幼馴染が結婚すると聞いた、涙が出ていた。
僕は彼が好きだった事に気がついた。
おめでとうが出てこなかった、声の変化を悟られないように、僕はなるべく頷くようにして答えた、電話だから見えるはずもないのに。彼とは成人式以来会っていなかった。同じ場所で育ったのに高校生になってから会わなくなって、再会した時には抱き合っていた。人目もはばからず、僕は単純に嬉しかった。君の柔らかい髪にまた触れられたんだ。ずっとそういう関係でいたかった。彼が大学を出た後、地元の中学校で体育教師をやっていると聞いた、僕は実家にいたままだから10分も歩けば彼が見えたのに、行かなかった。
彼がまた側にいてくれている、そう考えるだけで良かった。僕が過去を振り返っていると彼は今の事を話し続けている、来年に挙式を上げるんだ、同じ4組だった井上さんと結婚するんだ。お前には真っ先に聞いて欲しかった、誰から聞いてた? 幸せそうに弾む彼の声が懐かしかった。昔から付き合ってたの? 教育実習で偶然会ったんだ。なんかドラマチックだね。分かってるよ、君が聞きたいのは「おめでとう」だって。「好きだ」この言葉を言ってみようか、そうしたら結婚式にも呼ばれないだろうし、もう君としゃべれなくなるんだろうな。彼はイジワルだった、僕の事をよく知っているからそういう事を言うんだ。試すのは止めにしてくれ、君はもう他の人に愛されてるじゃないか。欲張りで強情なままだった。なぁ、もしも僕が女だったら、こんな思いはしなかったのかな。そしたら君の横にいれたのかな。
聞いてる? 電話で僕は沈黙する。彼の言葉についていけなくなった。
もっと普通の話をしておけば良かった、15年も一緒にいたのに、好きな色さえ知らないんだ。ごめんと言って電話を切った。彼ともっと話がしたかった。(744文字)