あれは、幼稚園に入るか入らないかの頃でした。
わたしは、家族で小さな汚い平屋の借家に住んでいました。

そこには、野菜売りのリアカーを(ラーメン屋台のような)引いたおじさんが不定期にやってきていました。
幼い頃から、母に外遊びに付き合ってもらった記憶がありません。
それが時代だったのか、育児放棄のためかわたしにはわかりませんが、いつものように近所の同い年の子たちと遊んでいたような気がします。
そこには、他の子のお母さんはきていました。

野菜売りのおじさんに、野菜を頂戴!
と、声をかけた気がします。

そのおじさんはわたしの口元を見るなり
汚いな。歯を磨きなさい。
そう、軽蔑したような顔でいいました。

わたしは歯を磨かれた記憶がありません。
よほど汚い歯をしていたのでしょう。