フライトイレギュラー4は、教訓編です。
天候不良でフライトイレギュラーが発生すること自体は仕方がないとして、それにどう対処するか。単身赴任生活をしていると、そういう妙なスキルが蓄積されていきます。
イレギュラー時の鉄則は、即断即決です。イレギュラーが予測される場合に、その旅行が中止できるものだったら、躊躇なく中止する。その旅行が中止できないもので、今飛行機が飛んでいるなら、便を振り替えたり、場合によっては買い直してでも、とにかく飛んでいるうちに乗る。今飛行機が飛んでいないけれど飛ばなければいけないなら、広く代替手段を考えて可能な予約を即決した上で、キャンセル待ちやセカンドベストの予約も入れる。こういう感じです。
ポイントは、旅行中止を選択する場合以外は絶対に選択肢を絞らず、常に最善解を求め、複数の選択肢を比較し続けることです。そのためには、常に情報を収集して複数の選択肢を同時並行で転がすことが必要です。台風で飛行機が欠航になったときのニュースで、空港の行列に並んでいる人がいつも映ります。もちろん、本命の選択肢のために空港で行列することも必要です。でも、単に行列するだけでは駄目です。本命に行列しつつ、セカンドベスト、サードベストの選択肢を別ルートを含めてスマホで検索し、予備の予約を入れて、そっちが成就しそうなら本命の行列を捨てることもいとわない、そういう強かさが大切なのです。
では、具体的に自分がどうしているかというと、まずは情報収集です。私は東京に家があって、福岡に単身赴任しています。通常は金曜の夜に福岡から東京に飛び、日曜の夜に東京から福岡に飛びます。この場合、飛行機に乗る日は昼頃に各社の運行状況をチェックします。ANAやJALはスマホアプリのメニュー内に運行状況へのリンクがあるので、それをタップすればすぐ運航状況が出ます。
このときのチェック対象は、自分が乗る東京福岡間の便だけではありません。全国の空港で何か問題が発生していないかを広く見るのです。東京福岡間を運航している飛行機は、何も東京都福岡の間だけを往復しているわけではありません。沖縄から東京に飛んできた便が福岡に飛んで、さらにその飛行機が福岡から東京に折り返すとか、札幌から東京に飛んできた便が福岡に飛ぶとか、そういう運用はざらにあります。つまり、沖縄や札幌で発生した問題が、自分が載る東京福岡間の便に影響し得ます。
次に、気象庁の降水ナウキャストで雨雲の状況をチェックします。飛行機は単に雨が降っただけで欠航になることはありませんが、激しい雨をもたらす積乱雲が空港周辺にある場合は着陸できないことがあります。また、空港に落雷がある場合は地上作業員が外で作業をすることができなくなるので、荷物の積み込みや積み出しができなくなり、遅延が発生します。そういう激しい雨や雷がないかどうか、そしてこの先そういう怪しい雲が利用する空港の方に移動していきそうにないかを確認しておくと、ある程度先が分かるのです。
あわせて、日本上空の飛行機が普通に飛んでいるかどうか、FlightAwareのスマホアプリを使って全体的な状況を見ます。ここで羽田に着陸する便が渋滞していたりしたら要注意です。
さらに、特に福岡から東京に飛ぶ場合は、自分が乗る予定の飛行機が福岡に到着遅延しないかどうかを確認します。福岡から東京に飛ぶ飛行機は、ほぼ例外なく東京から飛んできて福岡空港で折り返します。つまり、東京から来る便が遅れたら、折り返しの東京行の便もほぼ自動的に遅れます。福岡空港での折り返し時間は約1時間、東京から福岡への所要時間は約2時間ですから、自分が乗る予定の飛行機の出発時刻の3時間前までには、その後のおおよその遅延状況が予測できます。
残念ながら、東京発便はこの手が使えません。東京には全国から飛行機が飛んでくるので、どの便がどの便の折り返しなのかが必ずしもはっきりしない上に、東京発便はイレギュラー時に機材変更になることも少なからずあるからです。
ともあれ、そうやって情報を集めて、時には特別取扱の対象になるかどうかを確認して、東京到着後の交通手段をどうするかを含め検討して動きます。文字で書くと結構大層な話ですが、毎週のようにこれをやっていると、もう、そういうものだという感じで行動パターンが体に染みついてしまいます。最近はこれが身についてしまって、出張のときも同じような確認をしてから家を出ています。そして、この行動パターンは飛行機以外でも同じで、新幹線も家を出る前にイレギュラー情報がないか、経路上に大雨を降らせる雲がないかなど、必ず確認します。確認した上で、それでも旅行を決行するときは、動いている一番早い便に乗れるよう最善を尽くします。
この発想法は、おそらく防災やサバイバルと同じ系統のものです。日常生活でそういうシビアな判断を迫られる場面は、通常、それほど多くはありません。けれど、単身赴任をしているとそういう場面に直面してしまう可能性がどうしても増します。あまりうれしい話ではありませんが、有益な防災訓練だと思って、前向きに考えることにしています。