商売をしてる家にとって日曜日は稼ぎ時。

日曜日にどこかへ連れて行ってもらえることはなかった。

一緒に遊んでもらえることもない。


その為、小さい頃は双子の姉達と家の中で過ごす事が多かった。


私は、ぜんちゃんと遊ぶのが本当に好きだった。

穏やかに、静かに過ぎていく時間が心地よかった。

彼女は頭のいい人で、小学校入学前には少し長めの絵本くらいは読めるようになっていた。

私は彼女と徒歩5分の市民会館に行き、選んだ絵本を読んでもらう。

駅近い立地なので、それなりに交通量もあったが

両親は我関せず、商売に明け暮れていた。


問題は、ゆーちゃんだった。

ゆーちゃんは、自分が中心でなくては気がすまない子だった。

私とぜんちゃんが遊んでいるのが気に食わない。

普通は、仲間に入りたいのなら「入れて」と声をかけると思う。

彼女は、違う。

彼女は、私が長女なんだからこの家は私の物!

私の物を使わせてやっているんだから

言う事を聞け!

跪け!

と、タコ殴りにされる。


ゆーちゃんだけ、私達姉妹の中で体格が良かった。

頭1つ双子なのに大きい彼女。

私は、未熟児で産まれたためとても体が小さかった。


そんなゆーちゃんが、近くにいるだけで

ぜんちゃんと私にとっては恐怖だった。


親が仕事で疲れているストレスを敏感に感じ取り、親が仕事を終えて帰宅するのがとても嫌だった。

家中が、親の放つ不愉快な何ともいえない空気に汚染されていく。


が、ゆーちゃんが側にいる時もまた、恐怖でストレスだった。

ゆーちゃんの機嫌が、ぜんちゃんと私を支配していた。

彼女は、突然怒りだす。

それも手を付けられないほどに暴れ、私達は幾度となく口を切り血を流した。




ぜんちゃんは、頭のいい子だった。



父の一番上の姉が、子育てをしてみたいという

ふざけた理由でくれといった。


まさか、犬猫じゃあるまいし

そんな言葉を言い続ける伯母に、頭が狂ってると幼少期でも思っていた。


ただ、頭の狂っている者の家族は頭が狂っているのが常なのだろう。


父は、ぜんちゃんを養子に差し出した。


私は心の中で、いなくなるならゆーちゃんにしてほしいと心底思った。

でも、伯母が欲しがったのは、頭がよく我儘を言わないぜんちゃんだった。


そして、ぜんちゃんは頭の良い私立の中学校へ入学した。


その頃、両親が離婚し母に引取られた私とゆーちゃんは、ぜんちゃんと連絡が取れなくなった。


あの頃、携帯電話なんて魔法の世界だった。




そして、ぜんちゃんは自殺した。




伯母もまた、父とゆーちゃんの性格そのものだった。


伯母の描く、理想の娘から少し外れると着物を縫う時に使う竹の定規で叩かれていたらしい。


久しぶりに会う事のできたぜんちゃんは、

冷たく四角い箱に納まっていた。



彼女の、ごめんねと言う言葉が忘れられずにいる。


私だけ、逃げてごめんねと彼女は私に言った。

その顔は、嬉しさを隠しているような

でも、本当に、この生地獄に残される私を心配しているような

何とも表現のしがたい表情だった。


 



ぜんちゃんとの思い出絵本