祖母の形見の着物は、すべてわたしが受け継ぐことになりました。
長いあいだ箪笥で眠っていた着物たち…
お天気のいい日に、少しずつ虫干しをしています。
春風をはらんで乾いた着物をきちんとたたみ、新しいたとう紙へ。
すっきりして、着物も喜んでいるようです。
こちらは絞りの羽織です。
とても色がきれいなので、一番のお気に入りです。
ただ―――
せっかく素敵な着物がたくさんあるのに、着る機会がないことが残念です。
地元を離れ、日本舞踊をやめてしまうと、着物を着ることもなくなってしまいました。
さみしい限りです。
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「踊り、また始めればいいじゃない」
先生は、そう言って笑います。
今日は、日本舞踊の先生のお宅へお邪魔してきました。
帰省するたび、かならずご挨拶に伺うことにしているのです。
小柄でいつも笑顔の、とっても素敵な先生です。
名取さんたちが並んで踊っていても、その所作の美しさは群を抜いています。
自慢の、大好きな先生です。
「わたしは、続けてほしいわ」
先生の言葉に、心は動きます。
確かに、踊りを続けたい気持ちはあるのですが…
やはり、やるのなら、尊敬するこの先生に師事したいと思うのです。
他の名取さんたちも、一人うんと若いわたしをかわいがってくださいました。
恩義ある方々とお別れして、別の流派へ移るということには、やはり抵抗があります。
着物と一緒に、踊りへの情熱も、今しばらく眠らせておくことにしましょう―――
