ボクチンがつまづいた物、それはミコシさんが奮闘していたときに、その猛攻を逃れ
バー「なんと」の侵入に成功した一人だった
あまりの恐怖に体の痛みをわすれ、とびのいたボクチン
その横たわる姿をみて凍りついてしまった
アヤさんに縛りつけられた「それ」は、すでに「人」ではなかった
きゃしゃで小柄な体格から、それが女性だということは、わかる
が
皮膚の色がじんじょうでない
灰色を帯びた白なのだ
その質感も人間のそれとはちがっていた
極めつけは、ボクチンがドアップでみてしまい、おしっこをちびらんばかりに驚いた
その、頭部だ
頭の部分に「カサ」がかかっているのだ
その「カサ」が髪の毛と一体化しているのだ
見た目だけで、それが毒をもっていることがわかる、まがまがしいほど色あざやかな・・・
人間の頭が
「キノコ」になっていたのだった
バー「なんと」を襲った「パンドラの箱から噴き出した災厄」
それは「キノコ人間」だったのだ!

キノコのいしづき部分が、わずかな隆起が浮きあがっているので
それが元々、目や鼻、口といったパーツなのだろうことは分かるが
元の人間を判別することはできない
「うう~~うう~~うう~~っ」
だれに向けるでもないのに、不気味にうなり声をあげるキノコ人間に
バー「なんと」は、その異様さに圧倒され、静まりかえる
50人を超える「キノコ人間」がボクチンたちに襲いかかってきたのかと
思うと背中にゾクゾクと冷たいものが走った
「こ、こんなことが・・・・・・」
それ以上、ことばにならなかった
「部長、これがニジさんたちの目的なの?」
「天使を呼ぶ機械で、よんだ天使が・・・・・・・このキノコなの!?」
なんさんが、今までにみたことないような鋭い瞳で部長を見る
「いや、ちがう これが目的ではない」
「これは彼らの目的の犠牲だ」
「ただ・・・・・・この人たち自身は犠牲になったとは思っていない」
「彼ら自身は、その人生で味わったことのない、幸福を感じているだろう」
「こんな姿になって、なにを!」
なんさんは、さけび声をあげたが
部長が、ひどく悲しそうな表情をうかべていたのに気付き、いたたまれなくなったのだろう
「・・・・・・とにかく、ちょっと落ち着くことにする・・・・・・」
「部長、ドクロッチをみてあげて」
というとカウンターにもどった
つづく