ボクチンの前にドアが二つある
蒼いドアと赤いドアだ
どっちだろう?
たらこくちびるの司会者は、叫ぶ
「選んで選んで、あけましょねーーー!!」
ドンドンドンパフパフ!!
「ドクロさーん!あなたの前にある二つのドア!」
「ひとつは天国につながるドア」
「ひとつは二度と帰ってこれない、地獄のドア」
「さあ・・・」
「選んで、あけまSHOW!!」
うーむー・・・
「シンキングターーイム スターーートゥ!!」
たらこくちびるの司会者は、くねくねと腰をくねらせ踊りだした
ううう・・・どっちだ・・・
「よーーーし!!あけるぞ、おらーーーーーー!!」
ドラムロール だららららららららららららららら
らららららららららららら
だかだん!
バンッ!!
ボクチンは赤いドアを押しあけ、中に飛び込んだ
そこには、水平線の向こうまで、ぎっしり埋めつくされたムエタイ選手が
ゆるゆると戦いの舞をおどっていた
「・・・」
アナウンスが流れる
「ドクロー、タイキックー!」
ムエタイ選手が、いっせいにボクチンのほうを向く
「・・・・・」
「イヤアアアーーーーーーッッッ!!」
ガバリと、とびおきるボクチン
顔面中に冷や汗がびっしり噴出していた
「ひ・・・ひどすぎる・・・・」
「なんちゅー夢だ・・・」
ボクチンが起きた気配を感じ、だれかが声をかけてきた
「あ、気がついた?」
「ここは・・・」
「うん、お店の中だよー」
なんさんだった
「ドクロッチ倒れて動かなくなったから」
「ここに運び込んで、ねかしつけたんよ」
「汚れた体は、ふいといたし 服もあたらしいのを着せといたから
「感謝してよね~」
なんさんはニマッとわらう
ボクチンはソファに寝たまま、お礼をいう
ふいっと、もうひとつの顔がボクチンを覗きこんだ
たまねぎさんだった
ボクチンは、激しい恐怖をおぼえ、叫び声をあげた
「ぎいやああああああああああああああ!!」
「なんで私のときは、そんなおどろくのよ!ドクロッチ!」
たまねぎさんの顔をみると、あの苦しい修行が思い出されてしまうらしい
「も~、修業をちゃんとやった、ごほうびにいいものあげようと思ったのにーー」
たまねぎさんは、ほっぺをふくらませて
「はいっ、これ食べてみ」
とボクチンに丸い物をほおった
うけとった物をみると
それは、たまねぎだった
え・・・・生のまま?
いぶかしむボクチンになんさんが
「だまされたと思って、かじってみなよドクロッチ」
「前にたまちゃんが持ってきてくれた、新しい種類の仙たまねぎよ」
仙・・・・たまねぎ・・・・?
ボクチンは二人に顔を、じい~~っと見つめられ
しかたなく、それをかじった
しゃくしゃく・・・
!!
そのたまねぎは、ナシのように甘く
一瞬でボクチンの体のすみずみまで、何かがいきわたった気がした
こ・・・これは!!
ボクチンの体の細胞のひとつひとつが、ブルブルと震えだす
傷つき、疲れきった体のダメージを全て消し飛ばし
さらに新しい力が、火山のようにふきだしてくる
筋肉は盛り上がり、骨は、その密度をあげる
体中から
メキメキメキ
ギシギシギシと異様な音がひびき
すべてがおさまったとき
ボクチンは吠えた
うおおおおおおおおおおおおっっ!!
ソファから、はねおきると
ゲンコツで胸をたたいた
「オオッ!強い強い!!」
両手を思い切り伸ばして、鳥のようにバタつかせてみる
風圧で体が浮き上がるようだ
ははは・・・ああっははははははは!!
笑いがこみあげてくる
いける・・・これなら・・・
ヤツを・・・・ヤツを倒せる!!!!
ボクチンの満足そうな様子を見て
なんさんがペットボトルの水をわたしてくれたあと、言った
「うんうん、ドクロッチの準備も整ったようだから」
「じゃあ、行こうか」
「・・?」
「みんな、ドクロッチを外でまってるよ」
「え・・・まさか」
「そう、今から出発だよ!!」
「ええええええええええええええ!!」
こうして・・・
ボクチンは、バー「なんと」のドアを開け
戦いの舞台へと、仲間たちと歩き始めた
決戦・序の章 終