【説明】

ダレン・マクガーヴェイは、貧困とその破壊的な影響を当事者として経験した。したがって、イギリス中の恵まれないコミュニティで人々がないがしろにされていると感じ、怒りを燃やしている理由を知っている。そして、それを説明したいと考えている。読者はある種のサファリに招待される。野生動物を安全な距離から眺めるようなサファリではない。読者を貧困の内側に引きこみ、その窮迫がどのように感じられるのか、それを乗り越えるのがいかにむずかしいのかを示すのが本書である。マクガーヴェイは、左右両派がいずれも現実の貧困を誤解していると論じ、状況を変えるために自分自身を含めて人々に何ができるのかを示す。切れ味鋭く、大胆で誠実に語られる『ポバティー・サファリ』は、現在のイギリスについて忘れがたい洞察を示してくれる。2018年オーウェル賞受賞。

 

 

【読後感】

”ポバティー”、日本人には耳慣れない単語。それが貧困を指す言葉であり、怖いもの見たさでちょっと見たら扉を閉ざして蓋をする我々の視点を痛烈に現した内容だ。

 

単なる批評本ではない、自らが貧困が蔓延る(はびこる)世界で子供時代から生きてきたからこそ持てる視点だ。自らの状況に置き換えても、こうした考え方そのものが未知の世界といえる。最終章に著している内容が現在の筆者の考えであり、ここにたどり着けるのはそれまでいきてきた人生が無ければ、この語りは無理だろう。「われわれの人生が短いのではない。その多くを浪費しているだけなのだ。」 2000年前の哲学者ストアの言葉引用されているが、こうした言葉を引き出す筆者こそ、今後の世情を語れる人物なのだろう。