2010年の本屋大賞。

この本を読んで嬉しかったのは、日本史で名前を覚えた人たちが生き生きと活躍すること。

 

 

 


江戸時代、徳川4代将軍徳川家綱が統治する時代、主人公は渋川春海。碁をもって徳川家に仕える碁打ち衆。算術にも興味を持つ春海は日本独自の暦を作りあげる大仕事に携わるようになっていきます。
 
登場人物に、会津藩士で算術家・安藤有益、天才・和算の関孝和、水戸藩二代目藩主・水戸光圀、学者・山崎闇斎、徳川幕府の影の総裁・保科正之、加賀藩主・前田綱紀、日本史の教科書で見てきた人たち。でも、名前や肩書きは知っていても、具体的には、どう行動したのかを知らない人たち。日本史の教科書でどう記されているか確認したかったけれど、探すにも、とってあったかも覚えていないのであきらめました・・・
 
上下巻を読み終わって感じるのは、春海の成長と人々の情熱です。23歳から46歳、年月にして約23年なので当たり前といえば当たり前なのかもしれないけれど、ひとつの暦をかけての大勝負に碁打ちのように、始まりでは頼りなかった春海が、布石を打ち込んでの確実な勝負をしていくのです。
 
そして、大仕事の源となる情熱。春海にその仕事を任せた人たちの情熱、自分でやりたくてもできない人の情熱、春海と一緒に改暦事業に携わる仲間たちの情熱、もちろん春海の情熱も強いです。冒頭に出てくる、神社での絵馬での算術勝負。圧倒される算額奉納絵馬の数々。神社の絵馬や私塾で問題を出して、解きあう人々。江戸時代の人々が算術を趣味や娯楽として行っていたのです。暦を作るために、歩測と算術で北極出地を予想する二人の老齢の書道家と医師。みな、学ぶこと、解くこと、喜びに満ちています。
 
失敗を重ねても尚、「明察」を求める春海の情熱。人々の情熱。その空気感が本の中にはあふれています。

未読の『光圀伝』も気になります。『天地明察』の中にも、光圀は独特の人物として登場しています。
(過去ブログより)