岡に到着する飛行機の折り返し便です。そして、18時頃に羽田を出発する便というのは、通常17時頃に羽田に到着した便の折り返し便です。今はその17時。しかし羽田空港はまともに機能していません。つまり、私が本来乗る予定の飛行機は、出発4時間前の現時点で既に、かなりの確度で大幅遅延を予測できる状態でした。

この時点でも、21時05分発の羽田行きに運行条件は付いておらず、特別取扱の対象でもありません(運航条件がついて特別取扱の対象になっていたのは19時発まで)。けれど、この状況で元の便をのんびり待つという選択肢は、もはやありません。お土産を物色しながらモニターを見ていたら、1時間もたたずに、JALの20時発と21時発の羽田行きには、セントレア又は関空に行き先変更になる可能性があるという運行条件と特別取扱が付きました。

また、この間に、各社の羽田行きの便が本来の出発時刻より1時間程度遅れるとのアナウンスが立て続けに入りました。管制からの指示、ということでしたが、要するに羽田空港の着陸便が大渋滞を起こしていて、今飛んでも上空でぐるぐる待機するだけになることが目に見えているので、離陸自体を遅らせて空の渋滞を調整するということのようです。

そこでカウンターに行き、前の便への変更を申し出ました。この時点で出発していない一番早い便は、本来18時に福岡を出発する便でした。けれど実際には飛行機が約30分遅れで福岡空港に到着し、しかも1時間遅れるという管制指示があったために、実際の出発は19時過ぎが見込まれる状況でした。この便も、成田空港への目的地変更の可能性があるという条件と特別取扱が付いています。

普通は、好き好んで条件付き運航の便に予約を変更する人はいません。カウンターで変更を申し出たときも、そもそも変更先の便も目的地変更のリスクがある、という説明を受けました。そこで私は、仮にこの便が成田に降りることになっても、この時間なら自力で家にたどり着けること、最悪引き返すなら、福岡の家に戻るからそのときは翌日の朝イチ便にチャレンジするので、それはそれで構わないこと、むしろ最終便が目的地変更になる方が目も当てられないことを伝えました。結果、条件付き運航の便への変更という普通はやらない変更が通りました。

あとは保安検査を受けて、搭乗するだけです。JAL以外の3社の羽田便に運行条件が付いていないのは、この時点でも変わりませんでした。FlightAwareを見る限り、羽田空港では徐々に着陸機が降りていて、渋滞も解消方向です。これなら、自分の乗る飛行機だけ運悪く着陸できないなんていうことはそれほどなさそうだ、と希望が持てました。

そして19時過ぎ、飛行機は無事福岡空港を出発しました。こんな天気の日なので飛行中は結構揺れ、特に降下中は飛行機がミシミシと音を立てながら、ストンと落ちるような揺れが何度か繰り返されました。が、着陸自体は一発で問題なく、無事羽田に着きました。この時点で時刻は21時過ぎ。もともと私が乗る予定だった便の出発予定時刻頃でした。

21時過ぎに羽田に着いてしまえば、後は楽勝です。問題なく帰宅できました。

翌朝、気になったので本来自分が乗る予定だった羽田行きの最終便はどうなったのか検索してみたら、ゾッとしました。この飛行機、無事福岡空港を出発して羽田空港に到着はしていたのですが、福岡空港の出発が21時54分、羽田空港の到着が0時30分だったのです。そもそも出発が約1時間遅れで福岡空港の門限(22時)ギリギリだった上に、飛行時間も通常より1時間くらい長くなっています。この時間帯に羽田空港がそこまで渋滞していたとは考えにくいので、おそらく気象条件の問題で上空で待機していたのでしょう。

こんな時刻では、いくら羽田といってもタクシー以外の交通手段はありません。でも、状況は皆同じですから、きっとタクシー乗場は長蛇の列で、疲労困憊は間違いありません。普段は残業や一次会の前半までの参加を織り込んで金曜夜の最終便を愛用していますが、この日ばかりは、即断即決で仕事を切り上げて空港に向かった判断に救われました。

しかし何というか、去年の台風14号といい、週末にかかる台風はこりごりです。