何故ろくろっ首? | コンサートホールのお話など

コンサートホールのお話など

レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

通勤電車で、吊革につかまり、ふと前に座っている人を見ると、涼しげな白地に小紋の和服姿です。


お顔は下を向いてらして見えませんが、手の甲の感じからすると私より上だと想像がつきました。手首にはシップの上にテーピングのような素材のものが巻かれてありました。


腱鞘炎かしら…?なんて思っていると…。


その女性がおもむろに「マッキー」マジックを取り出し、始めたことは、なんと、お絵描き。しかも、その手首のテーピングに。


電車の揺れるのも全く問題とせず、慣れた感じでどんどん「作品」が出来あがっていきます。


はしたないですが、もう目はそこに釘付けです目その女性のお隣に座っている人も、視線をそらしてはまたすぐにと、やはり目が離せない様子。


だんだんわかってきたイラストに「へ~、日本髪を結った女の人の顔だ!!さすが、和服。でもどうしてイラストを描くのだろう?」なんて思っているうち、顔の周辺にも小さなパーツが幾つか足され、それが何なのかよくわからず、ますます気になります。


えっ…もしかして?そう、パーツが繋がると、和装の身体と顔が一体となり、ろくろっ首が完成!!ろくろ首


それだけでなく、なんとペンケースからラインマーカーを取り出しては、器用に色まで付けられていきます。


もう、へ~~~凄い!上手!!でも心の中は何故???何のために???で一杯です。



私は通勤電車のなかでは座席表とにらめっこなど復習をしたり、精神集中をしたり、これから勤務の公演の無事を祈ったりと、自分なりのメニューが決まっているのにもかかわらず、今日はそれもおろそかに。


私の降りる駅に大分近づいた頃、見事なろくろっ首のイラストが完成し、和服の女性は携帯でその写真を撮影されたのか、以前にも同じものを撮影していたのか、ふと気づけば何やら画面にイラストのアップが収められているのが見えました。


それ以上はさすがに目をそらしていましたので、ことの顛末はわかりませんが、最後にその女性が何気なく上を見上げて初めてお顔を拝見できました。


イラストだけ見るとマンガっぽくて、色の使い方も筆?の運びもタダものではない感じで、若い人を想像してしまいそうですが、大変落ち着かれた雰囲気の年配の方で、ますます狐につままれたようでした。


今にして思えば、絵描きさんだったのかもしれません。しかも、よく見れば左効きのようで、右の手首に描いておられました。


いつまでもあれは何だったのか、気になってしまいそうですあせる