2023年9月15日、3連休をひかえた金曜日、いつものように単身赴任先の福岡から東京に行く飛行機を予約していました。予約していた便は、福岡19時45分発のANA270便。昼休みにフライト状況を確認したところ特に問題もなく、午後は会議が連続していたので飛行機のことは完全に意識の外でした。

17時、ANAからスマホに、「雷による運航への影響について」というSMSが入り、確認してみると羽田空港に雷雲がかかったために羽田絡みの便に大幅な遅延が生じていることが分かりました。福岡では、東京の悪天候に関するニュースは特に話題になっていなかったので、この通知で今日の夜のフライトがヤバいということを知った人が大半のような気がします。もちろん私もそうでした。

勤務時間終了は18時でしたが、この状況で仕事に集中することなどできません。1時間早上がりして、残務は週末テレワークにすることにして、スマホで状況チェックです。各社とも今日の便はクラスを問わず完全に満席。3連休前の金曜夜ということを考えると妥当なラインです。翌日便に目を向けると、ANA便は午前中の早い便はほぼ満席でしたが、JALの朝7時30分の便になぜか1席、株主優待運賃の空きがあります。すぐに予約を入れました。

次に行ったのが、今のフライト状況のチェックです。羽田空港は、着陸便が多少渋滞しているものの、通常のペースで離発着ができるようになりつつあるようです。ただ、各社の福岡行きの便の状況を見ると、15時以降に羽田を出発予定だった便が壊滅的に遅れていて、この折り返しになる夕方以降に福岡を発つ便に大幅な遅延の発生が避けられない状況でした。

この時点で、自分が乗る予定のANA270便に遅延情報はありません。が、ANA270便はANA265便の折り返しです。ANA265便の運行情報を見ると、既に55分遅れの情報が出ていました。とすると、ANA270便もほぼ確実に1時間遅れます。遅れが1時間で済めば21時より前に福岡を出発するので、帰宅に問題はありません。ただ、こういうときの遅延状況は悪化することがある(改善することはほぼない)ので、悲観的な想定としてはより大きな遅れがあり得ると思って行動することにします。

福岡空港に向かいながら、前の便に空きが出ないかアプリを頻繁に更新して検索していると、18時35分発のANA266便に1席空きが出ました。この便はANA261便の折り返しです。261便はこの時点で、定刻より1時間20分遅れでの運航予定となっています。その遅れが多少悪化するにしても、とにかく福岡に飛んできてくれれば、20時くらいには福岡空港を出発できそうです。というわけで、空席を発見したその画面からそのまま、すぐにフレックス運賃で予約を入れ、決済未了の状態で空港に向かいます。

空港に向かう途中、さらに状況が悪化します。ANAは268便と272便の欠航が決まり、さらに翌日の朝イチ、7時00分発の便も欠航が決定しました。降水ナウキャストによると、この時点でも神奈川県には非常に強い雷雲があり、これが羽田に移動していくとこの先どうなるかも分かりません。

福岡空港に向かいながら、さらなる代替手段として新幹線の最終便を検索します。博多駅18時59分発、日付が変わるぎりぎりに東京駅に着くのが最終の新幹線です。こんなときに備えてスマートEXで交通系ICカードを使えるようにしているので、とにかく博多駅の新幹線改札に出発5分前に着ければ、乗るだけ乗ることはできます。そのためには、福岡空港を18時40分過ぎには出て、博多駅に行く必要があります。つまり、この時点までに、今日の振り替え便で飛べる目処があるかを判断し、それが難しそうな場合、予約を入れた翌日のJAL便に乗るか、でなければ今日の新幹線に乗るかを決断することになります。

ちなみに、福岡東京間は、株主優待運賃で飛行機に乗るのと、新幹線の切符を普通に買うのとだと、飛行機の方が少し安いですが、大きな差はありません。ただ、現実に飛行機が欠航している状況で、最終の東京行きという条件だと、実際に席があるかどうかは微妙なところです。これはこれで不確定要素が多く、東京まで立ち席だと非常に疲れるので、そんなに積極的に選びたい選択肢でもありません。

福岡空港に到着したのは17時50分頃。1階のANAカウンターには、欠航便の予約を持っている人が続々と集まりつつありました。ただ、3連休前日夜という最悪のタイミングなので振り替えも思うに任せませんし、宿なしの人は大変です。カウンターのディスプレイには、今日は終日満席で振り替えは明日以降になることや、今日のうちに移動したい場合は18時59分の新幹線最終便も検討するよう表示がされていました。

私はというと、270便の状況を見つつ、予約を入れた266便への変更をするために同じ列に並んでいました。列に並びながら運行情報を見ていると、折り返してANA270便になるANA265便の遅延が拡大し、最終的に1時間40分遅れになりました。ここまで遅れると、ANA270便の羽田到着は23時を大きく超えるので、そこから帰宅するのは大変です。運良く確保できた266便に振り替えてもらうべく、そのまま列に並びました。

列が進んでいく際、モニターを見ていると、羽田便に一瞬だけ△マークが出て、またすぐに×マークに戻るということが何度かありました。遅延が激しいので、便をキャンセルしたり、今日の旅行を諦めたりする人もいるわけです。そんなとき、すかさずアプリを開いて予約を振り替えれば、欠航便の予約を持っている人でも今日飛行機に乗れるかもしれません。私なら、そうします。でも、並んでいる多くの人は、同行者と暢気にしゃべっていたりして、こういう場面に慣れていなさそうでした。

それどころか、列に並んでいる人の中には、「今すぐ博多駅に向かえば新幹線に乗れるが、その場合の飛行機の払い戻しがどうなるか分からない」などということを話している人がいる始末です。欠航便の払い戻しは翌日以降も無手数料で可能です。でも、この電話をしている人も、そして電話口の向こうに居る人も、それを知らないのでしょう。話のトーンがすごく深刻です。そういう情報もディスプレイに切り替え表示すればいいのに、と思ったのでした。

この時点で、266便として折り返すはずの261便は遅れながらも羽田空港を出発していて、19時30分頃には到着しそうな運行状況であることがFlightAwareのアプリで確認できました。今問題になっているのは羽田空港の遅延なので、羽田からこっちに飛行機が飛んできてくれさえすれば、さらなる機材トラブルなどの不運に見舞われない限り、多分折り返し便は飛びます。勝算アリとみて、新幹線の最終便は選択肢から外しました。ここから5時間新幹線に乗るのは、さすがに疲れるので避けたかったのです。

ただ、私はアプリの振り替えの機能を使わずにフレックスで予約を入れる形になっていたので、ここから先の処理はカウンターでしかできません。なのでおとなしく列に並び続けます。

さて、こういうイレギュラーの場合、今どきはアプリでも便の振り替えが可能です。そして、アプリで振り替えをすれば、カウンターに並ぶ必要もありません。だったらフレックスの予約だけ入れてカウンターに並ぶより、アプリで振り替えた方が良いではないか、という感じもします。でも、これに対する私の答えは、ケースバイケース、です。

もし、翌日の便に振り替えて仕切り直しにする決断を最初からするなら、さっさとアプリから振り替えの処理をして家に帰るのが絶対に楽です。ただ、刻々と事情が変わり、欠航便が増えていくような状況下では、アプリでの振り替えは、せっかく振り替えた先の便が欠航になるという別なリスクを負いかねない行為です。なので、とりあえず予約を入れつつ、折り返す便が実際に羽田から飛び立つかどうかをアプリで確認した後に、空港のカウンターでさらに運行見込みを確認し、その上で振り替え処理をお願いすることを選んだというわけです。

また、アプリのUI上、予約を振り替える手続よりも、普通に予約を入れる手続の方が操作が簡単という問題もあります。こういうイレギュラー時にポッと出る1席の空きは、発見したら即時確保しないと瞬殺されてしまいます。そういう場面では、予約の振り替えよりも、新規予約の操作の方が実際上速いのです。

そんなこんなで、空港のカウンターで無事予約を変更してもらい、搭乗券を入手しました。出てきた券は、なぜか国際線仕様の横長のヤツで、2次元コードもQRではなく国際線仕様のものでした。ただ、当然ながら問題なく保安検査などは通過でき、無事制限区域に入りました。そして、もともとは福岡空港を18時35分発予定の266便は、実際には約2時間遅れで20時30分に出発し、羽田空港には22時台の到着となりました、このくらいなら、普通に帰宅できます。

この時点で、株主優待運賃で予約を入れていた翌日のJAL便もキャンセルします。キャンセル直後に空席を見てみると、満席だったのが一瞬だけ空席1になり、3分後には再び満席になっていました。フライトイレギュラーのときに一瞬だけ出る空席は、こんな感じで、すぐに誰かにリユースされるのです。

ちなみに、もともと予約を持っていた270便はというと、これも飛ぶには飛びました。ただ、出発がさらに遅れて21時50分過ぎで、羽田空港への到着も23時35分でした。この時間になると、そもそも羽田発の終電がなくなってくるので、飛行機に乗れたとしてもその先が大変なことになるところでした。タクシーを使うこと自体は仕方がないにしても、タクシー乗り場の行列を想像するだけで気が滅入ります。

昨年の9月の連休は台風でイレギュラーの憂き目に遭いました。このときはJALが早々に欠航を決めて、損切りにもほどがあると思ったものですが、今回はJALに欠航便は出ませんでした。逆に、ANAは東京発福岡行きで5便の欠航を出し、福岡発東京行きは翌日便にも欠航が出ました。このあたりは機材繰り状況にもよりますが、JALの羽田発福岡行の最終3便は北九州空港への行き先変更込みの条件付き運航をしていたので、それぞれの会社の運用状況の違いによるところが大きいようです。

スターフライヤーやスカイマークも運航が大きく乱れ、遅い便は欠航も出ていましたし、こういう場合、どこの会社ならより確実に飛べるかというのは毎回違います。でも、早割でチケットを買うとその辺は完全に運の領域です。己の運を頼りつつ、運が及ばないところは知識と経験でカバーする、そんな生活がしばらく続きそうです。でも、去年の9月も、今回も、欠航が出る方の航空会社の予約を持っていた私の運は、あまり頼りにならないのかもしれません。